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【NCPR編】救命の流れ:無呼吸即人工呼吸。心拍確認の必要なし

 蘇生の初期処置の後は呼吸と心拍を確認して人工呼吸の適応を判断します。自発呼吸なしまたは100回/分未満の徐脈の場合は人工呼吸を行います。自発呼吸があり、100回/分以上の心拍がある場合は安定化の流れに入ります。

救命の流れの入り口

 人工呼吸は生後60秒以内に開始しなければなりませんので、時間との闘いです。それでは呼吸と心拍を実際に確認する場合それぞれどうやって評価するのでしょうか。呼吸は児を見て判断します。心拍は聴診あるいは臍帯動脈の付け根の触診で評価します。呼吸と心拍のどちらが先に評価できるかは言わずもがな、呼吸です。見て判断するのは一瞬ですが、心拍の確認には聴診器を当てて6秒聴取して10倍する作業が必要で、当然のことながら最低6秒以上は絶対に必要になります。ですので、まず呼吸をしているかどうかを判断します。そして無呼吸の時には心拍がどうであろうが人工呼吸を開始することになりますので、心拍の評価を待つ必要はありません。無呼吸即人工呼吸です。個人的には絶対に人工呼吸を開始しなければならないこのタイミングでわざわざ心拍を評価する行為は、Apgar scoreをつけるため以外の意義がないと考えていますが、NCPRの試験で「初期処置後に無呼吸の場合には心拍の評価を行わず人工呼吸を開始する」という選択肢は誤りという、現実に全くそぐわない問題が出題されていますので、それに忖度して「待つ必要はない」と記載しており、講習会では心拍の評価は並行して行いつつ人工呼吸を開始するように話さざるを得ません。しかし、人工呼吸を開始しておき心拍の評価はすっ飛ばしたとしても、次に蘇生処置が変わるタイミングは30秒後です。心電図モニターをつけておき、人工呼吸開始から30秒後に心拍を評価して次の行動が決まります。人工呼吸と並行して心拍を確認したとしても、その心拍数によって開始した人工呼吸が変わるわけではありません。結局初期処置後に無呼吸だった場合、心拍に関係なく人工呼吸は必ず行わなければならず、かつ蘇生処置の内容が変わるのは人工呼吸を開始して30秒後の心拍数によるということです。ですからガイドラインを作った先生方には申し訳ありませんが、四の五の言わずに直ちに人工呼吸を開始して、心拍の評価はここでやる必要性はなく後回しで良いのです。
 自発呼吸がある場合には聴診で心拍の評価を行います。新生児の心臓聴診はベル型で聴く方が心雑音を聴取しやすいですため、日常診療ではベル型で心音を聴きます。ですが、蘇生の時には膜型で聴取しましょう。ベル型では皮膚に密着しないことには音が聞こえません。やせ形であったり体格の小さな早産児では聴取できなかったり、できるようになるまで時間がかかったりします。一方膜型であれば当てればとりあえず心音は聴こえます。時間勝負である蘇生の最中に心雑音の有無を判断する必要性は全くありません。心雑音は後で落ち着いてから評価すれば良いものであり、蘇生の最中は心音を聴いて心拍数を判断できればそれで十分なのです。聴診ができないときは臍帯の触診で判断しますが、血圧が低いときには触れなかったり、聴診に比べて心拍の過小評価が多いことが知られています。ということは、触れにくい場合には血圧が低いかもしれませんし、たまたま触れている部分が動脈から離れて感じにくいだけで実際の心拍はもっと高かったりするかもしれません。どちらにしても人工呼吸を開始することで肺血流が増加し体血圧は上昇しますし、心拍が保たれており人工呼吸がそもそも不要な児だったとすると、人工呼吸を行ったらすぐに元気に泣き出しますので、やってみていらなさそうならそこですぐに中止してしまえば良いのです。過小評価で多少やり過ぎることよりも、過大評価をして必要な蘇生処置を行わない方がよっぽど有害です。

【極論かましてよかですか】
 蘇生の初期処置でも無呼吸の場合は即人工呼吸。心拍確認はいらない(後回し)
 蘇生時の聴診は膜型で行え

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