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企業分析:タキロンシーアイ(4215) - 2024年3月期 決算

1. 業績の安定性・成長性(80点)

売上高は前期比5.6%減少したものの、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比で2倍以上の伸びとなっている。

建築資材事業、環境資材事業が増益となり、高機能材事業は減益ながらも高い利益水準を維持している。

一方、機能フィルム事業は赤字に転落。全体としては、安定的な収益基盤の上に、環境資材事業の収益改善が寄与し、増益を達成している。

見通し:売上高の持続的な成長と収益性の改善が続けば90点以上も可能。

2. 財務の健全性(90点)

自己資本比率は61.9%と高い水準を維持しており、有利子負債は抑制されている。営業キャッシュ・フローも安定的に創出されており、財務基盤は盤石と言える。大規模な設備投資や投融資等の資金需要にも十分対応可能な財務健全性を有していると評価できる。

見通し:現状の財務健全性が維持されれば90点以上をキープできる。

3. 事業ポートフォリオ(80点)

建築資材、環境資材、高機能材、機能フィルムの4つの事業セグメントを有しており、バランスの取れた事業ポートフォリオを構築している。環境資材事業が収益改善を牽引するなど、事業間のシナジーも発揮されつつある。

機能フィルム事業の不振は課題だが、他の3事業が安定的な収益基盤となっている。

見通し:機能フィルム事業の収益改善が進めば90点程度も目指せる。新規事業の柱の育成にも期待したいところ。

4. 株主還元(80点)

2024年3月期の1株当たり年間配当金は前期から2円増配の22円となり、配当性向は42.0%となった。安定的かつ継続的な株主還元を重視する方針の下、利益の増加に応じて着実に配当を拡充している。自社株買いは実施していないが、総還元性向の目標等の設定があればなお良い。

見通し:利益成長に合わせて増配が継続されれば90点程度が視野に入る。自社株買いの実施や総還元性向の目標設定にも期待したいところ。

5. 成長戦略(70点)

新中期経営計画「Go Beyond 2026 革新」において、「グループ経営の最適化」「新製品・新事業の創出」「現場力の徹底的な強化」「海外ビジネスの拡大」「M&Aの加速」の5つの主要施策を掲げている。

各事業の収益力強化と新たな収益の柱の育成に取り組む方針であり、目指す方向性は明確。

ただし、具体的な施策や数値目標に関する情報開示がもう一歩欲しいところ。

見通し:新中計の具体的な進捗と成果の発現度合いを見極める必要があります。計画の着実な遂行と適切な情報開示が行われれば80点以上も可能と思われます。

6. 将来の収益予想

2025年3月期の連結業績予想は、売上高1,450億円(前期比5.4%増)、営業利益76億円(同22.0%増)、経常利益76億円(同16.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益56億円(同9.7%増)となっている。

主力の建築資材事業、環境資材事業の収益拡大に加え、高機能材事業の回復、機能フィルム事業の黒字化を見込んでいる。

新中計の初年度として、着実な増収増益を予想しており、計画の達成可能性は高いと考えられる。ただし、機能フィルム事業の収益改善の進捗や、為替変動の影響などには注意が必要。

総合評価:78点

タキロンシーアイは、バランスの取れた事業ポートフォリオを有し、安定的な収益基盤を構築している。新中期経営計画の下、各事業の収益力強化と新規事業の創出に取り組み、持続的な成長を目指す方針を打ち出している。

財務基盤も盤石で、株主還元も着実に拡充されてきた。今後は、新中計の確実な遂行と、機能フィルム事業の収益改善、新規事業の育成の進展度合いを見極めていく必要がある。

成長戦略の実効性をより詳細に評価するためには、情報開示の拡充も望まれる。総じて、安定的な収益力と成長への布石を評価できる企業と言える。

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