SIerとインターネット企業は、まったく別物
よくシステムインテグレータ(SIer)、システムエンジニアリングサービス(SES)と、インターネット企業やWebサービス企業を一括して「IT業界」と呼称されます。
しかし、SIer・SESとインターネット企業・Webサービス企業はまったくの別物である、というのは私の意見です。
人によってはSIerもインターネット企業は同じようなエンジニアが、同じような開発環境じゃないか、と言われるかもしれません。ですが、ビジネスモデルも、業務内容も、文化も異なります。
もはや、IT業界という言葉は死語にすべき、とさえ感じています。
■SIerとは
基本的にSIerには自社製品やサービスというものはありません。お客様のシステムを開発することがビジネスモデルです。お客様は事業会社がほとんどで、システムも業務システムが多く、システム開発から運用までを請け負います。
お客様の業界は金融業界が多く、銀行や証券、保険会社がイメンクライアントであることが多いです。開発するシステムも基幹業務システムと呼ばれるシステムがほとんど。
求められるのはITシステムによる業務の効率化なので、業務理解が重要な要素になります。最先端の技術を導入するよりも、枯れた技術(古い技術)で安定稼働するシステムが求められます。
■SESとは
SIerと似ていて、自社製品はサービスと呼ばれるものはありません。技術者自身が商品と言えます。というのも、SIerやインターネット企業に、技術力という名のエンジニアを派遣しているビジネスモデルだからです。
業界をよく知っている方は技術派遣(アウトソーサー/OS)と何が違うのか、と思われるでしょう。
技術派遣会社は業界の分類で言えば派遣業です。派遣法に基づき、事業者免許を持って事業運営しています。一方のSESは、(言い方が悪いですが)派遣法の隙間を縫って、技術者派遣でありなら派遣業ではないビジネスモデルです。
開発するシステムはお客様によって千差万別です。
■インターネット企業・Webサービス企業とは
SIerとは異なり、自分たちの商品やサービスを持つ企業のこと。特に、インターネット上のサービス(例えば、ECサイトやスマホアプリとか)を指します。
これらの企業に重要なことは、サービスのアイデアと、それを実現する技術力です。そのため、最先端の技術を次々と導入しつつ、ユーザーが使いやすいUI/UXに苦心しています。
自社サービスが市場に受け入れられるかが、企業の生死を分けるので、サービスの向上をし続けます。そのスピードが重要になるので、エンジニアにも技術力を求めるのです。
■同じエンジニアだけれど、まったく違う人種
SIerもSESもインターネット企業も同じエンジニアではあるものの、まったく違う人種です。
(1)開発に対するスタンスが違う
(2)開発環境が違う
(3)企業文化が違う
(1)開発に対するスタンスが違う
SIerはお客様(=企業)が使うシステムを開発するので、あくまで「お客様の業務ありき」です。とはいえ、お客様の業務は大同小異。大枠は業界で同じで、お客様に合わせてカスタマイズする程度です(フルスクラッチで作っている企業もありますが)。
そのため、ITスキルの高さは求められません。業務を理解し、それを要件定義・設計に落とし込めるスキルが重宝されます。
一方でインターネット企業はサービスこそがすべて。サービスのアイデアを実現するために、最先端の技術を投入し、アイデアを具現化します。また、使い勝手が良くなければサービスは使われないので、UI/UXといったユーザビリティにも注力します。
(2)開発環境が違う
上記のとおりなので、SIerが開発するシステムはなにかトラブルがあったら困るのと、それまでのシステムの延長線上にあるので、枯れた技術(古い技術)で開発することが多くなります。
インターネット企業はサービスをいかに早く実現し、より多くのユーザーに使ってもらうかが重要です。機能追加のスピードも早いです。そのため、多少のバグがあってもリリースし、リリースしたあとにバグを修正します。
スマホアプリが頻繁なバージョンアップをしたり、ソシャゲが頻繁なサーバメンテナンスをするのは上記の理由です。
(3)企業文化が違う
以上のことから、SIerは保守的な企業文化が多く、お客様商売なので、エンジニアでもスーツ勤務が求められます。
一方でインターネット企業はエンジニアがサービスを作るので、企業ヒエラルキーの頂点にいます。エンジニアが働きやすい環境が整えられ、Tシャツ・ジーパンでも勤務可能なのです。
SESは取引企業の環境や文化に引きづられます。SIerと取引が多ければSIerっぽく、インターネット企業と取引が多ければインターネット企業っぽくなります。
以上から、見た目は同じようで、SIerとインターネット企業はまったく違うことがおわかりでしょう。
転職する際も、同じようなものだと考えて転職すると、痛い目にあってしまいます。
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