【新生児の生理学】新生児無呼吸発作 その1
今日の朝カンファは無呼吸発作が疑われるチアノーゼで入院した子について。日齢1に産科病棟でチアノーゼ、経皮的酸素飽和度(SpO2)が60%台だったため、NICUで観察および原因検索を行った。それまでも無呼吸アラームが時々鳴っていてアラーム機器の記録からは体動があった記録があったことから呼吸運動はあったものと推測された。今回は無呼吸発作の定義と原因の考え方を解説した。
新生児の無呼吸発作の定義は20秒以上の呼吸休止または20秒未満でも徐脈やチアノーゼを伴うものとされる。一般的に無呼吸は中枢性無呼吸と閉塞性無呼吸、混合性無呼吸に分類される。これは成人でも小児でも同じである。中枢性無呼吸は呼吸中枢からの指令の問題で起こるので、無呼吸発作と呼吸運動の休止が同時に起こる。閉塞性無呼吸は上気道の閉塞で起こり、呼吸中枢からの指令はあるので呼吸運動はみられるが、換気不良の結果無呼吸に至る。この経過は新生児蘇生法講習会で講義される一次性無呼吸-胎内で低酸素状態になったときに胎児の呼吸が始まり、その後無呼吸となる-と同じ状態である。無呼吸を起こす前後の呼吸様式を観察することは原因とその後の経過を考える上でとても重要になる。これを区別するためには呼吸をよく観察することが大事である。そして観察というものは漫然としていても意味がないので、観察の目的と要点を意識してよく観察しなければならない。例えば、今回のような無呼吸発作であれば呼吸のリズム、胸郭の動きの変化、喉頭の動き、モニターの変化等、病態の判断に必要な情報に意識を集中してよく観察するのである。古くさいと言われるかもしれないが、視診を含めた五感を使った診察は新生児であってもとても重要である。
新生児の無呼吸で頻度の多いものは中枢性無呼吸では感染症、低血糖、けいれん、脳梗塞、頭蓋内出血、閉塞性無呼吸では体勢、喉頭軟化、胃食道逆流、Asymmtrical FGR児(頭部が大きく体の肉が少なく、睡眠深度が深くなると肩が落ちて上気道が狭くなり換気量が落ちる)等がある。ほかには周期性呼吸の延長で多血であったり肺血管抵抗がまだ高かったりする時期では浅い呼吸の時や短い呼吸休止でもチアノーゼやSpO2の低下がみられることがある。分娩時のくも膜下出血は正常分娩でも数%以上の頻度でみられるものだが、生後すぐには無呼吸は起こさず、生後1-2日経った頃に啼泣による過換気で血管攣縮し無呼吸を起こすことが多い。寝ているときの無呼吸か、起きているときの無呼吸か、起きているときであれば泣いた後の無呼吸かということから原因を考えていくとわかりやすい。また、分娩時に低酸素状態を経験した児では、啼泣後の無呼吸ないし浅呼吸が生後数時間以降見られるようになることがある。これは機序を説明している教科書や文献にであったことはないが、過換気により血中二酸化炭素濃度が低下することで脳血管が収縮することと、低酸素の影響で軽度の脳浮腫が合わさってみられる現象だろうかと推測している。