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企業分析:コーセル(6905) - 2024年5月期 第3四半期決算

1. 業績の安定性・成長性(85点)

売上高は前年同期比24.7%増と大幅な増収となっており、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する四半期純利益はいずれも前年同期比で80%超の大幅な増益となっている。特に主力の日本生産販売事業と北米販売事業が大きく伸長し、全体の業績を牽引している。半導体需要の調整局面が続く中で、受注残の解消に向けた増産対応により、業績は順調に拡大している。

見通し:半導体市況の回復と新製品の拡販が進めば、高い成長が持続できる可能性がある。

2. 財務の健全性(90点)

自己資本比率は88.2%と高い水準にあり、有利子負債もほとんどない。営業キャッシュ・フローも潤沢に創出されており、手元流動性も厚い。売上高の拡大に伴い棚卸資産は増加傾向にあるが、全体としての財務健全性は極めて高い水準にある。

見通し:当面は、高い財務健全性が維持できると考えられる。

3. 事業ポートフォリオ(70点)

日本、北米、ヨーロッパ、アジアの各地域で販売事業を展開し、中国で生産事業を行うグローバルな事業ポートフォリオを有している。ただし、日本生産販売事業への依存度が高く、他の地域での事業拡大が課題である。製品別では、ユニット電源とオンボード電源が主力である。

見通し:北米、アジアでの事業拡大と、新製品による製品ポートフォリオの拡充が進めば、80点以上も可能である。

4. 株主還元(80点)

当第3四半期までの1株当たり配当金は30円(前年同期比2円増)と増配している。配当性向は30%程度で安定的な配当を継続しているが、キャッシュの蓄積が進んでいることから、増配余地は大きいと考えられる。自社株買いは実施していない。

見通し:業績拡大に応じて増配が進むことが期待される。自社株買いの検討もあると良い。

5. 成長戦略(75点)

主力のユニット電源、オンボード電源において、新製品の投入を進めている。新市場向けの製品開発も行っているが、大きな成長ドライバーとなるような新事業の柱は見えていない。海外事業の拡大は継続的に取り組んでいるものの、特に北米、アジアでのプレゼンス向上が課題である。

見通し:パワーエレクトロニクス分野での新製品・新事業の創出と、海外事業のさらなる拡大が求められる。

6. 将来の収益予想

2024年5月期の通期業績予想に変更はなく、売上高は前期比20.5%増の405億円、営業利益は同47.2%増の85億円、経常利益は同51.6%増の88億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同42.5%増の61億円を見込んでいる。半導体関連需要の回復時期が不透明ななか、通期予想の達成には不確実性が残るが、同社の増産対応力と新製品の拡販が進めば、計画達成は可能とみられる。中長期的には、半導体市況の回復を追い風に、安定的な増収増益基調が続くことが期待される。ただし、為替変動などの外部要因の影響には注意が必要である。

総合評価:80点

コーセルは、パワーサプライで世界トップクラスのシェアを持つ業界のリーディングカンパニーである。高品質な製品力と、グローバルな事業展開により、安定的な収益基盤を築いている。足元では半導体市況の調整局面が続くなか、増産対応により業績は順調に拡大している。新製品の投入や海外事業の拡大など、着実な成長戦略を実行している。一方、利益率の改善や新事業の創出などの課題も残る。株主還元も安定配当に徹しており、柔軟な株主還元策が望まれる。パワーエレクトロニクスの重要性が高まるなか、同社の成長ポテンシャルは大きいが、事業環境変化への対応力が問われる。

投資基準と売買タイミング

業績や財務の健全性、パワーサプライ業界における高いポジションなどを評価し、長期的な成長を期待できる銘柄と考える。ただし、株価の割安感は乏しく、出遅れ局面での買い増しや、業績拡大局面での利食い売りを検討したい。PERが20倍を割り込んだ水準では投資妙味が増すとみる。業績動向、半導体市況、為替変動などに十分注意しつつ、慎重に投資判断する必要がある。

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