【EDH・統率者】Lv6:包囲の塔、ドラン/Doran, the Siege Tower【MTG】


はじめに

 重厚/Backboneという名前の能力をご存じだろうか。
 MTGAでその状態のクリーチャーを選択したときにのみ表示されるためご存じでない方のが多いかもしれない。
 なんのことはなく、パワーではなくタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振る能力のことである。
 2007年から細々と数を増やしてきている能力なので、そっちも知らない、なんてことはないでしょう。ないはずです。ないんですよ。
 ともあれ、このたび、重厚の祖である《包囲の塔、ドラン》で統率者戦用のデッキを作ったので紹介したい。
 まがりなりにも無限コンボが入っているので想定レベルは6。複数入れているがカジュアル寄りに遊びたいので大半がロマンに近いものである。

包囲の塔、ドランとは

3マナで実質5/5。ダブマス再録時に誤字が直った

 いわゆるアブザンカラーの伝説のクリーチャー。
 一見すると3マナ0/5に見えるが、自身の能力によって実質的に5/5として振舞い、更には自他問わず、すべてのクリーチャーに同じくパワーではなくタフネスで戦闘ダメージを与えるよう強要する。
 自分は当然デッキ構築の時点でパワーよりもタフネスの高いクリーチャーを採用しているので、

今なら多分アンコモン

 うおおおおおおおお! 4マナ実質10/10バニラ!!! 強い!!!
 といった具合になり戦闘を有利に進められる一方、対戦相手が出している2/1のような頭でっかちのクリーチャーなどは実質1/1にサイズダウンし苦労することだろう。そのサイズで打点が1下がって言う程苦労するか?
 パワーのみを上昇させるタイプの無限コンボや全体強化も無力化できるので、立っているだけで仕事をする……というか除去されると上の2/10バニラが本当に2/10バニラになってしまうので基本的には立たせておく。

殴り合うレベル帯なので、まあまあ遭遇する。ドランに入れるにはちょっと重い

 影響範囲が広い故に「あっ、あなたのゼタルパ、実質8/8です……」といった事故も時折起こるが、そこはまあ、統率者戦である以上仕方のないことだ。

 このデッキの特徴としては先述の通りタフネスの高いクリーチャー、あるいはそれらとシナジーのあるカードを多く採用しているので、通常のMTGの知識が通用しないところにある。
 タフネスで殴ることに快感を覚える人間ならいざ知らず、そうでない一般的なプレイヤーはドランの能力の説明を聞いたあと、パワーが低くてタフネスのが高いクリーチャーが戦闘で有利になる、程度にしか思わないだろう。

 そのため、他に同じマナコストで、よりタフネスが高いクリーチャーがいるにも関わらず、能力目当てで入れているパワーよりちょっとタフネスが高いクリーチャーへの警戒が必然的に下がる(多分)。
 ドランに入る2マナ域にはタフネス4以上の選択肢がある中で2マナ2/3のようなクリーチャーを出しても「2マナで実質3/3って強くないですか? 公式の記事でもSo Goodって言ってましたよ」などと適当にしゃべっていれば大抵のプレイヤーは騙されてくれる可能性が高く(希望的観測)、コンボパーツを比較的安全に並べられる……はずだ。
 カードを出すたびに「それなんですか?」と聞かれる可能性が高いのも、ジョニー的には満足度が高い(説明に思考を割かれるけど)。

 ところでドランの能力だが、パワーではなくタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振るだけで、パワーに修正が掛かっているわけではない。
 例えばドランの能力の影響を受けているタフネスが4以上のクリーチャーをパワー4以上のクリーチャーを対象とする除去の対象に取ることはできない。
 これは戦闘ダメージでないダメージを与える際も同様で、例えばドランが格闘を行う際、与えるダメージは(パワーへの修正がない限り)0となる。
 あくまで戦闘ダメージを与える際に参照する数値の場所が変わるだけであって、パワーにタフネスの値が代入されているわけではないという点には注意したい。特に緑はパワー参照ドローが多くて腹が立つ。

 ここから先(あるいはこれ以前)の文章で、実質n/nのような表記が出てきた場合パワーは上昇していないが、打点としてはn/nと同じ挙動であるという意味だ。
 大抵、ドラン、あるいはドランと同じ能力を持っている置物を置いていてタフネスで戦闘ダメージを与えるときの話をしている。

