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妻に捧げるレクイエム
妻が亡くなって、早や5年目を迎えようとしています。
悔しさと辛さを今までじっとこらえて、抱え込んでいたものを整理して記録として残していきたいと思って、短文をいくつかに分けて掲載していきます。
あくまでも、他人事です。でも、いずれ自分の問題でもあるのです。
私は、亡くした妻への鎮魂のつもりで記憶に残るものを少なからず記していきたいと思ってのことです。
他人事として読むことは可能です。でも、それはちょっと違うと思うのです。今になって思うのは人の悦び、悲しみは回り回って自分のことです。
笑うのも自由です。泣くのも自由です。
わたしは、もう笑う事を忘れてしまいました。
ただ、泣くことはできます。
よくよく、考えてみて下さい。
妻に捧げるレクイエム No.1
「もう、そろそろ寝ようか。本当に長い間、ごくろうさまでした。」
店は今日で閉店だ。後片づけは明日からゆっくりやればいい。
そういう気持ちで、特に妻を労わる言葉もないまま先に床に入ったのは私のほうだった。
時は夜の10時半だったか。もう周りは静まり返っていた。
小さな商店街は夜となると物音ひとつしない空間になっていた。何が起きても、誰も気にしないくらいの無表情の小さな街だ。
このところ急激に街が錆びれてきて、人生の末路を暗示するかのような予言どおりの侘しい商店街になってしまった。
だから、店をしまうのはそれで良かったのかも知れない。などと、未練をかみしめながら夜空を眺める事もできたに違いない・・・。
きっと、妻は。