es/江藤俊司(鳩)

漫画原作者です。よろしくお願いします。

es/江藤俊司(鳩)

漫画原作者です。よろしくお願いします。

最近の記事

「いやカスなのは消費税ですよ」という話

 #出版物の総額表示義務化に反対しますというハッシュタグがTwitterのトレンドに上がっています。  むちゃくちゃざっくり言うと、「今まで『本体価格』を表示してるだけで良かったのが『本体+消費税』の金額を表示しないといけなくなる。出版物の値段はカバーに表記されてるので、カバーを掛け替えたりシール貼ったりせなあきませんやん。負担キツイ。そんなことされたら体力のない出版社は潰れてしまいますわ」ということです。  んで、これに対して「いや猶予期間あったやろ、なんでその間に対応

    • 映画『来る』の柴田理恵さんから学ぶ”好感度コントロール”について

      (この記事では2018年の映画『来る』についての話をしています。ネタバレがありますので未視聴の方はご注意ください)  澤村伊智原作、中島哲也監督による2018年のホラー映画『来る』がAmazon Primeで2020年8月5日から公開されています。  『来る』は興行成績的には必ずしも成功とは言えない映画のはずですが、なぜか私のTwitterタイムラインで異常なほどの人気を博していました。理由をまとめると以下の3点になります。 ①ホラー映画だと思って観ていると、後半で超豪

      • アシスタント背景美塾さんのYou Tubeチャンネルが歴史に残るレベルで凄すぎるので紹介する

         表題通り、主に漫画の背景の描き方を教える”塾”、『アシスタント背景美塾』さん(以下『背景美塾』)が開設しているYou Tubeチャンネルが余りにも素晴らしいので、居ても立ってもいられずこの記事を書いている。  漫画を描こうと思った人が必ずぶつかる「めんどくせぇ!!!」の壁、それが背景である。しかし、漫画は”物語る”媒体であるため、必然的に背景作画=舞台設営を避けて通ることはできない。  しかしとにかく背景は面白くないのだ。なぜなら私たちが描きたいのは基本的には”キャラク

        • 本当に必要最低限の”物語制作”スターターキット

           今回の記事では、「アイデアとイメージだけはあるけどテクニックが何ひとつ分からない」という物語制作の初心者に対して「これだけ理解していれば絶対に大丈夫」と考えられる要素についてとその使い方、「なぜこれだけ理解していればいいのか」「では他の技術はいったい何のためにあるのか」について説明します。  これまで私のnoteでは基本的に、ネット上で見つけることが比較的難しい中級者以上に向けた物語制作Tipsや、横文字でよく分からない概念的なキーワード(”テーマ”や”コンセプト”等)を

          ”漫画”とは何か、その本質について考える

           ”漫画”とはなんでしょうか。  これは漫画を広く読まれたいと思って描いている人ならば、必ず一度は深く考える問題だと思います。「趣味」と答える人もいれば、「仕事」と答える人もいます。また、初心者と中級者、(プロを含んだ)上級者では、この質問の受け取り方も答え方も変わってきます。思い悩むことを放棄なさったり、または自分の生き様でそれを証明しようと決意なさった結果、「答えはない」とされる方もいるでしょう。  なぜならこの問いは、子供から「時間ってなあに?」「宇宙ってなあに?」

          ”漫画”とは何か、その本質について考える

          言葉の意味から考える”正義”と”悪”

           まずはじめに、私は言葉の”厳密な運用”にあまり興味がありません(学術論文やマスメディアによるニュース、政府発表のように正確さが求められる場合を除く)。  言葉はコミュニケーションツールなので、より楽に、より多くの人に伝わればそれでいいと思っています。始まりが誤用であっても、定着した言葉は生き残っていき、正しくても使われない言葉は”死語”になります。  たとえば最近見かけるようになった”永遠と”という言葉は”延々と”の誤用が発祥と思われますが、なんだか生き残りそうな雰囲気

          言葉の意味から考える”正義”と”悪”

          【掌編小説】ゆるトピア

           俺がきのうエベレスト単独登頂を成し遂げた話を熱く語っているのに、仲間の反応はすごく鈍かった。 「タイチ、おまえ話聞いてる?」 「全然聞いてない。その話、つまんないよ」  タイチは目の前のポップアップディスプレイから、まったく目を離さずに答えた。他のふたり、カスガとミチルはハンバーガーを頬張るのに忙しいし、寝坊して自宅から参加のハルトシは画面の中でギターの練習を始めてしまった。 「単独登頂ってどうせVRじゃん。ここにいる全員、子供の頃やったし」 「だからそれを21になっ

          【掌編小説】ゆるトピア

          ”面白い”企画は”ブレない”説

           noteを10日ほどやってみて、だいたい私が短時間で無理なく書ける記事のジャンルがどういうものか分かってきました。それはおおまかに”ひとつの事象を仮説によって捉えてみる”ということのようです。  というわけで、今回は”面白い企画”とは”ブレない企画”ではないか?という仮説に基づいて、”なぜブレない企画は面白いのか”を説明してみたいと思います。  企画を考える人向け、また、企画を受け取る人向けの記事でもあります。モデルケースとして物語制作を例に進めますが、意外と他ジャンル

