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食卓の記憶

ちょっと前から気になっていた読書カフェに妹が行くというので、便乗させてもらった。最寄駅についたところで妹が、お昼ごはんに持って来たアボガドサンドイッチを食べそびれていたと言うので、駅前の公園のベンチに座り、彼女はサンドイッチを食べ、私はリュックに入れていたお茶を飲みながら、他愛のないことをゆるゆると話した。

その中で、子供の頃の我が家の食卓の話になった。

妹が言うには、珍しく母だけが出かけて不在だったある週末に、父が私たちにキャベツとソーセージの炒め物を作ってくれたことがあって、今でも妹はキャベツとソーセージを炒める時にはそのことを思い出すそうだ。私もそこにいたはずなのに、その記憶は全くない。

そういえば、と妹が続ける。「お父さんはグラタンが好きじゃなかったから、お父さんが出張でいないとグラタンだったよね」と。「え、そうだったっけ」と姉の私は言う。

「ちなみにさ」と、今度は私が言う。「小学生ぐらいの時、土曜日のお昼といえば焼きそばだったじゃん」「うんうん、学校から帰って、焼きそば食べて、吉本新喜劇を見るのが土曜日のルーティンだったよね」「そうそう。あれさ、いっときお父さんが土曜日のお昼ごはんを作る当番っていうルールがあったらしくって、お父さんのメインのレパートリーが焼きそばだったから、結果的に土曜日は焼きそばって感じになってたっぽいよ。2年ぐらい前にお母さんから聞いたんだけど。」「そういうことだったの?笑」

姉妹として同じ環境で育っても、各々が持っている記憶や認識や情報は違っていて、大人になって随分経った今頃になってふとした会話の中でその違いが発覚することがしばしばある。妹が弟と話していてもそういうことがあるらしい。そういう、お互いの記憶や情報の交換し合いをすることで子供の頃の思い出が足されていくのは、くすぐったくもあり、楽しくもある。

今度実家に帰ったら、久しぶりにお父さんに焼きそばをリクエストしてみようかな。

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みやざきなお / 宮嵜 菜生
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