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企業分析:三井不動産(8801) - 2023年3月期決算

1. 業績の安定性・成長性(85点)

売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも前期比で増収増益となり、過去最高を更新。

コロナ禍からの回復に加え、オフィスビル、商業施設、海外事業などの安定した賃貸事業や、資産回転型の分譲事業が収益を下支えしており、業績は堅調に推移している。

一方、次期見通しでは経常利益が減益となる点には注意が必要。

2. 財務の健全性(80点)

自己資本比率は32.8%とやや低下したものの、引き続き30%台を維持。D/Eレシオは1.40倍とやや上昇。

大型開発に伴う有利子負債の増加が見られるが、営業キャッシュ・フローは安定的に創出されており、過度なリスクにはなっていないと考えられる。

ただし、金利上昇局面では利払い負担増に留意が必要。

3. 事業ポートフォリオ(90点)

「賃貸」「分譲」「マネジメント」「その他」のバランスの取れた事業ポートフォリオを構築。

賃貸事業を安定収益基盤としつつ、市況に合わせて分譲事業の比重を調整している。マネジメント事業で安定的なフィービジネスも拡大中。

ポートフォリオの分散により、景気変動の影響を受けにくい事業構造となっている。

4. 株主還元(75点)

2023年3月期の年間配当金は前期比7円増の62円と過去最高となり、総還元性向45%を目標に自社株買いも実施。

利益の拡大に合わせて着実に株主還元の拡充が図られていると評価できる
ただ、配当性向は30%弱とまだ若干低い水準にある。

5. 成長戦略(85点)

「東京ミッドタウン八重洲」「50ハドソンヤード」など国内外の大型複合開発が業績に貢献しつつあり、来期以降も「日本橋一丁目中地区開発」「日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業」などの大型プロジェクトが控えている。

また、物流施設開発など新たなアセットタイプへの展開も進めている。国内外での成長投資が着実に実行されていると評価できる。

6. 将来の収益予測

2024年3月期の連結業績予想は以下の通り。

  • 売上高:2兆3,000億円

  • 営業利益:3,300億円

  • 経常利益:2,450億円

  • 親会社株主に帰属する当期純利益:2,100億円

オフィスビル・商業施設の安定稼働や新規開発物件の収益寄与、海外事業の拡大などにより、中長期的には増収増益基調が続くと予想される。

ただし、世界的な金利上昇による利払い負担増や、景気動向による分譲事業の収益変動には注意が必要。

利益率の高いマネジメント事業の強化などで、収益性の改善を期待したいところ。

総合評価: 83点

三井不動産は、安定した賃貸事業を軸に分譲、マネジメント、施設営業など多様な事業を展開し、バランスの取れた収益構造を有している。

業績は着実な成長軌道にあり、株主還元の拡充も進んでいる。堅固な財務基盤を活かした国内外の成長投資は今後の収益拡大に寄与すると見込まれ、中長期的な投資価値は高いと評価できる。

一方、金利上昇や景気変動の影響には留意が必要で、収益性の一段の改善が今後の課題と言える。

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