⑮『投資詐欺』に引っかかり、約500万借金した四十路の末路@現在進行形-交番・警察署に駆けこむ・Ⅷ-
閑話休題。
昨日、ついに法テラスに電話をした。
もうどう考えても、いくら考えても、とても贖える額ではないからである。家を買ってから手持ちのお金が減っていることも災いしているが、ぼくの場合はまだ奨学金の返済が残っていて、これはもう親家族に迷惑をかけること必至である。
死んで帳消しとなるのなら、ほんとうに死ぬ。しかしいまの日本育英会は20年前と違い、そこらのサラ金よりもあくどいと聞く。さて、どうなる。
もう人生、詰んだ。
さて、もうお金が返ってくることはないなぁと漠然と考えたとき、重苦しい沈黙があたりを支配した。なんか廊下の奥の方ではしゃいでる子供たちの声も、ただ騒いでるなぁという認識ができるていどで、何がそんなに面白いのか、会話の中身を判然とするところまで、頭が回っていない。
「これは非常にいいにくいことですが……」
と、左の刑事が切りだす。
「この手の詐欺事件は最近、すごく増えています。仮に被害届を出して、イ・テソンなる人物を捕まえたとしても、それはトカゲの尻尾きりにしかならないです。先ほども伝えたとおり、お金もどこにあるか判らないままのことだって往々にしてあり得ます。いかんせん、国内のみならず国外まで捜査範囲を広げるので、時間もかかります。特にインターネットを介していますので、IPアドレスを調べていただいたり、被害者にお願いすることも格段に増えます。
これだけは、この手の詐欺に遭った方には全員に申し上げておりますが、犯人検挙の可能性は極めて低いです。そして捕まえたとしても、お金が戻る保証はありません。そして、被害届を出された場合、捕まえたとなると今度は裁判などへの出廷の要請の可能性も出てきます。
決して、私は泣き寝入りをしろ、といっているわけではありません。
ほかの事件に比べて、被害者の負担の割に、得られるものが格段に少ないんです。皆さん、被害届を出したらそれでおしまいだと考えられます。しかし捜査に進展があると、当然こちらもあらゆる証言をお願いしないといけない。記憶などのフラッシュバックを苦にする人も出るでしょう。しかし捕まえて、あとは知りません、というのは私たちも非常に困るんです。結局、それだと処罰に持ちこめない。
だから、いますぐに結論を出せとはいいません。
ただ被害届を検討される方には、苦労の割に報われない、場合によってはさらに苦労を掛けてしまう事案である。このことは申しあげてます」
少なくとも目の前の刑事は、かつて見た警官のような卑しさは感じられず、泣き寝入りしたら?? そのほうがラクだよ、みたいな心中でないことは実感できた。そう、捕まえたらその時もある。その時は社会復帰しているだろうから、裁判の出廷とか難しいかもしれない。(生きていればだけど)
しかしこのまま何もしないとなると、ぼくの件は情報として共有はされるけれど、それ以上でもそれ以下でもなくなってしまう。確かに未然に相談に来た人には、抑止力にはなるだろう。それは、思う。しかし被害届を出して、受理されなければ、犯人はいつまでもお金を奪い続けるのだろう。彼らにとって電波の向こうにいる人間やその家族の命なんて、どうでもいい、虫以下の軽いものでしかない。
しばし、沈黙した。
しかし、ぼくはやはり苦労をしてでも、捕まえてほしいと考えた。その旨を伝えたものの、目の前の刑事の顔は浮かばれなかった。
泣き寝入りしろ、ということか。
以下、次回。
明日も生きてますように。
生きていく自信が一日一日削がれていく……。