「いやカスなのは消費税ですよ」という話

  #出版物の総額表示義務化に反対します というハッシュタグがTwitterのトレンドに上がっています。

 むちゃくちゃざっくり言うと、「今まで『本体価格』を表示してるだけで良かったのが『本体+消費税』の金額を表示しないといけなくなる。出版物の値段はカバーに表記されてるので、カバーを掛け替えたりシール貼ったりせなあきませんやん。負担キツイ。そんなことされたら体力のない出版社は潰れてしまいますわ」ということです。

 んで、これに対して「いや猶予期間あったやろ、なんでその間に対応せんかったん?怠慢かましといて出版だけ配慮せぇっておかしくない?」って意見もあり、いつも通りワーワーいうとるわけです。

 私はこの騒動を眺めていて、「いや消費税が全部悪くない?」という気持ちにしかならず、いまこのタイミングで改めて「消費税はカス」という記事を書こうと思ったので、経済に詳しい人からは怒られるくらい雑ですけど書いときます。だってカスやもん。

なんでカスなん?

じゃあ財源どうすんの?

それでいいの?
 の順にいきます。

 まずなんでカスかって言ったらそれは間接税だからです。

 所得税ってありますよね。給料からさっ引かれるやつ。あれは直接引かれてるから直接税です。消費税は、お店がいったん消費税を徴収して、そっから政府に納めるので間接税。給料から”直接”取られる直接税、お店から”間接的”に取られる間接税と覚えてください。感覚的には消費税の方が「”直接”払ってるやん!」という気になると思いますが、買い物した時に私たちが出してるお金は、感覚的に言うと「払ってる」んじゃなくて「お店にいったん徴収されてる」んですね。お店は税の徴収をやらされてるわけです。

 んで、みんな言ってますけど、間接税がカスなのは金持ちからも貧乏人からも一律で取るからです。月100万稼いでる人と月10万しか稼いでない人だったら、10%の消費税の重さ全然違うでしょ?というのが、消費税がカスであることを納得できる一番の理由でしょう。

 さらに、今回の騒動の前、消費税が10%に上がるタイミングで、店舗のPOSシステムの入れ替えをはじめとして、増税に対応するために民間の負担が増えましたよね。こんなんもう明らかに消費税から受けた被害なわけです。総額表示への対応も同じく被害です。「負担とか言うな、国から経済的にボコられとんねん」という話です。

 だから、みなさんがキレないといけないのは「総額表示義務化だァ~???」とかじゃなくて「元を辿ればぜんぶ消費税のせいやんけ!!!」なんですよ。な~んとなく「上がったね~キツ~😂」言うてる場合じゃないんすよ。

 そもそも資本主義の世界で税金って何のために取るかというと、『公共サービス』と『富の再分配』のふたつしかないわけです。公共サービスは分かりますよね、インフラとか社会保障とか言われてる分野です。でも『富の再分配』は、初めて聞いた人は「それってなんなん?」ってなると思います。私もなりました。「もらってませんけど?」ってなりました。大丈夫っす、すげぇ簡単に説明します。

 まず、私たちが暮らしてる資本主義経済って、金持ち超有利なゲームなんですよ。お金がないとあらゆる面で不利になること、普通の人なら骨身に染みてると思うんでいちいち説明しません。で、金持ちが有利なゲームってことは、ゲーム=人生を進めれば進めるほど、金持ちとそれ以外の差が広がっていくんですね。それはもう、上と下では人生1万回やっても逆転できないくらいの差がつきます。これが格差社会です。

 どんくらいの差があるかっていうと、たとえば2016年の時点で62人の金持ちが全世界の富の半分を持ってます。誰でも知ってる人だと、ビル・ゲイツ氏は9兆1000億円持ってて、1億人の貧困層を1年養うことができるらしいです。ここで思うのが、「えっ、その金額、要る?」ってことなんですよね。この記事では本人の意志がどうとかじゃなくて「使い切れん金持ってるの、”世界にとって”無駄やん」という話です。むっちゃ雑に言うと「年寄りのタンス預金、なんやね~ん!」と同じです。そのお金で経済回した方がいいんじゃねぇのみたいな。私も日本っていう先進国に住んでますけど、金持ちに養って欲しいですもん。

