徹底解剖!ゆうちょ銀行口座開設のための「手続きアプリ」による口座開設申請作業を言語化してみた
まえがき
留学生が日本に入国するとすぐに日本語学校での勉強やアルバイトのために様々な準備をします。市役所での転入手続きが終わって在留カードの裏面に新しい住所を裏書きしてもらったら、次は銀行口座開設です。国からの仕送りの受取り、アルバイトの給与、生活費決済が主な目的です。
しかし、一部で銀行口座が犯罪に利用されていることが原因なのか、年々留学生の新規口座開設の基準が厳しくなっています。メガバンク、都市・地方銀行にあっては入国後6ヶ月を経過しないと口座は持てません。現在新規入国の留学生に口座を開設してくれるのはゆうちょ銀行だけです。
ゆうちょ銀行が口座を開設してくれなかったら、人手不足の地域経済は、さらなるアルバイト不足で大混乱に陥るでしょう。しかし、ゆうちょ銀行(窓口業務は郵便局に委託)はとにかく外国人対応の手間を省きたいと見えて、「窓口受付1日2〜3人までの予約制」という暗黙のルールの下に、遠巻きに留学生を拒んでいるかのような状況です。もちろん郵便局の現場の担当者は丁寧に対応してくれることが多いのですが、ゆうちょ銀行としては「口座開設アプリが便利です。」と、無責任に日本語学校に作業のサポートの手間を転嫁してくる始末。どんなに簡単になってもそれなりに時間がかかるアプリ申請。留学生を受け入れていた機関として、日本語学校はこれまでゆうちょ銀行が窓口郵便局で負担していた口座開設手続きの手間を、日本語学校の人件費で負担しているのです。
私は日本語学校で事務を担当する身として、このような現状に不満を持っています。しかし、そうはいっても地域の郵便局とは互いに譲り合いと協力の精神で、有効的なお付き合いをしていかなければなりません。そこで、この春にあっては私は覚悟を決めて、「アプリ申請」のサポート業務を極めようと決意したのであります。
前提:ゆうちょ銀行での口座開設方法
窓口
アプリ
どこで申し込みをするか、という切り口で、窓口かアプリがあります。アプリは窓口には来なくていいということで、いかにも便利そうに聞こえます。しかし、実際には相当の準備と覚悟が必要と言わざるを得ません。
窓口は、どの日本語学校であるかにかかわらず、1日2名〜3名まで、時間予約制で受付というのが地元のルールになっています。日本語がまだ上手でないということと、確認項目が国によって様々なので、窓口スタッフの負担が大きいということで、とにかく嫌われます。露骨に嫌な顔をする人もいますね。
昨年もなるべく手間を省きたいということで、紙に書くか、Web上で情報を入力して作成して印刷した口座開設申請書を窓口に持ち込んでいました。今年に入ってからは「とにかくアプリ」です。どの金融機関も対面での業務をやりたくないのでしょうね。
さて、文句はここまでにしてとにかく一度「アプリ」をやってみたので、詳細に解剖してご報告したいと思います。
準備が必要なもの、情報
在留カード(住所裏書き済み)※パスポートは求められませんでした。
★メールアドレス(最後に確認番号を受け取って入力する必要あり)
日本での新しい住所、郵便番号、電話番号
日本語学校の住所、郵便番号、電話番号
★国の住所、郵便番号
学生証
注意が必要なのは、★マークの項目です。国から持ち込んだスマホ(まだ口座がないので日本でのSIMカードはない)を無線LANに接続して、Gmailなどのメールアドレスを受信できる状態にしなければなりません。アプリ申請の最後に確認番号をメールアドレスで受信して、入力しなければなりません。メールを受信できる状態を確認してから、アプリ申請を始めなければなりません。
国の住所、郵便番号は英語で入力します。私の勤務校では入国時ビザ申請時のデータをひっぱってこれるようにデータベースシステムを組んでいるので簡単ですが、紙でしかない場合はひっぱり出して控えておかなければなりません。「自分の国の住所くらいわかるだろ」といいたいところですが、シンハラ語やネパール語といった言語で入力するわけにはいきませんから、コピペできるように事前にメモアプリなどに準備しておくべきです。
