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妻に捧げるレクイエム No.17

 期待とは、違っていた。

 前回は、自分の意思の強さをはっきりと言い出せなかった妻の不甲斐なさを書いた。そういう、心根の細く優しい女性だっているのだということを認めて欲しい。自分の意見を強く言い出せるようになるには、それなりの訓練と時代背景もあるのかな。折しも、今日は「国際女性デー」である。もし、男性に囲まれて仕事をしている人がいたら、強い意思で女性を、意志を表明して欲しい。これは、妻の遺言のような気がする。
 こういう、度胸のない心根の優しい人がいたということを、言い残しておきたい。
 雪国の辛い生活から逃れたいという気持ちもあって、早く大阪に行きたかったのだろう。夢と希望を抱いて、行った先の和裁縫教習所は期待とは裏腹の冷たい空間であったようだ。まるで、ドラマのストーリーのような狭く暗い場所だったようだ。どうして、ここを選んだのか詳しい理由を書き残していないので、分からないが前記のように進路指導が曖昧なままだったことに起因しているのではないだろうか。もっと、丁寧に進路先を調べておくとか、何か方法はあったはずなのに。実に残念だった。
 何処でもあるように、先輩から虐められ無理な仕事を回され、涙も出ようと云うものだ。それほどの給金ももらえてなかったようだ。だから、当然遊びに行く金もないし、暇もない。これでは奴隷に近いではないか。折角、大阪まで出て来て「夢破れて……」何とやら、さぞや辛かっただろうね。そう、しみじみ思う。
 出会いとは、実に不思議なものだ。もう少し早く、私に出会えていたらこのような辛い思いはしなくて済んでいたのに……。
 果たして、私の力で助けることができていたか、自信はないがそういう気持ちにさせられる。

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