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【第4回】監査計画の本質 ~戦略コンサルが使用する仮説思考を学ぶ~

3月決算のキャスト社は7月にQ1レビューを終え、監査チームはお盆休みに入った。新人の山崎は、入社後、半年がたち、期末監査と四半期レビューを経験し、少し監査の流れにも慣れてきた頃であった。お盆は比較的長く休みが取れるタイミングであり、ゆっくり休養ができた。
お盆明け早々、新人・山崎は、後藤EMに声をかけられた。

仮説思考

後藤EM:山崎さん、今週はキャスト社のアサインが入っているよね?今年の監査計画作成を手伝ってほしいんだけど、監査計画作成はまだ経験ないっけ?

新人・山崎:はい、監査計画作成自体はまだ経験がないです。ですが、入社したタイミングで監査計画は読み込んでおくようにと、インチャージの谷川さんから口酸っぱく言われていたので、資料のイメージはできています。

後藤EM:オッケー。なら、資料の成果物の基本的なことは理解できていそうだね。

新人・山崎:前年の資料をベースに、数値をアップデートしていけばよろしいでしょうか。前期と前々期の資料をみていると、大きくは変わっていなかったので。それに、監査基準も変わっていませんので、監査計画としては、大きな変更はない、という前提で進めればよいのでしょうか?この半年で驚いたのですが、標準化やデジタル化が進んでいるので、結構、監査はルーティン化されているなぁと感じていたので。

後藤EM:そうだね。資料の構成は大きく変える必要はないかな。数値のアップデートも必要な箇所は行ってほしい。ただ、監査がルーティン化、というのは作業ベースとしては、あっている部分もあるけど、監査計画を考えるにあたっては、切り離して考える必要があるよ。監査がルーティン化しているのではなくて、「監査の作業」が標準化されルーティン化されているのであって、監査計画はルーティンや前年踏襲では作成できないからね。監査計画を考えるにあたって、最も大切なことはなんだと思う?

新人・山崎:(やばい、後藤さんの話についていけていない気がする・・・。)年間スケジュールを具体化して、いつなにをやるかを明確化することですか?

後藤EM:それも重要なんだけど、そもそも、その年間スケジュールに何を含めるのか、中身はなんですか、ということを考えることが最も大切なんだ。
つまり、今年の監査において、何が重要か、何がリスクか、を考えること。これがリスクアプローチの本質的な部分になる。旅行のスケジュールを決める前に、何をしたいか、今回の旅行の目玉は何か、を先に考えることと同じだよ。

新人・山崎:たしかにそうですね。ただ、監査って毎年同じことをしているイメージがあったのですが、そうではないってことなんですね。

後藤EM:僕の経験上、監査計画の策定には一番頭を使うべきだし、チームでしっかり議論をすべきだと思う。財務諸表のすべての勘定科目をしっかりと深く監査をするのは、リソースの関係から現実的ではないし、非効率。誤解を恐れずにいうと、上場会社で、ある程度、しっかりとした財務諸表作成に対する内部統制がある場合、すべての勘定科目が誤っているリスクがあるか、というとそうではない。どの勘定科目が、どういう間違いがありそうか、ということを想定したうえで、必要なリソースを割りふることが、リスクアプローチというわけだ。

結構、勘違いされがちだし、現場でやってしまうんだけど、監査計画は前期と同じように立案し、前期と同じ手続きを行う。期中監査を進めている中で、エラーが発見されたら、そこをしっかりと監査する、ということが、よくある進め方。これは、監査計画をたてた監査、とは言えないかな。
1年の期初の段階で、クライアントがおかれている過去と現在の状況を考えながら、このクライアントの今年の監査リスクはどこにあるのか、それを、前期の手続きに振り回されずに、フラットに頭を使って考える、それが監査計画の立案になるんだよ。

話は変わるけど、山崎さんは、たしか、将来は、監査を続けることも考えているけど、アドバイザリー部門にうつるか、独立も考えているって教えてくれたよね。

新人・山崎:はい、そうです。アドバイザリーや独立もかっこいいな、と思っていて。それと監査計画がどう関係するのですか?

後藤EM:であれば、監査計画立案の経験が、アドバイザリーや独立をするうえでも、非常に生きてくるよ。本質的には、同じことをしているといっても過言ではない。

新人・山崎:どういうことですか?(まだ話が見えないなぁ・・・)

後藤EM:「仮説思考」という言葉を知ってる?

新人・山崎:「仮説思考」ですか?初めて聞きました・・・。

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