【ESG 企業分析⑧】GPIFや環境省から高評価!日立製作所のESGへの取り組み
本記事はESG / SDGsに力を入れて取り組んでいる上場会社の事例を取り上げるシリーズになります。
第8弾として、本日は株式会社日立製作所(以下、日立)を取り上げたいと思います。
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日立について
情報・通信システム、社会・産業システムを主軸に、電子装置・システム、建設機械、高機能材料、オートモティブシステム、生活・エコシステム等を幅広く展開。電力・エネルギー、産業・流通・水、アーバン、金融・公共・へルスケアの4分野が注力事業分野。人工知能等の強化分野の開拓も推進。事業ポートフォリオの再構築を図る。海外市場の成長を加速。
出所:SPEEDA、会社公表資料より作成
CSR/ESGにおける対外的評価
ESGファイナンス・アワード・ジャパン(2019):銀賞
また2019年度に環境省が創設した「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」環境サステイナブル企業部門において銀賞を受賞しており、ESG投資に関する取り組みについて国からも大きな評価を受けています。
受賞理由
伝統的な製造業からの変革期にあって、事業と社会課題解決という理念が前面に打ち出される得心の行くものとなっている。
初開催のESG説明会ではトップのコミットメントを明確に示し、投資家等からのフィードバックを真摯に受け止める姿勢がみられる。サステナビリティ経営をグループ全体に浸透させるためのグループガバナンス体制が確立され、種々の課題解決に向けスピード感が増している。
気候変動を含む会社の重要環境側面について野心的な長期目標と、それを踏まえ3年毎に設定する「環境行動計画」に基づく着実なPDCA推進姿勢も高く評価される。
出所:環境省
優れた統合報告書(GPIF調査):5運用機関が選定
・注力する社会イノベーション事業を軸に記載。今までの施策の成果と課題を振り返り、めざす姿を実現するための戦略をセクターごとの価値創造ストーリーで説明しており、今後の方針がよく分かる内容。
・財務・非財務の目標、持続的成長を支える仕組み、キャピタルアロケーション戦略、イノベーションなどの説明が分かりやすく、全体の完成度が高い。TCFD では、事業部毎に機会とリスクを開示している点が優れている
・セクター別目標 ROIC 達成に向け事業ポートフォリオ再編を実行している点、キャピタルアロケーションについてキャッシュイン・アウトを M&A 含め明瞭開示している点、また、経営の執行と分離、外国人取締役の積極採用でグローバル・ダイバーシティを徹底している点を高く評価。
出所:「GPIF の国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」GPIF(2021/2/24)
環境省やGPIFからも優れた評価を受けている日立はどのような開示をしているのでしょうか。次章以降は評価されている項目を具体的に見ていきたいと思います。
ESG説明会開催による綿密なコミュニケーション
2019年9月に初めて開催されたESG説明会では、2016年9月に策定した「日立環境イノベーション2050」を軸に、社会イノベーション事業に注力する姿勢を明確にしています。またそのなかで、3年毎に具体的な環境活動項目と目標設定を行うことを述べています。
出所:会社公表ESG説明会資料
また資料の中では気候変動問題(低炭素化)にこれまで以上に取り組む姿勢を示しました。一般的には再生可能エネルギーの導入促進等で脱炭素化そのものを図るケースが多いのですが、製品面においても低炭素社会に貢献する事業を推進することで、より多くのCO2削減を実現しようという姿勢が見て取れます。
出所:会社公表ESG説明会資料
また低炭素社会に貢献する事業の推進として、各事業部において脱炭素ビジネスをより一層拡大することを発表しています。めざす姿を実現するための戦略をセクターごとの価値創造ストーリーで説明している点は、各運用機関からも高い評価を受けています。
出所:会社公表ESG説明会資料
TCFDに準拠し事業部毎に機会とリスクを開示
また2018年6月にTCFDに賛同表明し、その開示基準に基づいて、統合報告書内で情報開示を開始しています。多くの企業がGRIスタンダード基準を開示のベースとしTCFDに関しては賛同のみに留まる中で、TCFDの基準自体も盛り込んだ統合報告書になっているのは素晴らしいと思います。
出所:ESG説明会資料
またTCFDにおいても各事業部毎にリスクと機会を開示している点は、投資家からも高評価を受けているようです。
統合報告書における財務・非財務の明確な目標とキャピタルアロケーション戦略
日立は統合報告書において、セクター毎にROIC目標を開示しています。またその目標達成に向け、どのようなキャピタルアロケーションを実行していくか、各セクターごとのM&Aやポートフォリオの再編に紐づくキャッシュイン・アウトを明確に開示しています。
また非財務面においても脱炭素社会及び高度循環社会の実現に向けて、2021年の中計目標と2030年、2050年の長期目標をそれぞれ記載している点も高く評価されています。
出所:統合報告書
外国人取締役の積極採用にみられるグローバル・ダイバーシティ
これまでは環境面を中心に見てきましたが、SocialやGovernanceに関してはどうでしょうか。ESG説明会においては、「社会価値の創出を牽引する人財戦略」として、社会イノベーション事業を推進するにあたって求められる人財・組織体制をしっかり作りあげることを示しました。
特に外国人取締役の積極採用でグローバル・ダイバーシティを徹底している点は、投資家からも高い評価を受けています。
日立は委員回答設置会社(現指名委員会等設置会社)2003年に移行してから積極的に経営の監督と執行の分離を実施し、外国人取締役を含む社外取締役の増員を行うなど、コーポレート・ガバナンス改革も継続的に実施しています。
出所:ESG説明会資料
最後に
日立グループのESGに関する取り組みと、対外的に評価を受けているポイントをまとめましたが、いかがでしたでしょうか。各セクター毎に明確な価値創造ストーリーがあり、全体の完成度が高い点が投資家から特に評価されているように見受けられます。
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次回も上場企業のESG開示やESGの最新トレンドについて、詳しく紹介していきたいと思います。
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