 ドランのこの能力は他にも似たような能力を持ったカードがいくつか存在し、影響範囲以外は同じ挙動をするためか、それらは何故かMTGA限定で、まとめて重厚という名称がついている。
 この能力が好きなPWとしては、この名称が広まることで対面時の説明が省ける上に高タフネスデッキについての情報を検索する際、いちいち広範なカードたちの名称で検索しなくて良くなるという利点があるので是非覚えてほしい。
 このnoteでも、以降は「パワーではなくタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振る能力」はすべて重厚という単語で説明していく。

デッキリスト

 デッキのコンセプトとしてはタフネスの高いクリーチャーを並べて気持ち良く殴ろうというのがメイン。
 殴るように見せかけてコンボを決め、対戦相手全員、あるいは誰か一人を脱落させられるようにもなっているので、今まで紹介してきた、他のデッキよりは多少強いのではないかと思っている。コンボに関しては多分見る人が見たらバレバレ。

搭載コンボ

無限

 《血なまぐさい結合》+《極上の血》

定番のやつ

 黒を入れているなら入れない理由はなさそうな2枚無限コンボ。
 とはいえ始動するのにライフの変動が必要なので3枚な気がする。
 このデッキはコンボにライフ回復を絡めることが多いので採用。
 《極上の血》は代用品が存在しないので大切に。
 《血なまぐさい結合》の代わりになるカードは以下の3枚が入っている。

《ヴィズコーパのギルド魔道士》は起動コストが必要だが各対戦相手に作用する

 《コーの遊牧民》+《ダールの降霊者》+α

いわゆるループジャンクションのコンボ。他にも同様の能力を持つカードが複数存在する

 《ダールの降霊者》は自分のクレリックが呪文や能力の対象になるとそのクレリックにターン終了時まで+0/+2の修正を与える(自身もクレリックなので適用される)能力を持つ。
 《コーの遊牧民》は0マナで自身へのダメージを他のクリーチャーに移し替えることのできる起動型能力を持っておりその能力で《ダールの降霊者》を対象とすることで無限にタフネスが上昇する。
 この無限に上昇したタフネスをサクッたクリーチャーのタフネス分ライフを得られるサクり台に投入することで好きな量のライフを得ることが可能だ。

入れているのは2枚。《価値ある理由》、《星明りの聖域》辺りは検討中

 この大量のライフ回復により、先述の《血なまぐさい結合》や《薄暮薔薇の刺、ヴィト》が戦場にいれば1人が脱落するし、《ヴィズコーパのギルド魔道士》の2つ目の能力を起動できれば、各対戦相手はライフを5000兆点とか失って敗北である。
 この項の+αの部分はそれらのライフ回復に反応するカードに加えて、以下のカード2枚も該当する。

大釜の方は警戒されたりされなかったりするので頑張って墓地対策と言い張ろう

 大量にライフを得ていれば《霊気貯蔵器》は50点ビームを撃ち放題。
 一度大量にライフを得ておけば後から引いても良いのが利点。
 《死に至る大釜》の方は2番目の能力がこのターン自分が得たライフ分、各対戦相手が切削するというもので、大量にライフを得た後に起動すれば、ライブラリ修復手段を持っていない限りLOで勝利できる。

 大釜は切削能力の起動が1マナと軽く、《ヴィズコーパのギルド魔道士》の起動型能力の3マナよりはサクりに合わせて起動がしやすい。
 複数の能力を持ち、一見すると悪さをしなさそうなので先置きしやすいのも大釜の利点だろう。大抵マナファクト壊すの忍びない状況とかで手慰みに破壊されて泣く。

 またこれらのコンボの核となっているループ部分は《ダールの降霊者》がクレリックを対象とすれば誰でも反応してくれるため、降霊者自身ではなく他のクレリックのタフネスを上昇させてタフネスを無限に上昇させるという使い方もできるので覚えておきたい(アイリやヴィトもクレリック)。
 重厚の影響下であればタフネスの上昇は、打点を上昇させているのと同義なので戦場に立っている他のクレリックと共に各対戦相手を殴り倒すこともあるかもしれないからだ。
 そうなると《豪腕》などのトランプル付与が欲しくなるが、そこまでやるならもう素直に最初から殴り特化にした方が良いので入れていない。

