成功の循環モデルの鍵は「良心」だ!■□下田コラム□■vol.10
マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム氏が提唱している成功の循環モデル。
成功の循環モデルとは、組織を4つの質で捉え、
・周囲との関わり方やコミュニケーションといった「関係の質」が高くなると、自然と考え方も前向きになり、目的意識が高まって「思考の質」が上がる。
・そうすると、人々の積極性や主体性といった「行動の質」を高め、成果が生まれて「結果の質」につながる。
・それが、ますます関係の質を高めるというサイクルが廻っていくというものです。
組織づくりの場面で出てくる「心理的安全」とは、まさに「関係の質」を良くすることとも言えます。
この「成功の循環モデル」 聞けばもっともな話です。
では、どうやってこれを実現するのか?
ということが実務上の課題となります。
「成功の循環モデル」を廻すきっかけとなるのが、「関係の質」の向上です。
ここで鍵となるのが、「良心」なのです。
「良心」?
「良心」というと、日本国憲法第19条などに言葉が出てきます。
多くの人は、なんとなくわかるが、よくわからないのが、「良心」だと思います。
私は、この良心について、東洋儒学の大家、福岡女学院大学名誉教授の難波征男先生のお話を聞いた時に、すっきりと理解することができました。
それ以来、難波先生に教えて頂いた意味で使っています。
東洋儒学では、「良知」という言葉が出てきます。これが、現代で言うところの「良心」に近い意味です。
どちらも「良」という漢字が入っていますので、「良いこと」みたいな意味で捉えてしまいそうになります。
しかし、難波先生はこうおっしゃいました。
「良」の字を現代の日本語にしたら「本来」という意味で捉えるとわかりやすいと。
つまり、「良知」とは「本来知っていること」。「良心」とは「本来の心」。
人は教えられずとも湧き上がってくる感覚、感情があります。
それが、「良知」であり、「良心」だというのです。
例えば、電車で座っていて、お年寄りが前に立ったら「席を譲った方がいいよなー」という感覚が芽生えてくる。それが良心ということです。
この時に実際に席を譲るという行動に出られるかどうかは別の話です。
人には、生まれながらに感じる感覚というものが備わっていて、それは、「人と仲良くしたい」「人と親切にしたい」「人に寄り添いたい」という気持ちなのです。
その気持ちに忠実に、つまり、良心に従って行動をすると、たいていのことは間違わない。
ということなのです。
ちなみに、日本大学救命救急センター長でもあった脳の専門家、林成之氏は、「人と仲良くなりたい」「人に貢献したい」というのは脳の持っている本能であると言っています。
話を主題に戻します。
「関係の質」を良くするのは、「人と仲良くしたい」「人に親切にしたい」という良心を職場で発揮させることなのです。
では、良心はどのような時に発揮されやすいのでしょうか?
その答えは簡単で、「よく知っている人に、良心は発揮されやすい」です。
先ほどの電車の中の例です。
目の前に立ったお年寄りが、見ず知らずの人と、親戚のお婆さんだったらどうでしょうか?
見ず知らずの人の場合は、席を譲ったり譲らなかったりするかもしれません。
しかし、親戚のお婆さんだったら大抵の人が席を譲るのではないでしょうか。
そこまで近しい人でなくても、例えば同じマンションに住んでいて、挨拶をする程度の知り合いだとしても、多くの人は席を譲るのではないでしょうか。
人はその人のことを知れば知るほど、良くしてあげたいし、親身になってあげたくなるのです。
それなのに、昨今の社会では、会社ではプライベートのことを聞いてはいけないというような風潮があります。
趣味や家族のこと、どんなことを大切にしていて、何が好きで、何が嫌いなのか?
これを知らずして、親身になることは難しいのです。
確かに人によっては、家族のことを職場では話したくないという人もいるでしょう。
その人から無理に聞き出す必要はありません。その人は、「そういうことを職場で話したくない」という価値観を知ればいいのです。
それなのに、「嫌な人もいるからプライベートのことは聞くこと自体を慎みましょう」な組織の風土があったとしたら、そこに「良い関係の質」は生まれないのです。
お互いをよく知ると「関係の質」が高くなります。
そうすると、良心が芽生え仲間のためを想ったり、相手に親切にしょうと思います。つまり「思考の質」が上がります。
その良心の通りに行動とすると、「行動の質」を高まります。
結果、成果が生まれて「結果の質」につながります。
成功の循環モデルは、「良心」を起点としてこのように循環していくと捉えると
実際の職場ではわかりやすいと思います。
では、こういったコミュニケーションに適しているツールはなんなのでしょうか。
その一つが、ヤフーが取り入れ、職場の活性化につながったことで話題となった1on1ミーティングです。
1on1ミーティングとは、わざわざ時間を設定して、上司と部下が1対1で行うコミュニケーションのことです。
一般的には、業務とは離れて、部下の考えや価値観などを知り、部下をよく理解すること。部下の困りごとをサポートするために活用する場です。
この時間は、あくまでも部下が主役であり、部下を知ることです。
この時間を通して、良心が発揮されやすくなる関係性を作っていくのです。
最近では、多くの企業でも取り入れられていますが、その意図が正しく理解されていないことも多いようです。
業務報告の場になったり、部下が話したくないことまでも無理やり話させられているという問題が生じていることもよく耳にします。
正しい、1on1の方法を知り、それを職場で活かすことで、良心が発揮される環境づくりができます。
それが、「成功の循環モデル」を廻すことになり、組織に良い結果をもたらすようになるのです。
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