【ネタバレ】映画『HELLO WORLD』考察的二次創作
考察を含んだ二次創作です。現実世界の設定にかなりの無理がありますがどうかご了承ください。
(本文は映画『HELLO WORLD』の大いなるネタバレと『[映] アムリタ』および『2』(野﨑まど著)のささやかなネタバレを含みます。)
2027年7月3日、朝霧橋で雷に打たれたのは・・・
『HELLO WORLD』の考察は、堅書直実が雷に打たれて脳死になった2027年脳死説、と一行瑠璃がそうなった2037年脳死説の二つが主流であるという。
橋の上で、二人一緒にいて、雷が落ちる。この状況だと、
二人とも感電するはずである。
そこで、直実と瑠璃が二人とも同時に脳死になったとして話を進める。
そこで、本編では途中から出番がなくなってしまうかでのんこと勘解由小路三鈴(かでのこうじみすず)に働いてもらうとしよう。彼女はある映画監督の噂を聞いてコンタクトを取る。映画監督とは最原最早(さいはらもはや)である。勘解由小路は最原に、「見た人を堅書直実にする映画」の制作を依頼する。映画は短期間で仕上げられた。最原は映画制作期間中に偶然、離島から家出してきた少年と出会い、彼にその映画を見せて堅書直実になってもらった。映画は堅書直実になる人物が花火大会で一行瑠璃だけが雷に打たれて自分は助かったという記憶を持つよう制作されていた。できれば一行瑠璃の映画も制作してもらいたかったが予算が足りなかった。というのも、制作費を出してもらっていた舞面真面(まいつらまとも)に制作の意図がバレてしまい、続きが作れなくなったためである。
さて、「クロニクル京都」の記録範囲は京都のみである。そこでかでのんは「替え玉」カタガキナオミをアルタラに記録されないよう(バレないよう)こっそり京都に忍び込ませ、代わりに脳死状態の本物直実は京都の外の病院へ移転させた。しばらくして元気に動いているナオミ(替え玉)を観測したアルタラは、(騙されて)記録の修正を始めた。替え玉ナオミの記憶に合わせてアルタラ内では花火大会の時に雷には打たれなかったという修正がなされた。替え玉君は堅書家に居候する転校生として生活し続けるのであるが振る舞いが堅書直実そのものであったため、アルタラをうまく騙し続けることに成功した。彼は自分の本名を名乗っていたが、アルタラ内では堅書直実が健在であるという判断であったため、堅書直実の名前になっていた。こうして記録の中だけでも彼が生き続けていれば将来何か役に立つかもしれない、と三鈴は漠然と考えた。
替え玉カタガキナオミは大学での千古教授の講演の中での実験で衝撃を受ける。以後、一行瑠璃の蘇生を目標に邁進する。アルタラセンターに入り、メインディレクターの地位にまで上り詰める。そして周囲には内緒でアルタラ内へのアクセスを試みる。アルタラに繰り返しアクセスしようとする中で火傷を負い、左足を麻痺させてしまう。336回目にしてようやくアルタラ内(B世界)へのダイブに成功して自分のアバターが伏見稲荷に落ちた。だがそこに「堅書直実」はいなかった。カラスが誘導しなかったためである。そしてアバターのナオミは直実の住む家に向かった。ところが直実にはナオミの姿が見えず声も聞こえないようだった。せっかくアルタラに入れたのにできることがない。ナオミはやむなく断念してアルタラを出る。
勘解由小路三鈴はナオミと同じくアルタラセンターで働いていた。三鈴はガッカリしているナオミを見かねて、一行瑠璃のそっくりさんをスカウトしてナオミの知らない間にこっそり入れ替えた。瑠璃のそばに戻ってきたナオミは瑠璃が生き返るのを見た。
「会いたかった・・・」
二人は顔を近づけた。しかしナオミは違和感を覚え、瑠璃を押し返す。
「違う、君は一行さんじゃない」
「バレたか」
余計なお節介だった。
替え玉ナオミは千古教授にこれまで秘密裏に行なってきたことを告白する手紙を書き残し、失踪しようとした。それに気づいた三鈴は最原最早監督がもう一つ用意していた「堅書直実であることを忘れる映画」を替え玉ナオミに見せた。彼は我に返った。なぜ自分が火傷を負い、左足が不自由になっているのかを覚えていなかった。乙姫かでのんは彼に玉手箱を手渡して離島へ帰らせた。彼は去りながらつぶやいた。
「京都って怖え~」
勘解由小路は千古教授に一部始終を話し、本物のカタガキナオミは脳死状態で京都府外の病院で眠っていることを告げた。