手続き1/4 重要なお知らせの確認
→ 日本語学校に入学する留学生は、国で12年以上の教育を受けた方を対象としているので、16歳以上の要件に該当します。本人として利用している点も問題ありません。お手続きの流れの確認は省略しますので、「確認しない」を選択します。
→ 下部に表示された「重要なお知らせを確認する」をタップして、内容を確認します。確認画面の下部にある「確認して次に進む」をタップします。
→ 日本国籍、外国籍の選択肢が出ます。「外国籍」を選択します。
手続き2/4 ご本人様確認
→ 持っている、持っていない、在留カード更新中の選択肢が出ます。新規入国ですので、「持っている」をタップします。
→ 「注意事項を確認する」をタップします。次の確認画面で、内容を確認し、「確認して次に進む」をタップします。引き続き「本人確認に進む」をタップします。
→ 内容を確認して、「次へ」をタップします。
→ 3つの入力欄が横並びに表示されます。XX 00000000 XXという形で、入力します。英字は大文字です。
先頭の英字2桁を入力
数字8桁を入力
末尾の英字2桁を入力
→ 「次へ」をタップします。次の画面の案内に従い、在留カードのにスマートフォンをかざして、「OK」ボタンを押して読み込みます。10秒とありますが、それほど時間はかからずに読み取れます。
→ 在留カードの裏面をカメラで撮影します。枠に適切に収まったところで自動で撮影されます。
→ 顔を枠に合わせる際に、「顔をもう少し近づけてください」や、「端末を顔と同じ高さにあげてください」とでる。申請者に持たせて調整させるとスムーズにいきます。3パターン撮影が成功するとチェックマークが出て次に進みます。
→ カメラ起動ボタンを押します。在留カードの表面を画面の枠内に収めて撮影します。撮り直しもできます。よければ、「この画像を使う」を押して進みます。
手続き3/4 必要情報のご入力
→ 「間違いない」を押す。ここからはかなり高い精度で在留カードを読み取った情報の確認が続きます。
→ スリランカの名前など長い名前の場合は、名前の区切りをまれに間違うことがあります。その場合は、「修正する」で、正しい情報を入力します。
→ 事前に申請者とカタカナ名表記を確認しておいた方がいいでしょう。スマホのメモアプリに用意しておいて、コピペするのがおすすめです。入力窓にある情報は消して、準備した情報を入力します。
→ 申請者の住所の郵便番号を入力します。町名まで選択できるようになります。郵便番号がわからない場合でも、住所から追って入力できます。丁目までは郵便番号から取得していることが多いので、番地・号を入力するときに丁目を重複して入力してしまうミスをしがちなので注意します。
→ よく確認して、「間違いない」を押します。違っていたら、「修正する」を押して、修正します。
→ これも在留カードから読み取った日付がでます。ほぼ間違うことはありませんが、しっかり確認して「間違いない」を押します。
→ 留学生の場合、携帯電話のSIMカードなしで入国するケースが多いので、電話番号がありません。学校の電話番号を入力します。ただし、キャッシュカードが届いてからゆうちょダイレクトを使用する際に、携帯電話でSMSを受け取る必要があるとのことで、後にATMで電話番号の変更手続きが必要となります。
「キャッシュカードを受け取るまでに携帯電話のSIMカードを契約し、受け取ったらATMに行く」というところまでが、ゆうちょ銀行続きの流れの肝といえるでしょう。
→ 選択肢は「男」「女」ですが、「回答しない」という選択肢も用意されています。
→ 留学生の場合、「学生証」を選択します。この後、学生証を撮影して、先に進みます。
→ うまく撮影できたら、「この画像を使う」を押して次に進みます。
→ 弁護士/司法書士/会計士/税理士/行政書士の選択肢があって、なぜいわゆる8士業の弁理士・土地家屋調査士・海事代理士が入らないのかが不思議ですが、めんどくさいクレーム対応に備えるために事前に切り分けているのでしょうか。
→ 留学生の場合は、「学生」を押して進みます。
