財政赤字はどのように定義されるか?
「財政赤字」という言葉はテレビや新聞で見かけない日はないほどに有名です。にもかからわず、それを明確に定義している高校の公民やマクロ経済のテキストは少ない印象があります。ここでは財政赤字の定義を整理したいと思います。
政府はある年度に「税収で全ての歳出を賄う」ように財政運営を行います。つまり次の関係式が成り立ちます。
税収=歳出
ここではこれを「財政収支の均衡条件」と呼びます。
災害の発生など、経済状況によっては政府支出の拡大が求められます。それは税収では賄いきれないことがあります。このとき、政府は国債を発行することで歳入の不足を埋め合わせます。「財政収支の均衡条件」は次のように書き直すことができます。
税収+新規国債発行額=歳出
この関係式は「歳出は税収と新規国債発行額で賄われる」と読めます。
歳出は国債の利払い(以下、国債費)とそれ以外の政策経費(以下、政府支出)に大別されます。よって、「財政収支の均衡条件」は次のように表されます。
税収+新規国債発行額=国債費+政府支出
直観的な意味をとりやすくするために、さらに次のように書き直します。
新規国債発行額=国債費+(政府支出ー税収)
以後、これを「政府の予算制約式」と呼ぶことにします。
「政府の予算制約式」の右辺第二項(政府支出ー税収)は、基礎的財政収支ないしプライマリーバランスと呼ばれます。例えば、第二項が正である場合、それを「政府支出が税収を上回るとき、プライマリー財政赤字が発生する」と言います。このプライマリー財政赤字を財政赤字と呼ぶテキストもあります。
その一方で、右辺そのもの、すなわち国債費とプライマリーバランスの和を財政赤字と呼ぶテキストもあります。この場合、政府の予算制約式は「国債の新規発行額は財政赤字と一致するように行われる」と読むことができます。
プライマリー財政赤字を単に財政赤字と読んでも、資格試験対策としてのマクロ経済の学習をする上で不都合はないと思います。しかしながら、国民経済計算の数値を参照したり、より発展的な財政やマクロ経済の学習をする場合は、「財政赤字の定義」を気にする方が良いでしょう。