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Traveler's Voice #24|末永恭大

Traveler's Voice について

Traveler's Voice は特別招待ゲストの方からエスパシオに泊まった感想をインタビューし、読者のもとへ届ける連載記事です。この企画の目的は”自分ではない誰か”の体験を通して、エスパシオを多角的に知っていただくことと、ゲストが日頃行っている活動を合わせて紹介するふたつの側面を持っています。ご存じの方も多いと思いますが、エスパシオは「いつか立派な観光ホテルになる」と心に誓った山口市にあるラブホテルです。この先どんなホテルに育っていくのか、まだ出発地点に立ったばかりですが、この企画を通してゲストの過ごし方や価値観を知り、計画にフィードバックしたいと考えています。インタビュアー、執筆、カメラマンを務めるのは「エスパシオ観光ホテル化計画・OVEL」を進めているプロデューサーの荒木です。それではインタビューをお楽しみください。


ゲスト紹介

Travelers Voice 第24回目のゲストは末永恭大すえながやすひろさんです。末永さんは山口市でカフェ「hangout」の運営と、日替わりバー居酒屋「カッコウ」の経営をされています。ハングアウトは山口市で最もコミュニティ作りに力をいれているカフェとして親しまれており、そこで培ったコミュニティを広げるために「カッコウ」という新たなプロジェクトを進めています。そんな末永さんにコミュニティについて根掘り葉掘り聞いてみたいと思います。


末永さんが泊まったお部屋紹介

末永さんに宿泊していただいたお部屋は401号室です。黄色いインテリアにビビッドなアートが映え、バルコニーからはテニスコートの「0」アートを見下ろすことのできるスタンダードルームです。


インタビュー

Araki:こんばんは、ご来店ありがとうごさいます。ワイン飲みながらのナイトインタビューもいつのまにか定着してきました 笑(僕は飲んでいません、というか飲めない人です)。末永さんはみんなに「ヤス君」と呼ばれているので親しみを込めてこのインタビューでもニックネームで呼ばさせていただきます。ヤス君といえば、みんな大好きカフェ「hangout」と日替わりバー居酒屋「カッコウ」の店主だから、今更自己紹介なんて必要ないのかもしれませんが、トラベラーズボイスは色んな人が読んでいるので、軽く自己紹介お願いします 笑。

Yasu:本名は末永恭大(すえながやすひろ)です。一度も正しく読まれたことがないし、恭しいうやうやしいかどうかも大変怪しいんですけど、この名前で28年やってます 笑。出身は山口市です。昔から都会への憧れがなくて、ずっと山口で暮らしているんですけど、今思えば末永の家系はみんな防府高校に通っていて、ぼくも自然と防府高校を選び、サッカーやりながら淡々と生きる学生時代だったように思います。そのまま敷かれたレールを走って山口大学の経済学部へ進学して、公認会計士をめざしていたんですけど、大学1年の夏休みに何気なく訪れたフィリピンの短期語学留学先で価値観がぐらっと変わるようなできごとに遭遇するんですね。といっても特に変わったエピソードがあったわけでもなく、フィリピンで偶然出会ったユニークな留学生たちと交流することで、自分がいかに敷かれたレールの上を走っていたのか、そのことに気づかされた瞬間でした。

Araki:なるほど、初めて聞きました、新鮮です 笑。でもヤス君の世代は幼少期からインターネットがあって学生時代にスマホを手にしているだろうから、色んな生き方<情報>を自然と目にしている世代だと思うんですけど、そうでもないんですね。

Yasu:ぼくたちは高校入学時にスマホを手にしはじめた世代だと思うんですけど、SNSといっても友達同士で繋がっているだけで、今のようにインターネットを広く活用できていなかったと思います。どんなに優れた道具でも使い手のリテラシーによって価値が揺らぐんでしょうね。なので僕の場合は、物理的に山口を離れてフィリピンという異国で過ごした時間が世界の広さを知る経験となっています。