 《小走り樫》+《親切にもてなす者、木の鬚》+《活力の力線》など

本来は2枚コンボ

 《小走り樫》と言えば《キヅタ小径の住人》との2枚コンボが有名だが、《キヅタ小径の住人》を入れてしまうとデッキコンセプトとズレるため、別の手段を用いている。
 《親切にもてなす者、木の鬚》はライフを得るたび、ハーフリングまたはツリーフォークに+1/+1カウンターを乗せることができる。
 この能力で《小走り樫》に+1/+1カウンターを乗せ、リストークンを出し、クリーチャーが戦場に出ることでライフを得るカード(例では《活力の力線》)と組み合わせることで無限トークンと無限ライフが成立する。
 無限ライフが成立するということは前述のライフを得るコンボとも組み合わせることができるということだ。
 無限トークンを出したとしても全体除去で返される可能性がある場合は、別のコンボカードと組み合わせることも考えたい。

プチコンボ

 この項では状況次第では刺さるかもしれない程度のコンボを紹介する。

 《金屑ワームの鎧》+《ノーンの僧侶》 or 《絡み森の鮟鱇

ドランにつけても2パンになるので強い

 《ノーンの僧侶》と《絡み森の鮟鱇》はどちらもタフネスが4以上の感染持ちクリーチャーだ。そのため《金屑ワームの鎧》でタフネスを上昇させると打点が実質10以上になるため、攻撃が通れば毒殺できる。
 このデッキにはクリーチャーをブロックされにくくするカードを搭載しているため、運が良ければ毒殺で勝利することもできるだろう。やっぱり《豪腕》みたいなトランプル付与入れたほうが良くない?

 《這い寄る吸血者》+《耽溺する貴族階級》

2→3とマナカーブが綺麗なのが良い

 《這い寄る吸血者》の能力によって4人対戦なら毎ターンほぼ確実に3点のライフが得られるため《耽溺する貴族階級》の誘発条件を満たし、毎回自分のターンに対戦相手に4点のライフロスを強要するコンボ。
 重厚の影響下であるなら《耽溺する貴族階級》が攻撃することでも自身の誘発条件を満たす(実質4/4絆魂のため)がこの2枚なら殴る必要すらない。
 ライフを得ているのでヴィトや《ヴィズコーパのギルド魔道士》と組み合わせればライフロスは更に加速する。

 《コロズダのギルド魔道士》+《地獄の樹》 or 《解放の樹

起動が重いのが欠点。トークンがサクれないのも注意

 生け贄にしたクリーチャーのタフネスの値に等しい数のトークンが出る《コロズダのギルド魔道士》と高タフネスになりやすい2種の樹の組み合わせ。
 特に《地獄の樹》は対戦相手のライフがトークンになるのでとても気持ちが良い。《解放の樹》を使う場合は自分のライフが13点になることを忘れずに。
 当然、上記のループジャンクションコンボの無限タフネスに《コロズダのギルド魔道士》を組み合わせると無限トークンになる。
 いずれにせよ大量にトークンが出るので《活力の力線》のようなクリーチャーが出るたびにライフを得られる置物と組み合わせると大量にライフが得られるし、加えて《血なまぐさい結合》系カードを添えれば、対戦相手のライフを大量に失わせられるだろう。

 《常緑のビヒモス》+土地破壊ができる土地

世界のるつぼ内蔵高タフネスクリーチャー

 《常緑のビヒモス》の常在型能力を用いて土地破壊ができる土地を使いまわすコンボ。
 自分も土地の数が止まってしまうし、対戦相手の土地を破壊しても勝利に直結しないので、積極的に使いたいわけではないが《イス卿の迷路》や《ニクスの祭殿、ニクソス》など壊したい土地はいくらでもあるため搭載。
 色事故を起こした相手を助けたり、最悪、自分の色事故を解消することができるので《幽霊街》を採用しているが、《露天鉱床》のが強い。

 《死に至る大釜》+《太陽の義士、ファートリ》+《地獄or生命の樹》

-3にしたやつ許せねえよ……

 《太陽の義士、ファートリ》は自分がコントロールしているクリーチャーのタフネス分ライフを得られる忠誠度能力を2回起動できる。なんで同期の灯争キオーラは7回起動できるんですか?????
 そのためタフネスを非常に大きくできる樹々と組み合わせることで《死に至る大釜》で大量の切削が可能だ。
 先述の通りループジャンクションのコンボと絡めると確実に機能するが、《地獄の樹》や《解放の樹》でも彼/彼女らの能力を起動すればタフネスが大抵30前後になるため、2回ファートリの能力を起動すれば60枚近く削ることができる。
 どちらの樹も、もしライフが50以上の対象と交換することができたのなら、迂遠だが2ターンキルも夢ではなく、特に《解放の樹》の方は自力でライフを得る手段が多いこのデッキで自分自身と交換できるため、頑張れば100点以上のタフネスにしてゲームエンドも夢ではない。
 そこまでできるなら《血なまぐさい結合》系カードあれば2人以上落とせるだろ。