→ 「注意事項を確認する」が入力され、PDFのような確認文書が開かれます。内容はゆうちょ銀行のWebサイトにもあります。外為法に関する注意事項の確認です。内容を確認したら、「閉じる」を押して戻ります。
→ 恒久的施設とは事業を行う一定の場所等をいうそうですが、留学生の場合は通常ありえません。「所有していない」を押して進みます
→ 「確認して次に進む」を押します。
→ 任意ですので、「同意せず次へ」でかまいません。
→ 「同意する」を選ばないと、「大変申し訳ございませんが、お手続きいただけません」となり、手続きが進めなくなります。「同意しない」をおしてしまった場合は、「やり直す」を押して、「同意する」を選択します。
→ 居住地国選択で、よく選択される国にない場合は、下の五十音順リストから選択します。例えばスリランカの場合は、サ行を探します。
→ 姓または名が、「A B C」のように複数パートにわかれている場合は、それぞれにおいて複数選択できます。例えば、姓「A」、名前「B C」と入力できます。在留カードやパスポート表記と同じように設定します。
→ 留学生の場合納税者番号を保持していませんので、「入力できない」を押します。ポップアップウインドウが開きます。
→ 納税者番号を持っていないので、「入力できない」を押します。
→ 「保有していない」を押します。
→ 郵便番号を申請者が覚えていればいいのですが、たいていわからないといいます。インターネットで検索して、各国における郵便番号リストを冊子に印刷しておいて、探してもらいます。どうしても見つからない場合は、一番近い都市の郵便番号を充てています。入力しないと進めないので、実はここが一番詰まるポイントです。
→ 入力できる文字に「,」がありません。コピペで準備した場合、「,」が含まれている間は次に進むボタンが無効化されたままになります。スペースに置き換えて入力しなければなりません。
→ 「次へ」で、年収の確認に進みます。
→ 入国時の留学生は仕事をしていないので、「0円〜100万円以下」を選択します。
→ 「大阪ほにゃらら日本語学校」と、学校名を入力します。
→ 郵便番号から住所を入力します。町名及び丁、番地号を入力します。部屋番号がない場合は、「部屋番号がない」を押します。
→ 日本語学校の電話番号を入力します。
→ 経済制裁対象国・地域には、「北朝鮮、イラン、キューバ、シリア、クリミア地域」が挙げられています。該当しない場合は、「ない」を押して進みます。
→ 主な目的はアルバイトの給与受け取りですから、「給与受取」を押します。他の目的がある場合は、続いて複数選択ができるようになっていますので、該当する項目を選択します。「他の目的はない」と入力することもできます。
→ ここが最大のヤマです。「他の銀行は、入国直後の留学生に銀行口座を開設してくれないから。」と書きます。これは歴然たる事実です。
→ アルバイトをこれからするので「給与」だと思いますが、実際にはまだこれからなので、事実としては「家族からの仕送り」となります。
→ 留学生にとっては例がそのまま当てはまります。「本国に住む家族からの送金」とそのまま書けばいいでしょう。
→ 例を見ると、入金、引き出し、引き落としなど、なにかお金の動きがあれば1回と捉えるようです。月に12回だと、週に3回ということになります。だいたい、「週に3回以上」か、「週に1回」ということになるでしょう。
→ 取引金額についての例を見ると、入金、引き出し、支払いなど、動いたお金の合計を書きます。10万円の給与をもらって、10万円使うと、取引金額は20万ということになるでしょう。「5万円超〜10万円以下」または「10万超〜50万円以下」となりそうです。
→ 学費を現金に引き出して払うとしても200万円を超えることはありませんので、通常は「予定していない」ということになります。
→ 学費や生活費の仕送りを本国から受け取ることになりますので、「ある」とします。日本語学校の学費のための家族からの送金を想定すると、取引頻度は、「半年に1回」、金額は「10万円から100万円」ということになります。(さらなる詳細については、後日更新予定)