 …ていうかみなさん、金持ちが「お金配りま~す!」って言ったら…嬉しいですよね。それを政府が強制するのが富の再分配です。

 稼いでる金持ちからガンガン金を取ってきて、みんなに配るんです。もちろん直接給付じゃなくて、それは巡り巡って公共サービスや私たちの収入に還元されます。その仕組みについてはこの記事で説明するとダルいのでしません。もっと進んだ話になると、ベーシック・インカムっていう、「政府が集めたお金を直接配りま~す」っていう政策になるんですけど、それもいま関係ないんでしません。

 とにかく、富の再分配っていうのは経済ゲームのルールが有利すぎる人たちから不利な人たちにお金を流しましょうということです。むちゃくちゃ真っ当ですよね。少なくとも年収100万以下の人から一律の消費税取るより全然良くないですか?

 だから普通に、消費税やめて法人税と累進課税の上限を上げて、株の配当にかかる税率を引き上げればいいんです。

 「いや法人税はともかく株の配当って?所得税の話だったらいま最高で45%も取ってるんやろ?」じゃないんです。まず、色んな控除があるんで富裕層は45%も払ってません。だいたい30~35%です。これは先進国では普通くらい。んで、これがむちゃくちゃ大事なんですけど、株式の配当と売却益は他の収入と別計算で、一律でトータル20%なんです。これちょっとビビりません?日本以外の国はけっこう累進課税なんすよ。日本はマジで金持ち有利すぎなんです。しかも、2013年までは10%だったんでこれでも上がってるんです。そらみんな株やるわって話。ちなみに株関係の税率5%上げるだけで1兆円の税収増だそうです。やばない?

 こういうことを言うと、「それだとデカい企業や金持ちは海外に行っちゃうじゃん」とか「優秀な人材が海外に流出して、世界を席巻するようなイノベーションが起きなくなる」とか「才能のある頑張っている人が経済的に評価されないのはおかしい」とか「夢が見れなくなる」みたいなこと言う人いますけど、ちょっと考えて欲しいんです。

 それ言ってる人、み~んな金持ちじゃないですか?😄

 普通に暮らしてる人たち、それに納得したところでひとっつもいいことないですよね。「物事は”何を言ったか”じゃなくて”誰が言ったか”」って、このインターネット&SNS社会でみなさん身につまされてると思うんですけど、これはマイナス面でも同じです。みなさんに不利なお金のニュース記事を見たとき、誰が書いてるかを気にしてググッてみてください。そいつ年300万で生活しとる?

 これはマジで覚えておいて欲しいんですけど、意識・無意識に関わらず、SNSだろうが個人のブログだろうがニュースサイトだろうがみ~んな自分が有利になることしか言ってないし言えないです(逆に、自分が不利になることでもきちんと言うような人の言説は、探してでも読む価値があります)。これはしょうがないです。人間はそこまで公正には出来てないんだもん。

 話を戻して、とりあえず上の4つ全部に反論しますね。断っておきますが、これは”再分配”に絞った考え方です。

 まず再分配したくないから海外に行っちゃう企業やお金持ち、「じゃあ日本に要ら~ん」って言っていいと思うんですよ。世界には必要かも知れんけど、日本っていうチームに要らん。海外で活躍したいとか、海外じゃないと出来ない仕事がしたいとか、そういうのは全然いいんすよ。応援します。でもそもそも再分配する気のない金持ち、チーム日本にいても恩恵なくないですか?普通の人にとっては「いてもいなくてもいい人」ですよね。じゃあ海外に行ってもらって全然OKじゃん。

 次に「世界を席巻するようなイノベーションが起きなくなる」ですが、いままで起きてないし今後も起きないから心配しなくていいです。イノベーション、みんなITっていうかインターネットの分野でイメージしてると思うんですけど、GAFAとかBATHに対抗できるわけないです。これは能力の問題じゃなくて、日本語とかいう超ローカル言語の国がインターネットで世界を席巻することは絶対にありません。なので、流出するに任せておけばいいんです。流出する才能は、海外でしかできないことをしに行くので、日本関係ないです。