構成解説

 デッキの構成をカードタイプごとに解説する。

クリーチャー

ツリーフォーク枠

 統率者であるドランはさほどツリーフォークという種族そのものとのシナジーがあるわけではないが、ある理由からツリーフォークを多めに取っている(ツリーフォークデッキならともかく、重厚デッキに採用したいと思えるほどのツリーフォークは少ないためこれでも多いほうである)。

 《ツリーフォークの先触れ》はETBで森カードかツリーフォークをライブラリトップに持ってくることができる。基本土地の《森》ではなく土地タイプの森を参照しているのでトライオームやショックランドを持ってくることで、3色以上のデッキにありがちな土地事故を防いでくれるので優秀。

 《小走り樫》は先述したようにコンボパーツの1枚であるが、このデッキは3~13までのバリエーション豊かな高タフネスクリーチャーを採用しているのでポンと出しても7回くらい進化できる。進化を繰り返せばパワーが上昇するので、最悪ドランが出せなくなったときのアタッカーとしても役立つ。

 《不屈の古樹》は4マナ実質10/10というだけのバニラ。
 バニラ故に特に言うことはないのだが、高タフネスを活かせるカードがこのデッキには数多く仕込んであるのでなんだかんだ便利。

 《親切にもてなす者、木の鬚》はコンボパーツの1つであるが、単体でも4マナ実質5/5でトランプルと護法(2)がついてくる優秀な1枚。
 カウンターを乗せられる対象はこのデッキだとツリーフォークしかいないので基本的に自分自身に乗せることになるが、ライフを得れば得るほど巨大化し、トランプルでチャンプブロックも許さないのは非常に強力。
 《ヴィズコーパのギルド魔道士》で絆魂を持たせられれば毎ターン倍々ゲームが始まるのも楽しい。
 ETBで食物を2つ持ってくるので単体でも6/11になれることは忘れずに。

 《古きもつれ樹》はこのデッキにおいては2枚目のドランとして扱う。
 1マナ重いしP/Tも低いしで戦闘面での代わりには一切ならないが、ドランと同じ重厚能力を持っているため、ドランを除去され続けた場合などにおいては4マナ払ってこっちを出す方が良い、ということがあるだろう。多分。
 ツリーフォークなので入れているというのもあるが、なんだかんだ弱すぎるほどではない……と思う。思いたい。

 《コルフェノールの若木》はドローの貧弱なこのデッキで貴重な手札増強カードだ。
 攻撃誘発で、更にライブラリトップがクリーチャーであるという条件はあるが、確率的には1/3くらいで引けるので悪くない。
 《ツリーフォークの先触れ》で先に仕込んでおけば任意のツリーフォークを持ってこれる点も魅力だろう。
 破壊不能を持っているので戦闘面で攻守に強いのも頼もしい点。

戦えそうなP/Tをしているが戦闘には参加させない方がいいやつ

 P/Tだけ見ると重厚の影響下ではマナレシオが高く戦闘に参加させたくなるが、能力目当てで採用しているので扱いとしてはシステムクリーチャーに近いのが画像のカード群である。

 《エイスリオスの学者》は3マナ払うことで各対戦相手から1点ドレインする強請と同じ効果の起動型能力を持つクレリック。
 3マナ1/4という重厚デッキとしてはまあまあなサイズ感なので能力目当てのシステムクリーチャーだとバレにくい。
 能力は《這い寄る吸血者》で代用が効くので、除去されても困らず、気楽に殴りに行けるのも良い点。
 4人対戦ならばまず3点のライフを得られるため、《耽溺する貴族階級》との相性も良い。

 《ロウクスの信仰癒し人》は4マナ1/5絆魂というこのデッキにとって都合の良い能力をしている1枚。
 常在型能力で自分が得るライフが倍になるので重厚の影響下で戦闘を行えば基本的に10点のライフが確約される。
 とはいえ常在型能力を目当てに採用しているので、基本的にはアタッカーではなくブロッカーとして運用するのが良いだろう。
 先述したように大きな点数のライフ回復はこのデッキのコンボパーツたちと相性が良く、また、重厚デッキ向けのP/Tをしているので対戦相手からの警戒度合いも低い。
 先にヴィトを置いたりすると当然警戒されるので出すタイミングには注意。
 このスペックに加えてクレリックだったらドランのオリカになれたのだが残念ながらモンクである。