ナオミの手紙を読んだ千古はまず一行瑠璃の蘇生に取り掛かった。彼は医師免許を持っていないので治療は医師が行うのであるが、方法に関しては千古が指示した。彼はアルタラ内へダイブするためのベストを新たに作り直し、それを医師が着るのではなく一行瑠璃に着せるのだと言った。こうすることによってアルタラから量子精神を取り出すのではなく、脳をデータ変換したものをアルタラの中に侵入させ、同調できる時点に近づけて器と中身を同調させようとしたのである(※)。千古はナオミのやり方に気づいて言った。
「アルタラの中から量子精神を抜き取ったら修復がきかなくなって大変なことになる。しかしナオミもよく考えたものだなあ。」
(※ ただの理屈なのでそれが可能なのか全くわからない)
一行瑠璃の蘇生は成功した。雷に打たれた時の電気ショックで「ギャっ」となった瞬間の精神に同調した。次いで直実の蘇生も試みたが、事前にアルタラ内の情報に変更(替え玉観測後の修復)が加えられたため「ギャっ」の瞬間がなくなり、同調できるタイミングがなかった。A世界に入ったB世界のナオミは同調の条件は瑠璃が直実に対して抱く恋心と判断してゲージの設定をしたが、それは勘違いなのだった。
千古はアルタラ自体が観測対象に入っているのはよくないと考え、アルタラ本体をクロニクル京都の観測対象から外した。B世界でアルタラが消え、開闢が起こったのはこのタイミングであった。
蘇生した一行瑠璃はかでのんからこれまでの経緯の説明を受けた。
「これからが大変だね、るーりー。」
「堅書さんは私を生き返らせるために手を尽くしてくれましたし、これからは私も堅書さんを生き返らせるために頑張りたいです」と瑠璃。
千古教授は言う。「まずは弱った体を回復させることだね。元気になろう。元気があれば何でもできる!」
「やってやります!私は冒険小説の主人公のように自ら険しきに挑み、諦めずに最後までやり遂げる、そうありたいと思うのです。」
「私も応援するよ、るーりー」
「やめてください、ミミズさん」
「ミスズです」
こうして一行瑠璃の猛勉強が始まった。大学の入学資格を得て京斗大学に入る。卒業後、アルタラセンターに入り、医師免許も取る。そして堅書直実蘇生プロジェクトを立ち上げる。かつてカタガキナオミが行なったやり方を参考にしつつ、データの書き替えの方法、アルタラ内で物理権限を行使する方法などを習得していった。
彼女はアルタラ内のアルタラ(A世界)に目を付け、そこにいる高校生直実がB世界からダイブしてくる大人ナオミを認識できるよう操作し、直実を伏見稲荷へと導いた。A世界がリカバリーされようとした時に直実を導いて2037年のB世界に連れてきた。アルタラは本来、2037年のカタガキナオミがいるいわゆるB世界が上位で2027年の堅書直実がいたいわゆるA世界が下位だったはずなのであるが、マニュアルを越えて自由意思で動いた直実の頑張りによって上下関係が逆転した。A世界には一行瑠璃はいない。B世界にはいる。修正プログラム「狐面」はA世界に合わせて一行瑠璃の抹消に取り掛かる。A世界からやってきた直実は狐面を追い払って一行瑠璃を助け、病院から連れ出して京都駅へ向かう。病院に残されたB世界のナオミは目の前で次々と起こった埒外(らちがい)の出来事に呆然としつつもその意味について考えようとしていた。
京都駅大階段にやってきた3人。まず一行瑠璃をもとの世界に返すべく、直実がコンバーターを作る。そこを瑠璃が下りていき、変換に成功。次いで直実も下りようとするが狐面に阻まれる。
ところで、階段は時間の経過を表わすのに使われる。過去に戻ることを「さかのぼる」といい、未来へ進むことを「くだる」という。一行さんは階段を「下りて」いった。表向きは過去に戻っているけれども階段の意味的には未来に向かって進んでいる。直実と一緒にではなく一人で。このあと直実が階段を下りられなかったのが意味深い。現実世界ではこのあと一行瑠璃が一人で生き抜き、堅書直実は無意識のまま経過する。「開闢」の後、直実が不可解な時空を経て瑠璃の元に到達していることがそれを表わしているかのようだ。
狐面の集合体はとどめを刺そうと直実に向かって攻撃してきた。ナオミは動かないはずの左足を動かして直実をかばって串刺しになった。この串刺しになった瞬間の「ギャっ」というショッキングな感覚が器と中身の同調の条件にかない、現実世界の直実は永い眠りから目覚めることができたのである。
「一行さん、ここってもしかして、月面?」
「いいえ、地球、京都です。月面の映像はフェイクです。あれは未来構想のポスターの画像です。センターの入り口に貼ってあります。あれを見せておけば映画を見た人が一つ上の階層に来たということがすぐわかりますから。」
-THE END-