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第1回「商品・サービス開発プロジェクト」レポート/前編

「これからの地域を支えるデザイン経営」を本気で学ぶ場所として、2023年にスタートした越前鯖江デザイン経営スクール。今回は、2023年9月23日(土)、24日(日)に開催された第1回目の「商品・サービス開発プロジェクト」の様子をレポートします。


商品・サービス開発プロジェクトとは

越前鯖江の企業と参加者(クリエイターや右腕人材の卵)を結びつけ、これからの時代にあった商品やサービスを開発する実践型のデザインスクールです。約半年間を通し、広義のデザイン視点を携えた協働の姿勢を育みます。毎月2日間の現地プログラムに加え、オンラインでのコミュニケーションも行います。

本プロジェクトでは、越前鯖江地域内の事業者と、福井県内外のものづくりやデザインに携わる方を公募。4事業者と全国から16名の参加者が集まりました。

参加事業者紹介

越前漆器、眼鏡、越前箪笥、越前瓦と、それぞれの産地から個性あふれる4事業者が参加します。

01 / 曽明漆器店(漆器久太郎|鯖江市

創業100年の越前漆器問屋。商品企画から、卸、販売(実店舗・オンライン)まで幅広く行っています。自社ブランド「Kyutarou BLUE」は、木製の木地のあたたかみと、鮮やかな青色が特徴です。

02 / 沢正眼鏡|鯖江市

鯖江市河和田地区でプラスチックフレームを中心とした眼鏡フレームを製造する企業。創業から約70年にわたり、高品質にこだわった製造を続けています。

03 / 小柳箪笥店|越前市

創業100年を超える越前箪笥の老舗。越前箪笥やオーダー家具、自社ブランド商品の製造・販売を行っています。本プロジェクトには、伝統工芸士の小柳範和さんと息子の勇貴さんの2名が参加。

04 / 越前セラミカ|越前市

福井の街並みを彩る「越前瓦」メーカー。1952年の創業から約70年にわたって越前瓦、越前赤瓦を製造しています。また、越前瓦の製造技術を活かした陶建材の製造や、瓦の施工・修理メンテナンスも行っています。

プロジェクト講師紹介

講師は以下の4名です。

新山 直広合同会社TSUGI 代表 / 一般社団法人SOE 副理事
1985年大阪生まれ。2015年TSUGIを設立し、地域に特化したクリ エイティブカンパニーとして「RENEW」の総合プロデュースや福井の スーベニアショップ「SAVA!STORE」などデザイン・ものづくり・地域という領域を横断しながら創造的な地域づくりに取り組む。2022年産業観光を軸としたDMC「一般社団法人SOE」を設立し副理事に就任。

内田 裕規株式會社ヒュージ 代表
越前市出身。2003年からクリエィティブな視点でデザイン、ブランディングを手がけ、主にリノベーションをテーマに文化創造拠点FLAT、CRAFT BRIDGEの拠点づくりを行う。また、伝統工芸の文化を次世代に繋げる「千年未来工藝祭」のプロデュースも行っている。

森 一貴|シェアハウス家主
アールト大学デザイン修士。東京大学教養学部卒。わからなくなってゆくデザインを探索する。コンサルティング会社を経て福井県鯖江市へ移住し、RENEWやゆるい移住など、持続可能な地域を目指すプロジェクトを企画・実施。また、政策・公共領域におけるサービスデザイン・参加型デザインにも取り組む。

時岡 壮太株式会社デキタ 代表
福井県おおい町出身。2009年早稲田大学大学院修了、2011年に株式会社デキタ設立。築地場外市場や気仙沼市等での施設開発に携わったのち、2018年に伝建地区である熊川宿に会社を移転。現在、熊川宿においてシェアオフィスや宿泊施設、加工所等の古民家活用を進めるとともに若狭地方の公民連携まちづくりに携わる。

商品・サービス開発プロジェクト、始動!

9月23日。会場である鯖江市役所に続々と参加者がやってきました。少し緊張した面持ちですが、参加者同士で自己紹介をする様子も見られました。半年間にわたるプロジェクトがついに始まります!