          ”面白い”企画は”ブレない”説

          SNSの”怒り疲れ”と”超天才”の定義について考える

           SNSを見ていると、毎日誰かが何かに怒っています。  それが個人的なことだったらいいのですが、一見すると「それ、本当にあなたに深く関係してる?」と思うような内容もあります。  政治だったり差別だったりお金だったりスキャンダルだったりと様々ですが、とにかく何かに怒っている。それを”義憤”と呼べば呼べるのかも知れませんが、なんというか、最近は「…この人たちは怒るために怒っていて、怒るためにトピック探してるんじゃないだろうか」と思うようになりました(蛇足ですが、自分が「面白い

          SNSの”怒り疲れ”と”超天才”の定義について考える

          SNS時代の私たちが政治家のみなさんに望むこと

           まずはじめに、私は特定の政党を熱烈には支持していません。また、この記事では現政権の評価については扱いません。  この記事に書かれているのは、以下の素朴な疑問の、私なりの回答についてです。  なぜ、現政権はずっと続いていて、(最近さすがに陰りが見えてきたとはいえ)若年層の支持率が高いのでしょうか。  そして、なぜ野党の政治家のみなさんは若年層の支持を得られないのでしょうか。  Twitterでよく見かける意見としては、「他に政権を任せたいと思う政治家(政党)がいないか

          SNS時代の私たちが政治家のみなさんに望むこと

          ”ハリウッド3幕構成”完全攻略ガイド4(了)

          3幕構成 第3幕の解説 3幕構成を完全にマスターするための解説記事、第4回です。前回の記事はこちらからどうぞ。 これまでの3回の記事で、3幕構成(ビートシート)を形作る15のビートを6つのブロックに分けて順番に解説してきました。  さぁ、いよいよ最終幕、物語の終わりです。同時にこの解説記事もこれが最終回となります。  前回の終わりで、主人公は古い価値観と正反対の価値観を融合させ、新たな価値観を手に入れました。ここからラストまでは一気呵成に物語が進みます。それでは、第6

          ”ハリウッド3幕構成”完全攻略ガイド4(了)

          ”ハリウッド3幕構成”完全攻略ガイド3

          3幕構成 第2幕の解説  3幕構成を完全にマスターするための解説記事、第3回です。前回の記事はこちらからどうぞ。  やることが多すぎた地獄の”第1幕”を越え、物語は”正反対の価値観”の世界”=”第2幕”に突入します。  ”第2幕”の解説に入る前に、おさらいついでに”第1幕”の性質を以下のようにまとめてみました。 ・物語の”前提(世界観・登場人物・ジャンル・スケール)”を受け持つ ・”古い価値観”の世界=時間軸的には”過去”(昨日まで)を担当する ・”前置き”や”自己紹介

          ”ハリウッド3幕構成”完全攻略ガイド3

          ”ハリウッド3幕構成”完全攻略ガイド2

          3幕構成 第1幕の解説 3幕構成を完全にマスターするための解説記事、第2回です。前回の記事はこちらからどうぞ。  前回の記事では、3幕構成の”幕”とは物語世界の”価値観”のことであり、”幕”が切り替わるとは”価値観”が切り替わることだと説明しました。  今回の記事では、予告通り第1幕を構成する6つのビートを、ふたつのブロックとして解説させていただきます。 第1ブロック ”オープニング”(ビート1~3) 物語の冒頭、オープニングにあたる部分です。  上記模式図のように、

          ”ハリウッド3幕構成”完全攻略ガイド2

          ”ハリウッド3幕構成”完全攻略ガイド1

          この記事について この記事は、ハリウッド型3幕構成――つまり「ハリウッドでヒットしている映画の脚本はほとんどこの方式を使っているよ~!」というシナリオ制作術を可能な限り分かりやすく解説するシリーズです。  また、このシナリオ術には脚本の1ページ=映画の1分として扱うという超明快な基準がありますので、算数の割り算と掛け算さえできれば他の媒体のシナリオ制作にも応用可能です。その実例としてもご覧いただければと思っています。  この記事では一例として、私の仕事である32ページ漫画

          ”ハリウッド3幕構成”完全攻略ガイド1

          最悪な偉人の遺言

          先日、Twitterに以下のようにつぶやいてみたところややウケしました。 上記の偉人ファンの方はごめんなさい(特に芥川龍之介ファンの方には本当に申し訳ない)。単純に「いいこと言ってる~!」という遺言を探すより「こいつ最悪~~~!!!」と思う遺言を探す方が面白かったんです…。 さて、この記事では上記ツイートで触れた3人について軽く(ふざけながら)ご紹介します。ファンの方から余計に怒られそうですが、歴史や偉人に興味を持つきっかけになっていただければ幸いです。 では早速いきま

          最悪な偉人の遺言

          SNSにおける”人気商売”について考える

          はじめまして。漫画原作者をやっている江藤と申します。 これは表題通り、”SNSにおける、すべての”人気商売”と呼ばれる人たちの本質”についてひとつの仮説を述べている記事です。ここではひとまずテレビや雑誌メディア等での活動は取り上げず、ほぼSNSに絞って考えてみています。 また承前として、これを考えるきっかけとなった、きくちゆうき氏の『100日後に死ぬワニ』のマネタイズ施策発表、その賛否両論について、ある程度知っている方向けの記事となります。ご了承ください。 いちおう簡単

          SNSにおける”人気商売”について考える