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#小説
第1話プロローグ『はじまりの日』part1
高くそびえ立つ時計塔の鐘が、昼の刻を知らせている。ゴォン、と鳴り響く鐘の音を聞きながら、少女は急ぎ足で城に向かっていた。
少女の年は9つ。淡い桃色のセミロングヘアーを、左右に分けてツインテールに結んでおり、走る度にその髪がふわりふわりと揺れる。
彼女の名前はポム。このエクラ王国で、下級貴族でありながら、代々王族に仕える事を許されている優秀な家元の娘だ。その優秀さに置いては彼女も例外ではなく
第1話プロローグpart2
レザンとポムを見送るための式典は、国王の意向で、城の中でも最も大きな『聖の間』で行われる事になった。きらびやかな広間に沢山の人々がひしめき合う中、ポムとレザンは、貴族たちからの別れの挨拶を受けていた。
「レザン様にポム様。あなた方に我らの未来を託します。行ってらっしゃいませ」
若い貴族男性が恭しく頭を下げると、
「地球と言う惑星は、こちらの環境とはかなり異なる場所だと聞いております。心配だわ」
第1話プロローグpart3
暗い廊下にコツコツとヒールの音が響く。冷たいリノリウムに残響の跡をつけて行くその女性は、豊かな金髪を不機嫌そうに弄りながら、仕切りに周囲の様子を伺っていた。
彼女の名前はモーヴェ。美しい顔だちと妖艶な雰囲気を持ち合わせている美女である。この研究所と称している会社で秘書として働く傍ら、モデルの仕事もこなしていると分かれば、恐らく十人中全ての人が「やはり」と頷くだろう。しかし、今の彼女は、そんな
第1話プロローグpart4
「まぁそんなわけで、ひとつ、ソンブルくんにお仕事を依頼します」
突如として耳元で聞こえてきた声に、ソンブルは目を見開いて飛び上がった。
「うわっ、ビックリしたっ!」
思考する余裕もなく叫ぶように言葉を発し、振り替えって数秒。そこに立っていた長身の人物が、上司のデザストルであると分かった途端、ソンブルの顔から冷や汗が吹き出した。
「あ、す、すみません。気がつかなかったもので、その、一体いつから
第1話『ふたりはプリキュア!? 伝説の戦士、誕生!』part1
「うわぁ、満開の桜だぁ! きれ~い!」
春。桜舞い散る、という表現がよく似合う美しい並木道を歩きながら、桜宮まつりは、花びらを目一杯抱え込むように両手を広げた。
彼女はこの春中学2年に進級するが、桜にうっとりと見とれる様子は、実の年齢よりも些か幼く見える。
その事をよく分かっている幼馴染みの汐風ゆららは、低い位置で2つに結んだ髪を振り回しながら駆け出すまつりを、軽く顔をしかめて叱責した。