2O24.O9.12 わたしと本のあれこれ2 ひとり暮しと料理
大学2回生、ちょうどコロナが始まった年にひとり暮しがしたくなった。夏はその思いを胸にため、秋になるとアパートを眺めるようにしていろんな町を練り歩くようになった。冬、不動産屋の扉をひらき、翌年の3回生になる前の2月に入居した。
おいしいパン屋と公園と本屋がそばにあり、観音様も歩いてすぐのところ。守られている気がして選んだそのアパートで、もちろん最初に決めたのは「きちんと自炊しよう」ということ。
入居初日の夜はお米を炊き、味噌汁を作り、おかずを一品こしらえた。写真におさめ、静かな部屋でひとり食べた。そんな初日の決意は、いったい何日かけて鎮火していったんだっけか。流しにたまった洗い物。冷蔵庫の中でくさってゆく野菜。ひとり分の量の中途半端さ、むずかしさを身に染みて感じた。パン屋よりも公園よりも本屋よりも、自宅から徒歩2分のセブンイレブンに一番足繁く通うようになった。カップ麺は、ペヤング、ぶぶか、UFO、すみれ、と色々試した。となりを見やれば菓子パンコーナー。裏面はお菓子がずらり。陳列棚ひとつで朝昼晩、こと足りるのだった。
このままじゃいけない、ちょっと体にいいものたべなくちゃ、時々そう思っては高山なおみさんの本を開くことがあった。野菜をそのまんまいかした食べ方に、「これなら自分でもできそう」と思いながらも、実際に試したのは片手で数えられるくらいだけ。やっぱりひとりでは台所に立つ気になれないのだった。せっかく台所の広さも優先条件として物件を選んだのだけど、どうしようもなかった。
ひとりでお店に入るのは平気だし、ひとりで食べてもごはんは美味しい。でも、作るとなれば、ひとりきりじゃわたしは全然機能しないのだ、とひとり暮しを経て強く実感した。誰かのために作りたい。誰かのためにごはんを作る毎日が訪れたら、その時こそ、今度こそ、毎日台所に立ちたい。……立つかしら??料理は好きだけど、料理の中身、例えば野菜を刻んだり、味付けをしたりすることよりも、料理の外側が好きなのかもしれない。かわいい器をえらぶこと、食べる人の反応、次に食べたいものをリクエストしてくれることとか……。うん、そうなのかもしれない。
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