【監査法人の本質思考-第3回】海外駐在の本質
ニューヨーク赴任の話
新人・山崎:後藤さん、ニューヨークのときのお話を聞いても良いですか?正直、海外駐在ってあまりイメージできていなくて・・・。僕は英語力とかもないですし、後藤さんは英語ペラペラな感じもしますし、すごいですよね。実際、駐在ってどんな感じだったんですか?
後藤EM:ニューヨークの話ですね、あまりまとまって話したことなかったですよね。ちょっと詳しく話しましょうか。僕が赴任した最初のところから語れればと。それに、英語力っていっても、赴任前は海外では通用するレベルではなかったんだよ。
赴任当初の話をすると、臨場感を出すために、ちょっと回想話をするね・・・・・
ここは、世界の中心地ニューヨーク/マンハッタンの繁華街にあるアメリカンのおしゃれなレストラン。海外赴任後、初めて、ニューヨークの監査チームとの顔合わせ兼、ランチ。チーム構成としては、パートナーがイタリア系、その下のマネジングディレクターがロシア系、その下のエンゲージメントマネジャーがインド系、その他のメンバーが、中国系、ジャマイカからの駐在員、アメリカ生まれアメリカ育ちの白人が数名。その中に1人日本人として自分が加わった。
ニューヨーク就任後はリモートワークから始まり、日系企業のお客さんを対象とした日本人が中心としたチームとの仕事が1か月続いたあと、日本人がいないチームに合流することが決まった。そのデビュー戦が、彼らとのランチであった。
自分は、日本で生まれ日本で育ち、海外は海外旅行程度、入社時のTOIECは500点程度であった。それが、日本でそれなりに英語を勉強し、意気揚々と初めて海外生活となり、そして、初めての日本人以外しかいない場での食事。めちゃくちゃ緊張し、そして、ただ挫折を味わいそのランチを終えたのがデビュー戦だった。
約2時間ほどのランチであったが、あぁどうやらパートナーは猫を飼ってるんだな、という情報と、隣に座った中国系のアソシエイトが、どうも進撃の巨人が好きみたいだ、ということだけがはっきりと分かった情報だった。それ以外の会話にはついていけた自信はない。ただニコニコして座っているのがほとんどの時間だった。2時間長かった。トイレだけが心の救い場。それくらい、アメリカの地で、英語圏の人たちの普通の会話、というのはとにかくわからなかった。
後藤EM:こんな感じのスタートだったよ。英語力が足りない、ただそれだけで、それでも日本で勉強してたころにはTOIEC800点を超え、会話の方もNative Campを毎日して日常会話くらいならできるレベルではあったんだ。でも、特にニューヨークの英語は早いといわれていて、ここまで、日本で習ってきた英語と、リアルな場の違いがあるという事実は驚愕だったよ。
実際、そのレストランで、僕から主体的に話しができた内容は特になく、嫁が気を遣って買ってくれていた、日本から持ってきたクッキーのお土産で耐えしのいだよ。
新人・山崎:えっ、そんなスタートなんですね。TOIEC800点超えてるとか十分、すごいと思いますけど、足りないんですね・・・。
後藤EM:いやー、あのレストランでのデビュー戦は大きかったよ。だって、わかったことが、猫を飼っていることと、進撃の巨人好きなことと、って、なんの役にも立たない(笑)
でもね、そんな出だしだったけど、駐在期間の2年を終えた最後には、送別会兼ランチをチームがしてくれて、最後は外国ドラマ張りの抱擁をして、しかも、日本では自分はこのようなことをやっていくという決意表明、今後も連絡をしていこう、と約束をして日本に戻ってきたんだ。それに、外国人という存在への抵抗感がなくなったことも大きい。正直、日本の義務教育を受けて、田舎で育った僕には、外国人という存在そのものが稀有というか、得体のしれない怖さを持っていた。でも、そんな怖さなど一切持たなくなったのは大きいね。
新人・山崎:ちょっとわかります。なんとなく英語が話せない日本人なんで馬鹿にされるのでは、とか思ってしまいますよね・・・。実際はそうではないことはわかっていますが、やっぱりイメージはあります。
後藤EM:英語の話が多かったけど、「海外駐在の本質」についてお話しできれば思う。っで答えからだけど、海外駐在の本質は、ずばり「日本の特殊性を知ること」これに尽きる。その特殊性は、島国であり、いわば鎖国状態が続きていることが本質的な原因ではないだろうか、というのが僕の証明されていない仮説なんだけど、日本の特殊性についていろいろな角度から説明するね。
監査法人の駐在パターン
新人・山崎:とはいえ、監査法人の駐在員って何をするんですか?
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