⑳『投資ロマンス詐欺』に引っかかり、約500万借金した四十路の末路@現在進行形-消費者センターに駆けこむⅡ-
事のあらましをあらかた伝えている最中、目の前の担当者は傾聴しつつ、メモを取ることを怠っていなかった。
いわれたことは、警察と似たようなことだった。
「最近、この手の詐欺が増えているんです。自分のお金をおろせないとなって詐欺に気づくパターンが、すごく増えています。お話を聞いていると、銀行口座を介してのやり取りではないんですよね?」
ぼくは首を力なく横に振った。
これはいまも、何度か聞きだそうとはしているが、うまくいっていない。
あ、ワシントンDCの税務署に来いみたいなことを今日、メールで言われました。ほんとうに行ってやろうかww
「銀行口座を介していたら、警察に届ければ、とりあえず口座の凍結ができるので、早ければ早いほどいいんですが……やはりこの件はお金を取り戻すのは、厳しいと思います」
ですよねぇ……。
そもそも相手の本名とか知らないわけだし。
まあ、韓国名もどこまでほんとうかわからないけれど、この事件以降、ハングルを見ただけで虫唾が走る。日本のテレビは日本のものだ。韓国勢を追い出してくれ、まじで。
「ほんの少しだけ、ビデオ通話されたということですが、その時に何か暗号資産について話したりしましたか?」
これもしていない。
相手はうまく法律をすり抜けている。
日本語ができなくて緊張するとかぬかしながら、いけしゃあしゃあとぼくのお金を(ほとんど借金だけど)持っていく機会を狙っていたのだ。
韓国語なんて二度と聞きたくない!!
もしここで暗号資産の話がされていたら、少し別の対処法もあったようである。ぼくはそのあたりは上の空で聞いていた。だって自分にはその方法は使えないから。
少し夢見てたぼく。
早く奨学金返せたらいいな。
……なんて考えていたら、その残債をはるかに超える借金を背負うことになったぼく。
そんなバカ四十路に相手もさぞ、対応に苦慮したに違いない。
「唯一、可能性があるのは、クレジットカードの二社ですね。ここは支払いを止める依頼、抗告書を書けば、もしかしたら支払いが止まるかもしれません」
これは担当者の事実誤認もあったと思うが、先日書いたように不可であった。むしろ暗号資産の購入は現金化と解釈され、規約違反扱いされる。今となっては、この時に抱いていた儚い希望も無残に破れてしまった。
「例えばクーリングオフとか、意図せぬ購入とか、そういう場合はこのセンターでも対処できることもあります。しかしたまぞうさんの場合は、これから始まる支払いを止めたほうがいいと思います」
そういうと、女性は近くのキャビネットから一枚の用紙をとりだした。
いくつか電話番号が書かれていた。
「一度、この案件は弁護士さんに相談されたほうがよろしいかと思います」
まず紹介されたのは法テラス。
一定の所得要件、貯蓄要件を満たせば、同一案件は一回30分、三回まで無料で相談できる場所。
もう一つは、各区区役所の法律無料相談の日程と問い合わせ先が記されていた。こちらは1回30分限りである。
「私は法テラスを勧めます。理由は各区役所の相談は一回限りで、継続的な相談につながりません。そして場所にもよりますが、予約に時間がかかることが多いようです。たまぞうさんは急を要するのと、継続的な相談ができたほうがいいと考えるので、法テラスを勧めます。こちらは土曜日も対応しているので、より柔軟に対応が可能かと存じます」
ぼく、休職中だから、土日祝日関係ないけどね。
ほんとうにこんなこと、書かずして休んでいないといけないのにね。
何しているのだろう、ほんと。
だけどその心遣いは、ボロボロになった心を、束の間癒してくれました。
ぼくも話を聞きながら、行くとしたら法テラスかなと考えていたので、うまい具合に双方の考えは一致していたので、そこはよかった。
ついでなので、弁護士のことについて聞いてみた。
「インターネットを検索してみたら、暗号資産の詐欺に遭ったひとから、お金を取り返す、みたいな広告をよく見かけます。あれって信用してもいいものなのでしょうか?」
目の前の職員は少し考えこみ、やがて慎重に言葉を選ぶようにゆっくり答えた。
「私はおすすめはしないです。実際、お金を取られたという弱みにつけこんで、着手金だけを受け取り、何もしない事務所の報告も上がっています。たまぞうさんには、おすすめはできないです。もうネットを信じるのはやめたほうがいいと私は思います」
やはりそうか。
泣きっ面に蜂。それをする弁護士もいるのか。
それを聞いた時、明日かかってくる弁護士会社からの連絡は、断ろうと心に決めた。
ここにきて、何かが解決したというわけではないが、方向性だけは見えてきた気がする。もう法律問題としてとらえるしかないようだ。
「大変だとは思いますが、気を確かに持ってくださいね」
ここでもそういわれた。
ぼくに死相でもでているのだろうか。
とりあえず、いったん整理すべく、ぼくは相手の女性に礼を述べ、その場を辞した。
……のだが、事態は相当深刻であることを、突き付けられることになる。
どうすればいいのか。
以下次回。
明日、生きていたら。