書く。
中2の夏、税の作文で入賞した。
賞の名前は長ったらしく、表彰式にも参加したし偉い人の前で朗読もしたから余程良い評価を受けたのだろう。
その年にフィリピンへ留学に行った時のことを書いた。
"現地では水道水を飲んではいけない。
日本は税金で住みやすくなっています。
政府の皆さん、ありがとうございます。"
なんとも大人受けの良さそうなことを書くものだ。
しかし、実際のところフィリピンではかなり快適な暮らしをさせてもらっっていた。
高級別荘地であるバギオの大病院の院長がホストファザーだったのだ。
もちろん社会勉強の一環としてスラム街も訪れた。
空港のあるマニラで水道の水を飲んでお腹を壊した友人もいた。
しかし人間というものはそこまで賢くはできていないもので、その時に感じたことがまさか自国への感謝などではない。
治安が悪そう。絡まれたくない。
中学生の私は日本から遠く離れた異国で、自分の身を守ることで精一杯だった。
だからと言って税の作文で書いたことが嘘だったわけではない。
日本で不便なく暮らせていることへの感謝や、世界には食べたい時にご飯を食べれない人がいることへの実感は確かに生まれたのだ。
税の作文を"書いている時"に。
良い文章を書く時にはまず相手の要求を分析する。
今回求められていたのは税金に対する理解や感謝を示すことだ。
次に他人との差別化を図る。
海外留学など独自性のある体験が文章に個性を出す。
最後にその要求と体験を結びつける。
ここで自分の体験から新たな気付きが生まれる。
「未来についてできること」をテーマに書く。
そのためにこれまでの人生を振り返りながら、他人のために、環境のためにしてきた行動を探す。
小さなことでも、こじつけでも文章にして人に伝えようと思案する過程で自分の中に新たな気づきが生まれる。
無意識的な行動や考えを意識する。
それによってこれからの行動に変化が生まれる。
書くことは未来を創ることである。
矛盾するようだが、なにもいい文章でなくていい。
特別な体験を書く必要もない。
不安なら誰かに見せなくてもいい。
まずは気軽に今日あった出来事から書いてみると新しい出会いがあるかもしれない。
私は、書くことこそが「未来のためにできること」だと思う。
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