 《病的な日和見主義者》はこのデッキで貴重なドローソースである。
 ターンに1度しか誘発しないが、あらゆるクリーチャーの死亡に反応してくれるため、4人対戦の統率者戦では期待値が高い。
 3マナ実質3/3と重厚デッキの戦闘要員にするにはやや不安なP/Tであるため基本的には通常のデッキと同じく立たせておくのが良いだろう。
 《コロズダのギルド魔道士》で複数体のトークンが生成できている状態でサクり台があると毎ターン1ドローができるのはとても偉い。

 《カタパルトの有象無象》は3マナ1/5というそれなりに優秀なP/Tを持ち、条件を満たすと《カタパルト隊長》に変身する。
 変身すると2/6という3マナとしては上々のP/Tになり、3マナ払って対象の対戦相手1人にサクったクリーチャーのタフネス分のライフロスをさせるタップ能力を得る。ライフロスが各対戦相手であったならとても強かったのだが……。
 《地獄の樹》の能力と組み合わせると確実に対戦相手1人を脱落させられるが、両方ともタップを必要とするため揃った時点で機能しないのがやや悠長。
 パワーよりタフネスの高いクリーチャーを3体コントロールするというのが変身条件だが、誘発のタイミングが戦闘開始時のため、出してすぐ変身させるためには戦闘前メインで出さなければならない点は注意。まあすぐ変身させても能力使えないんだけど。

 《薄暮薔薇の棘、ヴィト》は先述の通りコンボパーツの1枚である。
 ライフを得るたびダメージを飛ばせるのでライフ獲得手段の多いこのデッキではとてもありがたい。
 重厚の影響下では3マナ実質3/3となりある程度戦闘をこなせるのも良い点。
 自軍全体に絆魂を持たせる起動型能力も統率者戦であれば割と起動しやすく、打点さえ稼げれば戦闘で勝てない相手に突っ込んで行ってもヴィトの能力で勝てる。

 《樹海の幻想家、しげ樹》は2つの起動型能力目当てに採用しているのでこの群の中で最も戦闘に参加しないカードと言って良い。
 土地ならば何でも出せるという序盤には有難い能力と切削したカードを墓地から回収できる能力が噛み合っており、加えてタフネス偏重のP/Tをしているので採用しない理由がなかった。
 二つ目の能力で回収できるとはいえ、一つ目の起動型能力を起動しすぎるとコンボパーツが墓地に落ちて目論見がバレる可能性が高くなることには注意したいところ。
 伝説のカードは戻せないことをよく忘れる。

 《魂浸し、ダイナ》は《血なまぐさい結合》の代用となり、軽く、タフネスが高めなクリーチャーとして採用した。
 このデッキは細々としたライフ回復をそれなりにするので序盤に適当に出しておくだけでもそれなりに活躍してくれることが多い。
 生け贄にしたクリーチャーのパワー分の修正を自身のパワーに与える起動型能力がほぼ腐っているが、時折高パワーのクリーチャーを出したりするのと、サクッて相手の呪文を立ち消えさせることで追加の効果を処理させないという小技は覚えておきたい。

 《耽溺する貴族階級》はこのデッキと非常に相性が良いカードだ。
 3マナ1/4で飛行と絆魂を持ち、重厚状態ならば実質4/4であり、終了ステップには3点ライフロスをばらまいてくれるという非常に都合の良い能力の塊である。色と能力とP/Tを活かせる重厚デッキがドランしか存在しない為、おそらくドランデッキのオリカだろう。
 とはいえその強力な能力は使われる側から見れば処理がしたくなるものである。基本的には立たせておき、丸腰の相手にだけ殴りに行くという運用が望ましいと考えている。

 《ジャムーラのシダー・コンド》はパワー2以下のクリーチャーをブロックされにくくする、重厚デッキと非常に相性の良い優秀なブロック制限能力を持ち、色々と対戦中の説明が面倒な1枚である。
 側面攻撃の方は側面攻撃を持っているクリーチャーが採用されているデッキと当たることが稀なため、基本的にはブロック時に-1/-1という認識でいればよいが、ブロック制限の方が輪をかけてややこしい。
 このブロック制限、対戦相手全員に適用されるため、自分以外の対戦相手ABC間の戦闘においても機能するのだ。
 自分のクリーチャーがブロックされないだけならばどのクリーチャーでブロックできるのかを説明すればよいが、対戦相手AとBの戦闘も自分がチェックしないと漏れが発生してしまうため、ヘイトベアー並みの管理の面倒さがある。
 多分、デザイナーが二人対戦しかしたことがなかったか相当な記憶力を持っているかだったのだろう。

