縁起性とは何か知っているだろうか?
縁起性とは、この世には独立した存在などなく、あらゆるものが因果関係のネットワークによって成り立つという世界観を意味する。
一例として、今来ているTシャツは、この世に突然現れたものではない。
遡ってみると、流通業者が服屋にTシャツを卸し、その前は中国の紡績工場で生産された商品。
その原料である綿の出どころをたどれば、今度はアメリカのテキサスの綿畑に行き着き、その綿花を育てるためには種や肥料が必要となり、その種が育つには良質な土壌、水、日光が欠かせず・・・といったように、Tシャツ一枚をとっても、そこには数えきれない因果のネットワークが絡み合っている。
これが縁起性である。
自己の問題においても事情は変わらず、そもそも私という存在は、他人との関係がなければ成立しない。
家では子供に厳格な親として振る舞うが、会社では陽気な上司として慕われる私。
学校では何の発言もせず周囲から目立たないが、一部の友人の前でだけリーダー役を務める私。
誰もが様々な人との関係や記憶の中で自己を定義し、今の私を形作っている。
このような縁起性の考え方をベースにしないと、観察は副作用を起こしやすくなる。
私は周囲から独立した存在であるといった思考や感情に意識が向かうせいで自己の輪郭が際立ち、逆に自意識が膨れ上がってしまうからである。