近視眼的になっている企業は、大局を見てほしい
パナソニックの早期退職やサントリーの新浪社長の45歳定年が話題になっています。
この問題点は、企業側から見ると年功序列による「働かないオジサン」の問題があると考えています。
つまり、年齢によって昇級するため、給与と労働生産力が見合っていない現状です。
価値や成果を出しているから給与が上がる、であれば、このような問題は起こりません。(解雇がしやすいこともありますが)アメリカで40代以上のリストラが話題にならないのは、成果主義が一因です。
じゃあ、成果主義が最高かと言われると問題もあるわけですが。
今、ジョブ型採用に注目が集まっているのも、この問題につながります。ジョブ型にすることで、能力に応じて評価することで、給与も抑えようという魂胆です。
法律で規制されているため、企業の動きは限られる
ここまで聞くと、「能力ない人を解雇するなり、降給させればいいのでは?」と思われる人もいるでしょう。しかし、日本の法律では能力が低いという理由では解雇できません。また、降給も常識の範囲内で行われます。年収800万円から400万円に下げることは不可能ではないものの、裁判で争われた場合、勝訴することは難しいでしょう。
企業側の論理だけで見ると、「働かないオジサン」をどうやって合法的に解雇するか。その解決方法が最初に上げたような方法です。
なぜ、働かないオジサンは生まれるのか
ではなぜ、「働かないオジサン」が生まれるのか。いくつか理由がありますが、大きくは下記の3つでしょう。
(1)終身雇用制は20代・30代のフィーを、40代・50代で回収するモデル
(2)大企業や官公庁は大量採用し、少数のエリートのみ残すモデル
(3)40代・50代のスキルセットが古いまま
(1)の終身雇用の賃金モデルは、20代・30代で滅私奉公させ、40代・50代で報われる体系です。そのため、生涯賃金では割合が取れているものの、ある期間だけをみると、労働と対価が見合いません。
ご存知の通り、経団連や大企業が「終身雇用ムリ」と発言しており、終身雇用は破綻しています。企業は新しい賃金モデルに移行したいため、必死になって40代以上の早期退職を促しているわけです。
(2)の昇進モデルは官公庁に顕著で、1人の事務次官(国家公務員のトップ)を生み出すために、候補者を大量採用し、途中で選別していくモデルです。脱落した人たちは、天下りとして関連団体へ出向する救済策をとっています。
そうすると、昇進から脱落した人たちは働きません。もう昇進できず、今の役職(よくて、その上)にとどまるからです。昇進できないのに頑張る人はいないでしょう。
(3)のスキルセットは、これも終身雇用制に紐づく可能性が高いのですが、20代・30代で覚えたスキルで、40代・50代もやりくりしようとしているために、現実に求められるスキル(あるいは、そのレベル)に乖離が生まれるからです。
特に2000年以降は、ITによって技術革新やビジネスモデルの変化が激しく、今の40代・50代が新卒時に身につけたスキルでは太刀打ちができません。
こうした結果、「働かないオジサン(あるいは、働けないオジサン)」が誕生したのです。
企業を救うのは、「学び直し」
本当は今の時代に合わせるのであれば、早期退職や45歳定年制を提唱するのではなく、「リカレント教育」や「リスキリング」といった学び直しに力を入れるべきです。
なぜなら、40代・50代の「働かないオジサン」を解雇したところで、日本の労働人口は減少し続けており、企業はどこかの段階で「働かないオジサン」を受け入れざるを得ないからです。
であれば、企業の体力があるうちに学び直しをさせ、再戦力化したほうが中長期的に見たときに、企業のため、ひいては日本の経済のためになります。
訳知り顔で「45歳定年制」をドヤるより、よっぽど健全ではないでしょうか。
これは労働者自身のためにもなります。先述の通り、新卒で身につけたスキルは10年20年で賞味期限になります。今後、その期間はもっと短くなるはずです。学び直しをし、新たなスキルを手に入れることは、60代70代と働き続けざるを得ない日本で生き残れる助けとなります。
日本の経済を支えていると自負している大企業こそ、率先して「リカレント教育」「リスキリング」をやっていただきたい。そのような仕組みがない企業は今後、生き残れませんし、求職者からも見捨てられます。
優秀な人材ほど、自分のスキルの賞味期限に敏感です。常にアップデートを欠かさないので、それを支援する企業に魅力を感じることでしょう。