 《セレズニアの声、トロスターニ》はクリーチャーを戦場に出すとそのタフネス分のライフを回復してくれる。
 このデッキはタフネスが高いクリーチャーばかり入っているので、生き延びれば生き延びるほど、統率者戦であっても頼りになる量のライフを得ることができる。
 また、無限トークンの傍らに置いておけば無限ライフを達成できるので、コンボパーツとしても使う。
 以上のこともあって、4マナでタフネス5という頼りになる性能をしているが、能力目当てで入れているので、殴らせず立たせておく方が都合が良い。
 居住でクリーチャー・トークンのコピーが作れる能力はこのデッキではほぼ機能しないと思われる。
 一番の欠点は三色のこのデッキで(W)(W)(G)(G)の捻出が割と難しいこと。

 《解放の樹》はこのデッキの趣味枠である。
 4マナでタフネス13なのでデッキ内のカードと様々なシナジーがあり、加えて自分のライフとタフネスを交換する能力を持つ。
  ライフ回復を考慮しなくても初期ライフと交換できれば40という高いタフネスになり、出すのが多少遅れても30前後にはなるだろう。
 反面、交換すると自分のライフが13点になってしまうので交換するタイミングは慎重に選ばなければならない。さすがに火力を撃たれて敗北することはないだろうが、総攻撃で十分に消えてなくなるライフ量である。
 交換した直後に《永代巡礼者、アイリ》などでサクるのが最も隙のない使用方法だろうか。

 交換した結果、ライフが減少すればそれはライフを失ったことになり、ライフが増加すればライフを得たことになる。
 そのため一度交換して再度交換することで大量にライフを得た扱いにでき、このデッキでは何かと悪さができることは覚えておきたい。
 ただ交換のルール上、どちらかが対象不適正だと成立しないので、交換に合わせて除去されると交換は成立せずライフが減ったままになるのでその点には注意。

 決定的な欠点として防衛を持つため基本的に攻撃ができず、嫌が応でもブロッカーとして立たせておかなければならない。
 一応《突撃陣形》の起動型能力で攻撃に参加できるが、1/99を都合よく引くのは現実的ではないので、できたらいいなくらいの期待度である。

 《地獄の樹》はこのデッキの趣味枠である。
 4マナでタフネス13なのでデッキ内のカードと様々なシナジーがあり、加えて対戦相手のライフとタフネスを交換する能力を持つ。
  ライフ回復を考慮しなくても初期ライフと交換できれば40という高いタフネスになり、出すのが多少遅れても30前後にはなるだろう(反復)。
 交換すると相手のライフが13点になり、ヘイトが爆上がりなので交換するタイミングはそれなりに選ぶ。何か大きなアクションをしてきた相手への暴力装置として立たせておくのが良いと考えている。

 自分自身と交換していた《解放の樹》と異なり対戦相手と交換するため多人数戦である統率者戦の場合、Aから貰ったライフ(タフネス)をBと交換するという使い方が可能なことは覚えておきたい。
 対戦相手1人のライフを13にした後、大量にライフを得た別の対戦相手のライフを《地獄の樹》のタフネスにまで低下させる、といった使い方が考えられる。
 ライフが少ない相手を助ける手段としても使えなくはないが、基本的に対戦相手を延命すると碌なことにならないのでこの方法で使うことは滅多にない。自分に有利なヘイトベアーをコントロールしていたり、一時的追放カードに閉じ込められているカードが解放されたら困るときに使うくらいか。

 《解放の樹》同様、防衛を持つため基本的に攻撃ができず、嫌が応でもブロッカーとして立たせておかなければならない。
 一応《突撃陣形》の起動型能力で攻撃に参加できるが、1/99を都合よく引くのは現実的ではないので、できたらいいなくらいの期待度である。

ガンガンいこうぜ

 これまで紹介してきた立たせておいた方が良いカードと対照的に攻撃に参加させた方が良いのが、この5枚だ。

 《ノーンの守護者》は3マナ1/4警戒に加えて感染も持っているというコモンとは思えない能力の詰め込み方をされており、重厚デッキであれば実質4/4として振舞うのでとても強い。
 感染で-1/-1カウンターか毒カウンターが乗るのでとりあえずで殴りに行っても相手の戦力か命を削ってくれる。やっぱ感染っておかしくない?
 先述の通り《金屑ワームの鎧》で+0/+6の修正を受けさせれば、ジェネリック《荒廃鋼の巨像》として活躍してくれるだろう。

