最近の記事
ベートーヴェン:ピアノソナタ第31番 Op.110 第3楽章
【噂のベーブンク】 ベートーヴェンのピアノソナタ第31番 Op.110第3楽章の最初のページに、イ音の連続があり、2個の音符を結ぶ弧線が引かれている(0:50-1:07)。これはタイか、同音のスラーか、それとも・・・ ドイツの音楽評論家・ヨーアヒム・カイザー著『ベートーヴェン 32のソナタと演奏家たち』(門馬直実・鈴木威 訳 1985年春秋社刊)には、「とかく噂さのあるベーブンク」と述べて、この弧線がベーブング・エフェクト(ベーブング奏法)を示唆しているという考えを示している。これは一度押した鍵盤を、上がりきらないうちにもう一度そっと押さえることによって詮音効果を生み出すという奏法らしい。現代のピアノでは効果を期待できないが、ベートーヴェンの時代のピアノでは出来たようだ。この「噂のベーブンク」はここだけでなく、125-126小節にも出てくる(6:57-7:08)。ここはピアニストによって解釈が分かれるところであり、聴き比べると面白いかもしれない。