 3つめ、「才能ある頑張ってる人を正当に経済的に評価する」、そんなん才能の有無に関わらずみんなめちゃめちゃ頑張っとる!!!で終わりです。めちゃめちゃ頑張ってる大多数がもっと裕福になる方が圧倒的に社会的な意味があります。

 4つめ、「夢が見れなくなる」。改めて、富の再分配の面だけ見て言います。まず、夢はエゴ中のエゴなので必ずしも最大多数の最大幸福になり得ません。なので「勝手に頑張ってください」としか言えません。次に、あなたが見たい夢を見ることができるのは、日本がまだ裕福な先進国だからです。このままだと夢を見るためのコストそのものがハチャメチャに上がって、もっと夢が見れなくなります。最貧国に生まれた状態から見れる夢の選択肢と、日本で見られる夢の選択肢を考えてみてください。国の平均値が豊かになればなるほど、見れる夢の選択肢は広がります。「国は関係ねぇ!俺は最貧国でもやれる!」という人は、まず最貧国の人はそれを証明するために国外に出ることすらできないという現実を知ってください。

 これは金を持っているほどゲームが有利になることを考えれば当然のことです。だって、みんなが年収100万円ずつ金持ちになれば、その分、みんなが経済的に取れる選択肢も増えますよね。これが経済が円滑に回ってる社会ってことです。「全員が金バシバシ使え」じゃなくて、使いたい人がバシバシ使える社会のことです。”慎ましく生きる”ことも”消費しまくって生きる”ことも自由に選べる社会のことです。

 金持ち有利、貧乏人不利の消費税を上げれば上げるほど格差が広がる、ただの当たり前体操なんですよね。そもそも人生で頼めるメニューに差が有りすぎるんですよ。

 ここでいったん冒頭の、「消費税のせいで巡り巡って出版社が潰れる話」に戻して、めっちゃ単純かつ極端に考えてみましょう。これは”例えば”の話だと思ってください。

 さて、総額表示のために負担できる金額に出版社によって差がある場合、体力がある=金持ってる出版社だけは生き残ります。これは分かりますよね。そうするとどうなるかっていうと、生き残った金持ち出版社の本だけ書店に並ぶわけです。「はい勝ち~。他の出版社がクソデカマイナスを被ってる陰で大幅なプラス~」というわけです。金持ち総取りです。実はこれは、上で説明した資本主義のルールの実例そのものです。これは金持ち出版社のせいではありません。経済ゲームのルール的にどうしてもそうなるんです。

(紙の出版自体が斜陽とかいうのは分かりきってることなので述べません)

 というか、カバーの掛け替えなどの諸費用は本の在庫=資産に一律で課税されるようなものですから、間接税による弊害そのものなんです。

 そうなるとどうなるか?

 まず、金持ち出版社の寡占が進んで消費者が取れる選択肢が減ります。選択肢が減るということは、生き残った少数の出版社の権限が強くなります。権限の強くなった少数の出版社に、行政が圧力を掛けたらどうなるでしょうか。想像力のある人は、これによって言論の自由も緩やかになくなっていくところまで分かると思います。どんどん私たちの手からルールが遠くなっていくわけですね。いいことひとつも無くないですか?これは今回はたまたま出版社を例に出してますけど、潜在的には全部の業種が同じことなんですよ。人間の個性については多様性多様性と言いながら、同じ口で「中小企業をまとめて淘汰して強い大企業作ろうぜ!」とか言ってる人は相当やばいアホです。

 だって、人間のことだったら「貧しい人にだって人権あるやろ~!」「色んな人がおってええやろ~!」と言う人が、会社に関しては「淘汰…っすね」とか言ってたらアホでしょ。優秀な人間だけ生き残れる社会には「NO」って言うのに、優秀な会社だけ生き残ればいいっていうのはハードル高くしすぎです。みんなほどほどに豊かな1億総中流の社会の方が強かったように、普通の人が企業経営してても大丈夫な社会の方が強いに決まってるんです。2020年にもなって「選択と集中」とか言っていいのは各種専門家と受験生だけです。