→ 確認のために2回入力を求められます。4桁の数字を入力します。忘れないようにメモを取っておきます。
→ パスワードの使用文字の要件を満たすように設定します。例:「Honyarara3210」等
→ パスワードの入力は、思わぬ入力の勘違いがあるので、「パスワードを表示する」を押して、入力したパスワードと控えが違わないように注意します。
→ 将来寮から引っ越すときに不動産の支払いをすることもありえますから、5万円ではなくて、上限の「50万円」にしておくケースが多いようです。
手続き4/4 お手続き内容確認
→ 反社会的勢力に該当しないこと、外国政府等における重要な公的地位該当しないこと等、ゆうちょ銀行の関係規定に同意すること、申告内容が事実とう相違ないこと、のチェックが必要です。確認してチェックをいれます。
→ 入力した内容に間違いがある可能性があります。丁寧に見返して、間違いがないか確認します。間違いがあれば、「修正ボタン」から修正します。
→ 「審査に関する留意事項を確認する」が自動的にはいります。
→ 建前として、「口座開設の審査」があるということです。申請内容に誤記、矛盾、不実等がなければ口座は開設されるでしょう。
→ 最大2週間とされていますが、最短で数日で届いた留学生もいるようですが、郵便物を直接受け取らなければなりません。
→ なんらかの理由で口座開設ができなかった場合は、この後に登録するメールアドレスに結果が知らされます。住所の入力ミス、スキャンした在留カードの名前の認識違いなどが、審査に通らなかった例としてあります。
→ 再度口座開設を申し込みする場合は、結果メールを待ってからということになります。
→ 日本国内で使えるSIMカードが無いスマートフォンを持って入国した留学生の場合、あらかじめ無線LANに接続させて、受信可能な状態にしておきます。メールアドレスを入力して、次に進みます。
→ 受信できるメールアドレスがない留学生は、そもそもアプリからの口座開設ができません。重要なところなので、本記事の冒頭の「前提」と「まとめ」に書いておくことにします。
→ 確認して、「間違いない」を押します。
→ 「メール送信」を押します。メールアドレスがGmailの場合、正しく入力されていれば、迷惑メール判定などで受け取れなかった例はありません。確認コードがすぐに届きます。
→ メールが届かない場合は、「メールが届かない場合」を押して、原因を検証してください。メールアドレス入力ミスや、迷惑メールフォルダに振り分けられた可能性があります。実際の事例で、Gmailのメールボックスが容量一杯になっていて、削除して容量を空けるまで受信を確認できなかったということがありました。
→ 受信したメールの本文に記載されている確認番号(数字6桁)を入力します。
→ ここまでくれば、申込み完了です。申込受付完了画面をスクショしておくといいでしょう。また、本人のスマートフォン以外で申込みをしている場合は、だれの申込みの控えかわからなくなるので、在留カードや学生証の顔写真を続いて撮影しておけば実務的です。
まとめ
長い記事になりました。これが現在運用されている「ゆうちょ銀行口座開設アプリ」の手続き過程の全てです。前提にも書きましたが、申請を始める前に必要な情報の収集が重要です。
経験上最も手間がかかったのは、
国の住所の郵便番号
国の住所
です。これらは、日本語学校の願書から用意しておくか、申請前に学生に書かせる必要があります。書かせるとアルファベットの判別に苦労することがありますから、学生の願書のコピーを取っておいてから始めるのがいいでしょう。
この記事は、2024年5月1日現在版です。50件近くほどのアプリ申請を終えた経験のまとめですが、今後別パターンが発生したら、適宜加筆修正する予定です。操作画面も収録してあるので、プライバシーに配慮しつつ、あった方がわかりやすい項目については今後追加するかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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