【MTG】重厚にするカードのコスト変遷~4マナが妥当らしいけど絶対違うと思う~
4マナは重いんだって!
MTGには「パワーではなくタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振る」メカニズム、通称、重厚/Backboneというものがある。
通常、パワーで戦闘ダメージを割り振るところ、タフネスで戦闘ダメージを割り振るようになるため、マナコストに比して妙にタフネスの高いクリーチャーが大きな打点を持つようになる。
2007年の《包囲の塔、ドラン》以来、数年ごとに細々とその数を増やし続けてきており、現在のスタンダードにも2枚ほど存在しているが、恒久的にクリーチャーを重厚にするカードのコストが4マナと重い。
マナコストに比してタフネスの高いクリーチャーは1マナ0/5や2マナ0/6など、主に2マナ以下のクリーチャーに集約しており、3マナを超えると効率が悪くなる。そのため遅くとも3ターン目にクリーチャーを重厚にして殴り始めたいのだが、昨今のクリーチャーを恒久的に重厚にするカードは4マナかそれ以上のコストばかりだ。
重厚関連カード自体が少ないので、4マナと言えどカードがあって困ることはないのだが、それでも4マナばかりは困る。先述の通り1マナや2マナのクリーチャーを並べるのが最も打点として効率が良いのだが、重厚にするカードを置くターンが遅れれば遅れるほどその有用度は下がっていく。
1マナ0/4のクリーチャーが2ターン目に殴り始めれば2マナ4/4速攻相当だが、4ターン目に殴り始めるなら4マナ4/4速攻相当とマナ相応になってしまうし、1ターン目に出している以上、除去の驚異に晒されるリスクを取って4マナ4/4速攻相当なのは弱いと言わざるを得ない。
ならば2マナや3マナの高タフネスクリーチャーを採用すればその額面上の損失を大きくすることもないのでは? と思われる諸兄もおられよう。そうなると今度はデッキとしての速度を失い、アドバンテージの差で負けていってしまうのだ。
特に重厚にするカードを置けなければ低パワー高タフネスのクリーチャーはただの壁でしかなく、驚異ですらない。そういったカードが突然素早く牙を剥くからこそ重厚デッキは勝ちを拾えるわけだが、この速度を落としてしまえば対処の隙、あるいはデッキによってはコンボ完走なり強力なカードを戦場に送り込めてしまう。
うまく噛み合えばアグロと同等かそれ以上の速度で対戦相手のライフを0にできるというのが、一般的な重厚デッキの強みであり、4マナの重厚カードはよほどのアドバンテージを稼ぐ能力がない限りこの方向性と相反する。
4マナならせめて《策略の龍、アルカデス》のような、アドバンテージを確保できる能力によって着地後も粘り強く戦えるデザインでないとただただ遅いという点が気になってしまう。ただ、WotCの開発部はどうもクリーチャーを恒久的に重厚にするカードの相場を4マナと見積もっている可能性がある。例えば、過去、以下のようなやり取りがあった。
え、最初4マナ(あるいはそれ以上)だったの……怖……という個人的な恐怖の想起はともかく、《策略の龍、アルカデス》が4マナでもうまくデッキとして成立しているからか、置物であってもクリーチャーを重厚にするカードの基準はこの時点では4マナだったようだ。
幸い《厳戒態勢》が(悲しくもあるが)特に大きな波風を立てることがなかったためか、続く灯争大戦で《太陽の義士、ファートリ》は無事3マナのPWとしてデザインされている。
《厳戒態勢》、《太陽の義士、ファートリ》の3マナでさえ割と重く、特に後攻になると対戦相手に2マナで打ち消しなり除去なりを撃たれる隙を作ってしまうので、今でこそ納得しているが当時は不平不満を言いたいほどだった。《シガルダの助け》とか《硬化した鱗》とか有力なデッキのキーカードが1マナなのになんでその俎上にも上がらない重厚デッキがこんな苦労しなくちゃいけないんですか。
ただ、これ以降のクリーチャーを重厚にするカードはしばらくオーラばかりで、影響範囲の大きなカードは作られず、その後、久しぶりにそういったカードが作られたのは、先に挙げた《古きもつれ樹》である。
リミテッドの指針アンコモンとして作られた以上、4マナ実質4/4のバニラであろうと、2007年ぶりに突然黒が重厚の色として取り扱われようとすべてはリミテッドの……いや、好きなメカニズムがリミテッドのバランス調整に巻き込まれるのやっぱつれぇわ。
とはいえ、リミテッドのアーキタイプ用に作られたから《古きもつれ樹》がここまで弱いというのは《床岩の亀》の登場で一種真実になった。
同じ4マナで実質6/6相当、さらにはメリット能力持ち。レアリティの差はあれど、ここまでの差がつくということは、《古きもつれ樹》の性能はやはり抑えられていたらしい。
ただ、それでも抑えられていたのは多色であることや1/4というスペックであり、4マナであることは変わらないため、やはり灯争大戦以降、クリーチャーを恒久的に重厚にするカードのマナ総量は4が適正であるとWotCの開発部は考えているようだ。
……《突撃陣形》あるのに?
《突撃陣形》は重厚の祖、《包囲の塔、ドラン》の次に出たカードであり、2マナで自分のクリーチャーをすべて重厚にする。《策略の龍、アルカデス》や《厳戒態勢》と異なり、防衛持ちのクリーチャーを常在型能力で攻撃させることはできないが、起動型能力で攻撃を許可することはできる。
《策略の龍、アルカデス》、《厳戒態勢》が3マナ以上という重さであってもなんとなく納得できたのはこの2マナの《突撃陣形》と比較してアドバンテージ力や防衛持ちを何もせずに動かせる柔軟性の分を加味されて重くなってるのだろうと思っていたからだ。
それが今現在では《突撃陣形》のことを考慮することなく、4マナが妥当であるという不文律が存在しているかのようなデザインのカードしか出てこない。個人的にはとても不満である。
唯一希望を見出すとするならば、《世渡り上手の交渉人》や、《浜辺の王、プラゴン》のような一見すると例外的に見えるカードの存在だろう。
《世渡り上手の交渉人》は2マナという軽さで、自分自身は恒久的に重厚である。賛助による時間制限のある重厚化が2マナで認められている、あるいは自身が重厚であることは2マナでできるという証左だ。
《浜辺の王、プラゴン》は黒緑の《古きもつれ樹》が登場した時期にあったマローのブログでの「ドラン能力(重厚)のカラーパイは白と黒と緑!」という発言とやや矛盾する青に固有色用の白を持つカードである。
青を主体とするカードでも重厚にする能力が使え、また、3マナでもアドバンテージを稼ぐ能力を持てるという証左だ。
これらのカードのデザインが良い方向に向かえば、いずれまたクリーチャーを恒久的に重厚にするカードは軽さを取り戻せるのではないか。
あるいは、4マナであっても《床岩の亀》を超えるデザインになってくれるかもしれない。
ファウンデーションズに1マナ0/5のクリーチャーが再録されている以上、これから先、重厚カードが来ることは間違いないはずなので、その時にやはり4マナは重すぎたのだと思えるカードの登場を期待したい。