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mother’s history No.39 学園祭は最高に楽しい。
年に一度の学園祭は、どこでも、誰でも最高に楽しいイベントです。
食べ物あり、見ものあり、模擬店あり、ダンスあり等、もう二度とない青春の貴重な想い出作りの場だ。
ああ、よかった!
楽しかった!
時間の経つのを忘れてしまった。
誰でもある、貴重な、貴重な体験です。
気が付いたら、もう夜になっていた。
11月5日
今日も終わろうとしている。エプリルちゃん明日晴れると思って? 晴れたら前夜祭が明日にあるということになるわ。晴れて欲しい気がするわ。
朝、いつもの電車に乗ったら、がらあきだったの。おかしいなと思ったら、九時始まりでした。久しぶりに、財布がふくれていたので、本屋さんへ寄って、小説買っちゃった。
あまり、おもしろくなさそうだな「心理試験」なんてね。
私はいつも、お金を持たないように気を付けなければいけないと思った。だつて、お金が少しでもあると、考えずに使いたくなるものね。
いろいろな展示品を、何回も見たり、肩を寄せ合ってホークダンスしたり、くたくたになってしまったわ。
それに、おすし、ココア、ケーキ、りんご、キャラメルなど食べたら、お腹もふくれっぱなしなの。
ホークダンスの時、ノッポの薮根さんとくんだ時、彼は「ああ、わりい」と、言ったのが気になって、つくづく背がもう少しでも高かったらなって思ったね。無理な注文ね。
11月6日
文化祭の二日目、音楽会を聞き、映画を見た。喫茶室は一時にしまうと聞いて、コーヒーの券を持っているものだから、あわてて飲みに行った。ひどい混雑の仕方で、コーヒーもゆっくり飲めず、ケーーキも大慌てで食べた。そばでは、男子が席があくのを待っていて騒々しかった。
映画は、あまり面白くなかった。今でも、「オバステ山」と名のる山が残ているらしいが、オバステのことを映画でやった。
あまり、みじめで思わず目をおおいたくなるような物語、いやこれも現実にあったかも知れない。70歳になろうとしている、歯の丈夫な老婆を主人公として、彼女がオバステ山にやられる前を、描いている。
彼女は、年寄りといっても非常に歯がよくて何でも食べられるのを苦にして、臼でわざと歯を折ることなど、惨めすぎ、むごすぎの場面だった。
この映画が終わったのが、四時十分ほど、その後外に出ホークダンスをし、火を囲んで歌を歌ったりして、帰る頃にはあたり真っ暗になっていた。
あまり、お腹がすいたので、焼きまんじゅう屋に入って、六つ買った。家に持って帰ってもまだ湯気が上がっていた。
11月7日
学園祭さいごの日なのであり候。
ヨーロッパ各国を回ってこられた有名人を招き、口演をし候。
名前を忘れましたが、ふんどしの中にお金を入れて歩く話など、大変ユーモアがあり、好感がもてまして候。
夜九時まで、テレビかじりつき、その後秋代の借りてきし、『三つの花』を読み候。
作者は、吉屋信子であり候。
すばらしき最後の一節を申し候。
【けだかき、白百合の君となぞえられし美しき幾代よ、才深くもりりしき黄薔薇ともたとえようみどりよ。ただに可愛くも可憐な紅の椿のそのいとしさを思わせる幼ない幸子よ、御身たち三人の行末よ、風よ荒らすな、雨よ打つな、いと幸あれと祈るは、ひとり亡き父うえの、み魂のみならめや】と。
妹の借りてきし、幼なき本をおもしろ楽しく、又は悲しく読み終え候。
夜のふけるのも、忘れて読みふけり候。