『あの夏の思い出』〜あなたの健康と幸せをお祈りさせてください〜
あれはとても暑い夏の日でした。
その頃の私は新卒1年目で賃貸不動産の営業マン。
特にお客さんを担当することはなく、
毎日外へ出ては未取引物件の大家さんのお宅に訪問し、
「うちで物件を紹介させてください!」
と営業をかける日々。
ある夏の日、お世辞にも綺麗とは言い難い(ボロい)アパートの空き情報を仕入れ、
そのアパートの一室にある大家さんのお宅へ訪問した。
いつものようにピンポンを押し、賃貸不動産の営業であることを伝えると、
その大家さん(50代女性)は快く玄関先で私の話を聞いてくださった。
「この周辺でお部屋探しをされているお客様がいますので、是非、こちらの物件を紹介させてください!」
と私は単刀直入に切り出したが、
大家さん曰く、つい先日他の不動産会社がお客さんを見つけてきたとのことだった。
残念。
と思いつつも、また空き部屋が出たら是非紹介して欲しいという言葉をいただけたので、満足してその場を後にしようとした。
しかし、最後に大家さんから
私は1日に3人の方の健康と幸せをお祈りしなければならないんです。もし、良かったらすぐに終わりますので
あなたの健康と幸せをお祈りさせてください
と打診を受けた。
その頃の私といえば、営業成績は最下位。プライベートでも良いことがない。そして持病の腰痛の悪化。と心身ともに健康で幸せとは言える状態ではなかった。
それに加え、生まれ持ったジャーナリズム精神から二つ返事でお祈りを受けることにした。
約2,3分と言ったところだろうか。
大家さんが何かボソボソ言いながら手をスリスリしている音を私は目を瞑りながら聴き続けた。
そして、お祈りが終わると、大家さんは私に感想を求めた。
「あ、なんかちょっとスッキリしたような感じがしますネ!あとなんか元気になりました笑」
と私が答えると
その大家さんは
「もしかして、こういうの興味ありますか?」
と言いながら怪しげな宗教のパンフレットを差し出そうした。
その瞬間、あ、やばい!と思った私は、興味はあるがこのあと次の予定があると言い、そそくさとその場を後にした。
なんかヤバ人に遭遇しちゃったなあ…と思いつつも、
私は本当に幸せになった気がしたので、
仕事中ではあったが、近くのパチンコ屋に直行したんで・す・yo!!
そしたらぁ、so!!
1時間も経たないうちに私の財布から
1万円札がなくなってたんで・す・yo!!
ありゃ?幸せなってへんやん!あいつ嘘つきやん!
と当時思っていました。
でもね、もし、あのとき、パチンコが大当たりしてたとしたら、、、
今ごろ私は、あなたの健康と幸せをお祈りする不幸な人生を歩んでいたかも知れません。
信仰の自由。
しゃおら。あざした。