 「いやさっき法人税率上げろって言ったやん」って言われるかも知れないですけど、法人税って赤字だと払わなくていいんすよ。儲かったときだけです。てことは、上げられた分を税金として払いたくなければ従業員の給料(人件費)を上げればいいんですよ。どっちにしてもみなさんに還元されるお金になるだけです(とはいえ、このへん株主とかの話が絡んでくるとクソ面倒くさくなるんでめっちゃ単純に言ってます。ごめんなさい)。

 さて、私はフリーランスの専業漫画原作者なので、実力レースに敗けてド貧乏になったとしても、分かった上でそういう生き方を選んでいるので全然文句はありません。いまは考えてませんが、めぐり合わせによっては「も~無理!死んじゃう!」っつって途中でレースから降りる選択肢もあるわけです。逆にドカンと当たった場合は累進課税バリバリだと不利になります。

 でも、企業に就職して普通に働いている人が、消費税にブチギレたり、「法人税と累進課税をもっと取れや!!」っていう圧力をもっと本気で掛けない意味がマジで分かんないんですよね。「消費税は社会保障に回しま~す」っていうのが嘘なのも知ってるじゃないですか?だって社会保障って税金じゃなくて保険料で賄われてんすよ。健康保険も年金も保険料っすよね?税金関係ねー!!!って話なんです。そもそも保険料だってずっと上がってるんすよ。しかも消費増税分って減らした法人税と相殺されて消えて無くなってるし。もうそれ意味分かりませんやん。んで、金持ちは果てしなく金持ってて、間接税がいくら上がっても痛くも痒くもなくて、金持ちは金持つほど私たちからもっと搾取するってことも知ってるじゃないですか?え、なんでこれにブチギレないの???いや、これマジで分かんないんすよ。ど~考えても金持ちの金減らして、普通の人たちにはプラスだけ来た方がいいじゃないですか?なんでわざわざマイナスだけ享受してるんですか?

 私はフリーランスで一発当てたとしても累進課税バリバリにしていいと本気で思っています(もちろん「チクショー税金高っけ~な~!」くらいは言うと思うし節税もすると思います。文句言えるくらい稼げるといいね)。なんでかって言うと、このまま格差が広がり続けると、マジで治安が悪くなるし自由は減り続けるし、そう遠くない未来に血と暴力の革命が起こると思っているからです。

 「いや、話めっちゃ飛ぶやん笑」って思いました?私も前は「日本で革命て笑」って思ってたんですけど、いまはこのペースで格差広がっていったら普っ通~~~~~に起きると思います。だっていまのルール、真面目に働くのバカみたいじゃないですか?若い世代の一定数が「やってられん」と思ったら普通に革命起きますよ。んで、「おっ、日本で革命起こりそうやん!武器流して革命リーダー軸にした傀儡政権作ったろ」って思った国から武器が流入してきます(候補の国はいくつかあるんで特定のひとつの国とは限りません)。「んなわけないや~ん笑 フィクションばっかり考えてるから~笑」じゃなくて、これ東南アジアや中東でさんざんやられてきたんすよ。逆に「日本だけ大丈夫なわけないや~ん笑」ですよ。そうならないための安心料なら全然払っていいんじゃないっすかね。

 私は一生日本に住んでたいから、治安良くあって欲しいし最大限自由でありたいし血も暴力も見たくないし他の国の支配下にもなりたくないんで、格差社会はマジでダメだと思ってます。消費税はその原因の最たるもので、はっきり言ってめちゃめちゃ分かりやすいガンです。

 経済はクソ難しいし、専門家じゃないんでよく知りませんし正確には分かりません。でも消費税に関してはこんな分かりやすくて、こんだけシンプルに無くした方がいい制度、他にないと思ってます。てかぶっちゃけ、消費税みたいなクソ制度のせいで出版社に対する言説でモメてんの、普通にムカつくんですよ。キレるなら消費税にキレません?

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