Araki:たしかにそうですね。道具の価値は使用者に委ねられているんでしょうね。フィリピン留学後どのように生き方が変わったんですか。

Yasu:フィリピンで寮に寝泊まりしていたときに、僕とはまったく異なるライフスタイルを目の当たりにして、そこからもっと外の世界を知りたくなったというか、色んな人と関わりたいという好奇心が芽生えたんだと思います。とはいえその好奇心の矛先をどこに向けるべきか分からないまま、ひとまずせっかく学んだ英会話を日常生活の中で使ってみたくて、大学3年の後期からもう一度フィリピンに行って、オーストラリアへのワーキングホリデイの準備運動のようなことをしました。父が英語教員でオーストラリアに滞在していた経験があり、小さいころからその話をよく聞かされていたので、行き先はとくに迷うことなくオーストラリアのメルボルン一択でした。

今でもトラウマのように覚えているんですけど、メルボルンに着いたのが12月24日のクリスマスイヴで、オーストラリアはクリスマスを家族で過ごす文化があるから驚くほど街が閑散としていて、えっ就活どうしようといきなり路頭に迷うことになります。右も左もわからないままTVに流れるクリケットの試合を横目に就職活動をはじめてはみるんですけど、欧米の威圧感にメンタルがやられてしまって、仕事見つけるより先に休まる家を見つけないと活動できない精神状態になってしまって、家探しを始めます。そうこうしているうちに家も見つかり、回転寿司のバイトに就くこともできました。そこで2ヶ月間働いた資金でコーヒーショップの塾のようなものに通いながら目的としていたカフェの就職先を探しはじめます。今ではスペシャルティコーヒーの価値はよく理解していますが、当時は「メルボルンといえばコーヒーだろう」という安易な好奇心によって行動していました。

Araki:スペシャルティコーヒーのあれこれをメルボルンで修行したんですね。それは貴重な経験ですね、日本のバリスタに羨ましがられるでしょうね。

Yasu:メルボルンはカフェの出店数が半端なくて、その数を山口市にプロットすると、商店街に10軒くらいある密度感だと思います。どのカフェもお客さまで溢れかえっていて、生活の一部にコーヒーがあるってこういうことなんだと知ることができました。とにかくコーヒー需要が高い街なので価格も安くて、1日に何度も来店する人が多かったと記憶しています。そんなメルボルンでは、バリスタの地位が確立されていて、バリスタとして働くためには前提としてどこかで2年間修行積んでから来い、というスタンスなんです。その状況下で僕のような来訪者がカフェに入り込むためにはどうしたらいいんだろうと考えたけど、結局その答えは見つからなかったので、履歴書を数百枚配り歩くという暴挙に出て 笑、運良くというか奇跡的に知り合いづてに働き口が決まります。

Araki:その行動力というか野心すごいですね。もしそこで就職が決まっていなかったら今のハングアウトは無かったかもしれませんね 笑。バリスタの修行ってどんな感じですか。

Yasu:ワーキングホリデイという短い期間ですけど、エスプレッソの抽出とミルクスチームはひたすら勉強しました。ドリップと違ってエスプレッソは機械任せと思われがちですが、実は全く逆で、グラインダーやタンピングという小さな変数のなかでの調整となるので、かなり知識と経験がものを言う世界なんです。だから今でも勉強会に参加したり、新しい道具を試してみたり試行錯誤する毎日です。メルボルンはイタリア移民がコーヒーを持ち込んだ国なのでエスプレッソ抽出が主流でドリップ抽出は日本のように普及していなかったし、今でもエスプレッソが好まれています。なのでドリップの技術は日本に帰ってきてから学ぶことになります。

Araki:ぼくも最近になってエスプレッソの技術習得が大変だということを知り驚きました。確かにドリップと違って機械任せに見えますもんね 笑。ワーキングホリデイから帰ってきてハングアウトを始めるんですか。

Yasu:そうです、山口に帰ってきて大学へ通いながらハングアウトをはじめることになります。ハングアウトは当時は立ち飲み屋だったんですけど、理由は分かりませんが休業していて、その場所を復活させたいという話が舞い込んできて、店長としてハングアウトの運営をはじめます。それが5年半前の話になります。はじめは立ち飲み屋としてはじめるんですけど、そこから1年半くらい経過し、大学卒業とともにカフェとして営業形態を変えることになっていきます。立ち飲み屋のときは本当にグダグダで、今思い出しても申し訳ないというか恥ずかしいというか 笑。