 《運命の天使》はややこしい能力を持つクリーチャーである。
 メインは終了ステップ開始時に自分のライフが初期ライフより15点以上ある場合、このターン《運命の天使》に殴られたプレイヤーを敗北させるという分かりやすい能力。
 この敗北条件を補助するために自軍クリーチャーがダメージを与えるとその分ライフを回復する能力を持ち、重厚状態であれば5マナ6/6飛行・二段攻撃にライフ回復を併せ持つ強力なクリーチャーとなる。

 ただこのライフ回復、絆魂と異なりダメージを与えた際に誘発する(=スタックに乗る)いわゆる「魂の絆」能力で、加えてダメージを与えた対戦相手も回復するという謎の挙動になっている(一応、ライフの増減はダメージを与えるたびに起こっている)。
 そのため《運命の天使》による敗北を引き起こせず除去された場合、ライフの増減が事実上ないため、殴った意味がなくなるので気を付けたい。
 とはいえ自分は純粋にライフ回復するので回復に反応するカードの多いこのデッキとの相性は根本的には良いと言える。

 《絡み森の鮟鱇》は《ノーンの僧侶》と同じく感染枠。
 単純に4マナ実質5/5感染として働くだけでなく、起動型能力で対戦相手のクリーチャーのブロックを強制させることもできるので、意外と小回りが利く。
 このデッキには《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ》が入っているので、後半になれば鮟鱇の能力を大量に起動して無理やり攻撃を通すといった動きもできる。
 《ノーンの僧侶》と違い警戒を持っていないので殴り得とまではいかないため状況次第ではブロッカーとして立たせておくのが良いだろう。

 《絹鎖の蜘蛛》はこのデッキにおいて貴重な飛行対策カードだ。
 蜘蛛なので当然自身も到達を持ち、飛行クリーチャーのみにダメージを与える《突風線》を内蔵している。この能力により、小粒な飛行クリーチャーを牽制でき、無限トークンも飛行持ちならば怖くない。
 5マナで2/7なので実質7/7であり、これが立っているだけで大型飛行クリーチャーであってもまず攻撃してこないだろう。逆に言うとこれが殴れるタイミングが割と限られるということでもあるが……立っているだけでも仕事をすると前向きに考えれば何も問題はない。
 ちなみに到達を持つタフネスが高いクリーチャーとして蜘蛛は代表的な存在だが、そのほとんどが、到達持ってます! 終わり!みたいなカードが多く、能力の強いカードは割とパワーが高かったりで重厚デッキと相性が悪かったりする。

 《常緑のビヒモス》は5マナ2/7という巨体のみをほぼ目当てとして入れている。躰目当て。
 とはいえ能力も墓地から土地をプレイできる《世界のるつぼ》を内蔵しておりフェッチランドを使いまわしてライブラリの圧縮、先述の《幽霊街》を使いまわしてマナ基盤の破壊など小回りが利くため損がない。
 加えて蘇生を持っているので墓地に落ちても一度だけ仕事をしてくれるのも優秀な点(回収手段がそれなりにあるので使うことは少ないが)。
 またこのデッキでは色事故が起きやすいのでマナさえあれば色事故と無縁の不特定5マナというのも助かる。

重厚デッキの例外たち

 重厚というメカニズムを生かす都合上、パワーよりもタフネスの高いクリーチャーを採用するのが良いのだが、デッキの強度を多少なりとも上げようとすると、どうしても正方(P/Tの数値同士が等しいこと)や、重厚の影響下でそこまで打点の上がらないカードを採用せざるを得ない。
 この項ではそのようなカードを紹介する。

 《コーの遊牧民》はこのデッキの無限コンボの片割れだ。
 0マナでこのクリーチャーに与えられる次のダメージ1点を、対象とした自軍の他のクリーチャーに肩代わりさせる起動型能力を持つ。
 0マナなので無制限に起動でき、そのおかげで《ダールの降霊者》の能力を無制限に誘発させられる。
 基本的には手札に抱えておくカードで、戦場に出すことはない。
 一応このデッキはタフネスの大きいクリーチャーばかりなので、これでブロックして他のクリーチャーにダメージを適当に割り振ることで対戦相手がダメージ割り振り順を選ぶ複数ブロックより有利な状態で戦闘を行うこともできるが、そのような状況になることは稀だろう。