まずは実行委員会による挨拶。鯖江市役所の乙坂さん、越前市役所の野村さんにご挨拶いただきました。

新山直広さん

続いて、講師の新山直広さんによるプロジェクトの概要説明。
「ものづくりのまちで、市をまたいで共同開催するプロジェクトは初めて。行政職員もまちのプレイヤーだと思っているので、ぜひまちの右腕人材になってほしい」と新山さん。本プロジェクトが目指すゴールは、越前鯖江の地域事業者の底上げと、クリエイター人材の集結。半年後、越前鯖江という地域がどのように変わっているのか楽しみです。

参加者の自己紹介

そして、参加者の自己紹介が行われました。本プロジェクトには各チーム4名、合計16名の方が参加しています。参加メンバーのキャリアはデザイナー、ライター、建築士、学生、営業職など様々。福井県を中心に、神奈川県や愛知県、福岡県など全国から集まった個性豊かなメンバーです。

中川晴香さん

福岡県から参加している中川晴香さんは、ふだんは営業職の会社員。「これまで私はものを使う側だったので、商品企画やものづくりなど、つくる側に携わってみたい」と話します。

山形奈都子さん

福井県内から参加している山形奈都子さんは、SNSで起業し個人事業主として活動しています。旦那さんが越前市出身で、2年半前に大阪からIターン。「自宅でオンラインで仕事をすることが多く、福井の人や地域に関わるきっかけになればと思い参加しました」と話します。

福井にゆかりのある人もない人も一堂に会し、半年間のプロジェクトに取り組みます。

講師によるレクチャー

お昼休憩を挟み、午後は新山さんによるレクチャーからスタート。越前鯖江エリアの概要や産地の現状、商品開発の手順について説明いただきました。

「越前鯖江エリアでは、漆器・和紙・打刃物・箪笥・焼物・眼鏡・繊維の7つのものづくりが盛んです。それらは、どれも産業工芸であるということが特徴で、職人たちは時代の変化に合ったものづくりを続けてきました」と新山さん。
リーマンショック以降、自社ブランド立ち上げの機運が高まったことや、産業観光イベント「RENEW」や「千年未来工藝祭」にも後押しされ、工房併設のショップや移住者が急増しているという産地の現状についても説明がありました。

真剣にメモをとる様子も。

今回の活動フィールドとなる越前鯖江エリアのことを知りたいと、皆さん真剣にレクチャーを聞いている様子でした。産地の概要を学んだところで、参加事業者への訪問に移ります。

参加事業者を訪問!

1日目午後から2日目午前にかけて、参加事業者のうち3社を訪問しました。数名ずつのグループに分かれ、いざ出発!

沢正眼鏡

右から2人目が澤田専務

鯖江市河和田地区にある沢正眼鏡では、専務の澤田渉平さんに工房を案内いただきました。事務所内には眼鏡フレームの設計図がたくさん。現在はOEMのお仕事が100%で、東京にある有名眼鏡店のOEMもしているのだそう。日本の眼鏡業界を支える会社です。

工場にはたくさんの機械と製造中の眼鏡フレームがずらり。
フレームの角をとって丸みを出す「荒ガラ」という工程

眼鏡フレームの製造工程は200以上あると言われており、自社でできない工程は近くの会社に外注して製造しているのだそう。まるで鯖江市全体がひとつの工場のようです。眼鏡フレームの素材であるセルロースアセテートについても説明いただきました。

セルロースアセテートは綿花由来のプラスチック

「私は鯖江市河和田地区で生まれ育って40年以上。地域の成長発展のために、当社も社会の流れを見て変化していきたい」と澤田専務。数年以内に社長交代の予定があるということで、今後の動きに注目です。

小柳箪笥店

越前市にある小柳箪笥店へ。伝統工芸士の小柳範和さんに工房を案内いただきました。越前箪笥には、金具漆塗り指物の3つの技術が詰まっているということで、まずは金具と漆塗りについて教わります。

箪笥の鍵の仕組みを解説中

「金具についているハートのような形は『亥目(いのめ)』と呼ばれ、魔除けの意味があります。越前箪笥はただの収納道具ではなく、お守りとしての意味も持っているんですよ」と小柳さん。

漆塗りについては、塗った漆を約98%拭き取る「拭き漆」や、塗っては研いで艶を出す「木地呂(きじろ)塗」という技法について教えていただきました。

奥の木工所では、釘を使わずに木材をつなぐ「指物」技術についての説明と、カンナがけ体験も。小柳さんのカンナがけを真似てみますが、なかなかきれいに削れません。削りたての木材は、ヒノキのいい香りがしました。

ショップでは、自社ブランド「Kicoru」についての紹介も。かびにくいまな板、木のスピーカー、からくり箪笥、積みにくい積み木「積めん木」など、ユニークな商品がたくさん。小柳さんのものづくりへの愛をひしひしと感じます。

「ここ数年で20代の息子や、若手の金具職人、木工職人が小柳箪笥に仲間入りしました。若手職人を育てていくために安定した収益の確保を目指したいです」と小柳さん。若手職人を育てることで、持続可能な産地を目指します。

後編に続く

(文:ふるかわ ともか)


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