Araki:そうなんだ、今はどこから見ても立派なカフェですけど、立ち飲み屋だったんですね。ヤス君のやりたいことは焙煎に特化したスペシャルティコーヒーではなくカフェなんですね。

Yasu:そうです。最近は知識がついたこともあって、人気ロースターの豆を仕入れてコーヒーを広く楽しんでもらえるようにしています。色んな豆を取り扱え紹介できることがカフェとしての役割だと思っているので、その媒介者として抽出の技術を上げるように日々鍛錬しています。と言ってもコーヒー一途というわけでもなく好奇心が色んな方向へ広がってきて、最近ではワインにはまっています。まだまだ勉強中ですが、大先輩である宇部のCafe126のようにナチュラルワインを扱うカフェをめざしています。

Araki:確かにサービス内容もそうだけど、店の雰囲気もCafe126と似ていますね。それにしても行動力ありますね。

Yasu:昔は完璧主義だったので、準備ばっかりして行動しないタイプだったんですけど、最近はまずは行動という感じで、やりながら質を上げるようにしています。

Araki:そうなったきっかけはなんですか。

Yasu:なんだろう。完璧じゃないとやらない自分に嫌気がさしたんですよね。質のいい失敗が成長につながることを経験として分かるようになったこともあるんですけど、やっぱり運を呼び寄せるための努力は大切ですよね。だから不完全でもとにかく行動するようにしています。

Araki:なるほど、その典型が「カッコウ」ですね 笑。

Yasu:そうですね 笑。ハングアウトで手当たり次第コラボイベントしていて、今思えばやり過ぎというか、カフェとの親和性もそっちのけであらゆる業種とコラボしていました。カフェとおばんざい屋とか、もう何が何だか分からない状況で 笑。まあでもそれはそれでカオスな感じの楽しさがあって良かったんですけど、もう少し出店者にとって相応しい場所を提供したくなって、1日出店型の日替わり飲食店「カッコウ」を始めることになります。僕自身もワインスタンドをカッコウで出店したりしています。

Araki:2024年9月中旬オープンでしたよね。まだ数ヶ月しか経ってないのにすごい出店者の数ですよね、凄い。いままで築き上げてきたコミュニティの強さが表れていて素晴らしいです。

Yasu:ありがとうございます。運営をはじめてみて、改善点がいろいろ見えてきたので、時間と共に磨きをかけていけたらいいなと思っています。なかでも閉店後の片付け問題が深刻で 笑、朝方まで片付けしている出店者さんもいるので、どうにかして片付けを支援できるような仕組みを作りたいなと思っています。

Araki:確かに閉店後深夜の片付けは過酷ですね 笑。ではでは、コミュニティーについても聞きたいのですが、ヤス君はコミュニティーをどのようにイメージしていますか。

Yasu:ハングアウトはひとつの点が徐々に広がっていくイメージですが、カッコウは色んな線(物語り)が絡まり合って、時間をかけて大きなかたまりになっていくようなイメージです。この街に来ている人みんながどこかで繋がっているような、、、イメージとしてはそんな感じです。

Araki:博報堂が言ってた界隈消費のアップデート版みたいですね。博報堂が言っていたことは、確立された界隈の中で<見つける、学ぶ、盛り上げる、広がる>というステップで消費が進んでいくという考え方です。情報の伝達経路がSNSによって変わってしまったので、見たいものしか見ない<見えない>世界において、界隈の中から消費が広がるという考え方だと思うんですけど、カッコウがやっていることは色んな界隈の人が同時間軸で<絡まり合って>界隈と界隈が繋がる可能性を秘めています。そこがカッコウの特徴であり、良い意味での野蛮さかもしれませんね。

Yasu:なるほど、そういう整理の仕方があるんですね。ハングアウトは界隈をつくることだとすると、カッコウは界隈と界隈を繋げるってことかもしれませんね。あんまり意識はしてなかったけど少し意識的に考えながら取り組んだほうが良い気がしてきました。それってつまりコラボですよね。

