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mother's history No.10       人間誰しも、輝きたいから

眠い、眠い。
春でなくても、眠い。
こたつがあるから、眠い。
若い時は、誰でも眠い。
この間、倉庫を整理していたら紙の小箱が出てきたよ。
よーくみたら、昔の記念切手が沢山はいっていたよ。
切手集めが好きだったんだね。
何が、動機かなあ、聞いておけばよかったな。
皆、何かで輝きたいからね。
楽しかったのだろうね。
まだ、暫く冬が、雪が続くようだよ。
でも、白銀は冷たいよ。
好きな冬とも、もうお別れになるね。


1月10日
記念切手三枚と国定公園の切手が二枚、薮内さんととりかえっこした。女学生の友を朝倉さんからかりてきて、夕方母がごはんのしたくをしている時、かくれて読んでいた。見つかったら、手伝いさせられるおそれがあるから、母がこっちの方きたら、社会のハイテストで女学生の友をバタッとかくしては読んでいた。
あすは、英語のテストだから、あす三時におきなければならないから、もうこのへんでやめておこう。
あす、また国定公園の切手入るかもしれない。
また、雪つもるぞーーー。
                            (原文のまま)

1月12日
雪がきのうから降り続けで、65センチほども降り、大さわぎだった。父は、いつものとうり行ったが、兄は学校を休み、朝屋根の雪をおろしていて母もどうけの屋根の雪なんかをおろしていた。
妹のこしぎれほどあり、とつても歩きにくい。学校休もうかな?と、思っていたが、やっぱり行くことにした。電車もだいぶおくれた。
これでもなぜか、「冬と夏とどちらが好き」って、たずねられたら「冬」と、言うだろう。
午後は、ずっと女学生の友を読んですごした。
兄に水羊かん、みんなたいらげられてしまたので、くさつていたら兄は「ああ、おとろっーしゃ」と、言ったので、私は「私一生忘れんや日記にかいとくんですからね」と、言ってやった。
兄、夕方髪をからんと写真を写しに行った。300円なり。
                            (原文のまま)

1月13日
きのう、最終電車で兄が帰って来た。午前中妹が木田*さんにたばこやおかしなんか買い物に行ったのはよいのだが、家にさいふを置いといたので、何でちょかだろうと思った。
兄と妹は、おかしをじゃんけんしては、やりっこしているのでとてもおかしい。妹は、勝ってばかりしていて兄はゼンゼンだ。
父は、朝から家の回りの雪のけしたりしているので、夕方になって「ああ、つかれた」と、言っていた。
はるみさんのとこへ、赤ちゃんのきものなんかを、とどけに行った。やっと母は、ぬいおわったのだ。母は「お金もらえるか、もらえないか分からない物を」と、言いながらしている。私は何としつれいなことを言うんにゃな、まだくれるかくれないかわからないのにと、思った。
兄、一番電車で帰る。
あさっては、成人の日で休みか。
                            (原文のまま)
木田:集落内にある唯一の食料品店。日用品が一応揃っていた。

1月14日
家に帰ってから、お使いに行った。向こうから兄ちゃんらしい人がくるので「オスッ」と、言おうとしたら、よその人だったのでびっくりした。
きんちゃんの家のところを歩いていたら、「あぶねえど」と言う大きな声が聞こえた。せい材の所のおんさんの声だ。見たら、電車道を高校の女の子たちが歩いていて、そこへ電車が来たのだ。その女の子がさっと横にのいたら、スーッと電車が通って行った。あのおんさんが、言わなかったら死ななくてもけがはしただろう。ふゆの電車は、とても静かだから、これからは私たちも、電車道を歩かないように気をつけなければならないと思った。
夜、七時ごろうとうととして朝七時に起きた。十二時間ぐらい寝たのだ。四時に起きようと思って寝たのに寝すごした。
                            (原文のまま)


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