Araki:そうだと思います、最近コラボが蔓延している背景には、界隈と界隈がつながるという利点が大きいからだと思っています。洞春寺界隈、アルスコーレ界隈、カピン珈琲界隈、山口市だけでもいろいろあると思うんですけど、いろんな界隈が繋がる場所っていうのは価値が高いですよね。そこから考えを発展させると、物理的な場所に縛られない消費の仕組みも考えられそうですね。

Yasu:実はカッコウの店長会議でもそのようなアイデアが出ていて、カッコウでは物理的な出店が必要になりますが、離れた場所でも繋がれるバーチャル空間での消費も視野に入れていきたいと考えています。

Araki:課題てんこ盛りで楽しそうですね。成長の予感しかしないので応援しています。

Yasu:やりだしてからどんどん課題が見えてきているのが現状で、山積みになるタスクをひとつずつこなしているんですけど、それと同時にやりたいことも溢れ出てきて、ソムリエの資格も取りたいし、ワインのボトル売りもしたいし、古民家から発掘したアンティーク(古い物)を新しいアイデアで売ってみたいし、やりたいことてんこ盛りです。

Araki:やりたいことってどのように見つけているんですか。

Yasu:とくに何かのモデルを参考にしているわけではないんですよね、やろうと思ってから同じようなこと考えている人がいるかどうかはリサーチするんですけど、基本的にパッションのみで駆動しています。

Araki:行動力も素晴らしいけど、巻き込み力もありますよね 笑。サッカーやってたからなのかなあ、チームワーク得意ですか。

Yasu:ぼくのなかではチームワークというより1対1で組むダブルスのようなものです。組んだ相手と全力で戦うって感じでしょうか。

Araki:なるほど、どちらにしてもスポーツっぽいですね 笑。戦った直後にちゃんと反省会するところもそうだし、全国目指そう!みたいなバイブスを感じます。ヤス君はそのなかで監督ではなくプレイヤーで居続けたいのでしょうか。

Yasu:そうですね、プレイヤーでいるつもりです 笑。だからと言ってとくにリーダーシップを取りたいわけでもなく、組んだ相手と対等な立場でプレイしているつもりです。なんですけど、、、やっぱり監督することやルールを明確に決めることやケアすることの必要性にも気づき始めて、何でも自分で抱え込まずにとりあえずインスタの運用をアウトソーシングするようにしました 笑。

Araki:運営ってフラットにチームプレイできる限界値があるんでしょうね。今の状況を見ると、監督が求められるボリュームに突入したのかもしれませんね。でもやっぱり僕が見る限り、ヤス君はプレイヤーというより監督っぽいですけどね。

Yasu:そう見えるんですね、まあでも確かに人に任せることにあんまり抵抗がないし、傍観者的立ち位置は好きでもあります。今思えば、一度信頼した人には全部おまかせになりがちです 笑。

Araki:仕事を任せることにストレスを強く感じる人って、会社がいくら成功していても経営者を離脱するのをよく目にするし、任せることができるのはひとつの才能かもしれませんね。ヤス君のコミュニティ作りに具体的な目標とかあるんですか。

Yasu:目標というか、身勝手な欲望はあるんですけど、身の回りで起こっている人と人が関わるすべての事象はすべて自分を経由していると思いたいんですよね。おこがましいとは分かってるんですけど、なぜか自分のなかにそんな欲望があります。

Araki:コミュニティって曖昧な言葉だけど、ネットワーク的に広がることを夢見る人もいるし、閉じることで界隈を成立させる場合もあります。ヤス君は前者寄りかな。

Yasu:そうですね、人と人が思わぬところで繋がっている様子を見ることに喜びを感じます。単純な繋がりが次第に複雑に絡まり合って、繋がるはずのないところが繋がって、気がつけばコミュニティの中心すら変わってしまうような、自立分散的なコミュニティ同士の絡まりに興味があるのかもしれません。

Araki:なるほど、絡まるっていうキーワードがイイですね。絡まりしろのあるコミュニティって、閉じることと広がることの相反する二つが共存していて、ある種の矛盾を孕んだ存在だと思っています。そのことを僕なりにイメージへ置き換えると「三角錐の多孔的なピラミッド=穴だらけの三角錐チーズ」という感じでしょうか。穴からいろんなものが出入りすることで流動性があり、それでもピラミッドという秩序は保ちつつ、状況に合わせてピラミッドが転がることで頂点が変化する、そんな風にイメージしています。つまり、中央集権的なものと自立分散的なものを対立させるのではなく、うまく共存させることに可能性を感じています。

Yasu:IT業界のプラットフォーマーはその複雑な現象を理論化しプログラミングするんでしょうけど、ぼくがやっていることは、理論化するわけでもなくゆるっとカフェというリアル空間で似たようなことを実験しているのかもしれませんね。

Araki:それって今っぽいというかインターネット以降のコミュニティ論の応用だと思います。

Yasu:ちょっと話が逸れますが、愛知でコーヒー屋をやっている先輩から「結局コーヒー屋も水商売だからね。」と言われて、確かにそうかもしれないと気づかされたというか、お客様は商品だけでなく人につく傾向が強いと思っています。

Araki:たしかに、何百枚履歴書配り歩いても最終的に知り合いづてに就職先が決まることもそうだし 笑、デザイン業界であれば作品の質よりも関係性によって注文が成立する事実も同じことだと思います。もちろん作品の自立性というのは存在しますが、やっぱり人は人に最も興味関心があるから、作品よりも関係性に寄り添いがちです。それを水商売だと言ってしまえばその通りかもしれませんね。

Yasu:そのことに気づいてから、味だけで勝負するのではなく、その周辺を取り巻くコミュニティを強く考えるようになりました。

Araki:それって「美味しさ」が料理だけに閉じていないってことですけど、コミュニティもしかり、食器や空間やそこに流れる音や、そういった外部環境が複雑に作用して「美味しさ」が決定しています。例えばハングアウトでは浅煎りドリップをワイングラスで提供していますが、これによって確かに味そのものが変化しているし、これってめちゃくちゃ大事なことだと思うんですよね。ヤス君のなかではその延長にコミュニティがあるんでしょうね。千利休や北大路魯山人がそれを体現していた人だと考えていて、彼らを現在の職で例えるなら<建築家あるいはインテリアデザイナー>のような発想なんだと思います。

Yasu:なんかすごい偉人と並べてくれて 笑、恐れ多いです。

Araki:確かに褒めすぎかも 笑。

Yasu:好きな人とご飯食べるのが美味しいよねっていう単純な発想なんですけど。そうそう、この街を古くから知っている方に、昔はみんなでこの街をつくっていたけど、最近そういうコミュニティないよねって言われたことがあって、ぼくらの世代でそういうコミュニティを復活できればいいなと考えています。

Araki:そうですね、昔は人口が多く流動性が担保されていたから、閉じる方法論がコミュニティをつくることだったけど、人口が減り流動性が確保できなくなった現在では広がったり繋がったりするタイプのコミュニティが求められているんでしょうね。

Yasu:コミュニティが閉じないように意識はしているんですけど、そのためにも外からの新しい風が欲しいですね。

Araki:その欲望ってとくに地方で必要とされているものだと思うので、頑張って構築してください、応援しています。ではでは、宿泊の感想が後になってしまいましたが、、、

<ナイトインタビューを終えて、翌朝>

おはようございます。昨晩はヤス君の活動について伺いましたが、一夜明けて、エスパシオに泊まった感想を教えてください。

Yasu:目覚めが最高でした。紅葉のシーズンだから景色が一段と綺麗ということもあるけど、バルコニーで過ごす時間は、まるで大好きな芝生の上でごろごろ過ごす時間のようでした。そういうぼーっとする時間が好きなので、久しぶりにリラックスできる時間でした、ありがとうございます。寝るまでの時間とか起きてからの時間を有意義に使えるってやっぱり最高ですね。そうそう、最近荒木さんに勧められて購入したパワーアンプとヘッドホンも持ってきたので、音楽も快適に楽しむことができました。

Araki:ありがとうございます、芝生に例えられたのは初めてです 笑。

Yasu:メルボルンの公園で過ごした時間を思い出したんですよね。芝生は地面に接しているので大きなエネルギーに身を預けるような感覚があって、エスパシオの部屋は地面から離れているけど不思議と同じような感覚になりました。そういう寛大な力に包まれていると1人の人間という命の小ささに気が付くことができるし、そうすることで不思議と抱えていた悩みが溶けて無くなり開放的な気分になれるんです。こういう感覚って自分以外の気候などが影響しているから、得ようとしてもそう簡単に味わえない貴重なものなんです。ぼくはいつも頭の片隅で芝生を求めているんですけど、ときどき今日がベストだって思える日があって、そういう日は思い切ってお店を休んで、自然とつながることに全振りしたい気分になります(なかなか実行できていませんが 笑)。今回の宿泊は気候や季節などの偶然がうまく重なって、とても素敵な宿泊体験でした。

Araki:素敵な感想ありがとうございます、芝生は何の比喩なんだろうと考え込んでしまいました 笑。普段はどんなホテルに泊まるんですか。

Yasu:一人旅が多いので、だいたいサウナ付きのカプセルを選ぶことがほとんどです。だからエスパシオのような贅沢な空間に泊まることはほんとに久しぶりです。

Araki:何だろう、男性はとくに1人で宿泊するときは贅沢空間を選ばない傾向がありますよね。それって今も昔もあまり変わっていない気がします。彼女ができたタイミングで急にラグジュアリーなホテルを探し出す、みたいな 笑。そう考えるとまだまだホテルは車のようなもので、従来のステイタス感から脱却できていないんでしょうね。

Yasu:そうかもしれませんね、僕たちの世代を起点としてステイタスのあり方に変化が訪れることを期待していますが、まだまだ先の話なのかもしれませんね。

Araki:消費者の純粋な欲望ってあるのか分からない時があって、実はサービス提供者の価値観に引っ張られて欲望が形成されているような気がするんです。そうそう、山口に来て若い世代と話すことが増えたんですけど、意外だったことはそう簡単に人間って変わらないんだなと感じたことです。なのでヤス君世代の人達と話していても普通に楽しいと思えるし、それを別の角度から見ると、ステイタスのような価値観もなかなか変わらないのかもしれないなと感じています。

それにしてもやっぱり宿泊の感想って難しいと分かっていながら質問しているんですけど、芝生の例えはちょっと感動したので満足しました 笑。最後に今後の目標などあれば教えて下さい。

Yasu:ここには自然とアートが飾られていますが、ハングアウトでもアーティストを支援できるようなイベントを増やしていきたいと思っています。ぼくにはまだアートを語るスキルがありませんが、いろいろと相談に乗って下さい。

Araki:相談いつでも承ります 笑。アートワールドは独特のルールがあるから、キュレーターを入れたほうがいいかもしれませんね。アーティストにとっての場所の価値は発表の場であるとともに営業を代行しているような側面もあります。スムーズに購入へ結びついたり、新たな価値を与えられたり、一言で支援といってもアートはいろんな方法によって支えられているので、そのあたりをちゃんと設計できる人に関わってもらうことをおすすめします。

Yasu:なるほど難しそうですね。でもまず行動すると決めているので 笑、やってみます。最後にこのインタビューを最後まで読んでくれた人に伝えたいんですけど、ハングアウトやカッコウはとても小さな商いではあるんですけど、繋がりというのは不思議なもので時間と共に広がったり深まったりと大きく成長する実感があります。ハングアウトはそれを見せるようなプロジェクトだとすると、カッコウはそれを支援するプロジェクトだと思っています。みんなが色んなかたちで関われる場所をこれからも育てていくので、興味を持った人は気軽に遊びにきてほしいし、今まで見守ってくれた方達は引き続きてどんな形であれ応援してくれると励みになります。

Araki:具体的な応援の仕方考えておきますね 笑、本日はありがとうございました。色んな人に読んでもらいたい記事になったと思うので編集者として満足です。今度時間あれば山口市の「おすすめ芝スポット」案内してください 笑。


day of stay:december 10, 2024

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