 《ダールの降霊者》は《コーの遊牧民》と無限コンボを成す。
 《コーの遊牧民》の能力で自分のクレリックが対象に取られると《ダールの降霊者》の能力が誘発し、そのクレリックに+0/+2の修正を与える。
 そして《コーの遊牧民》の能力は0マナで無制限に起動できるので無限コンボとなるのだ。
 《ダールの降霊者》の誘発条件が「自分のクレリックが対象になったとき」であるのがこのデッキと非常に相性が良い。
 通常であればクレリックである《ダールの降霊者》自身のみを対象として無限コンボを行うが、先述の通り、他のクレリックを対象としても降霊者の能力は誘発するので重厚ならば複数体のクレリックの打点を無限に上昇させることができる。
 この、他のクレリックで誘発させるパターンは《永代巡礼者、アイリ》などで《ダールの降霊者》をどうしてもサクりたくないときにも重宝するので覚えておきたい。

 《這い寄る吸血者》は立たせておくだけで仕事をする1枚。
 自分のアップキープごとに各対戦相手にダメージを与え、与えたダメージ量に応じて回復量が決まるので基本的に1点を3人に与えて3点ゲインすることになる。
 3点という回復量は割と馬鹿にならず、ショックインも気軽にできるし黒のライフを払ってドローする呪文や置物もリスクを恐れる必要がなくなるだろう。
 対戦相手が減るごとに回復量も減るが、その分誘発までのターンも短くなるのであまり気にならない。
 先述の通り、4人対戦ならば3点ゲインなので、《耽溺する貴族階級》の誘発条件を満たすのも偉い点。

 《永代巡礼者、アイリ》はこのデッキにおける貴重なサクり台。
 2マナ2/3という平均以上のP/Tに加えて接死を持っており、クリーチャーとしての性能が高い。
 サクったクリーチャーのタフネス分のライフを得られるので全体的に高タフネスのこのデッキと非常に相性が良く、ライフを大量に得ることに反応するカードで対戦相手を倒すこともできる。
 サクってタフネス分のライフを得るだけなら色拘束の薄い《グリセルブランドの信奉者》がいるのだが、あちらは1/1と正方のP/Tをしているために怪しまれやすい。一方アイリは一応タフネスの方が高いのでタフネスで殴るデッキなら入るのかな……と対戦相手を納得をさせやすい、と思っている(個人の感想です)。あと接死。
 《グリセルブランドの信奉者》との大きな違いとして初期ライフ+10以上&クリーチャーをサクって起動できる追放能力があるが、条件を満たすのは容易な反面、サクるクリーチャーを用意する方法があまりないので基本的に使うことはない。とはいえ最悪《包囲の塔、ドラン》をサクッて使えたりするので覚えておくと良いだろう。
 どちらの能力も自身をサクれない点には注意。
 
 《ヴィズコーパのギルド魔道士》はコンボパーツの1枚。
 P/Tが正方なので見るからにコンボパーツと思われるだろうことから手札に抱えて5マナのカードとしてカウントするのが良い気がしている。
 ただそうなると上下両方の能力を使いたい場合にマナを大量に使うため、諦めて先に出してしまうのも手。なぁに死んでも墓地から戻せるよ。多分。
 対象のクリーチャーに絆魂を持たせる能力は正直マナコストに見合っていない能力だが、ないよりはマシ。せめて《覚悟//意欲》の《意欲》と同じ効果なら……。
 2つ目の自分がライフを得るたびに各対戦相手がその分ライフを失う能力は複数回起動すればその分、重複するため、2回起動すれば20点ゲインで勝てたりする。マナは余っているがクリーチャーの数が少ない、あるいは高タフネスのクリーチャーがいない時には複数回の起動を考慮すると良いだろう。

 《コロズダのギルド魔道士》も《ヴィズコーパのギルド魔道士》と同じく正方なので怪しまれるカードだ。
 メインに使う能力は下を想定しているのだが、4マナというのが絶妙に重い。トークンサクれないし3マナで良かったのでは……。
 上の威嚇(自身と共通する色かアーティファクト以外にブロックされない)を持たせる能力は統率者である《包囲の塔、ドラン》が3色でブロックされやすく、相性が良くない。
 一応、感染持ちの単色クリーチャーやループジャンクションの対象になれるクレリックが単色のため、それらとは相性が良く、無駄な能力とは言い切れないのだが。

 このデッキを組んだ時点では似たようなタフネスを参照してX体のトークンを生成してくれるカードは《砂漠の浄化》くらいしかなく、墓地に落とす必要があるし追放するくらいならこっちかな……という理由で《コロズダのギルド魔道士》を採用していた。
 現在ではトークンを出すことだけを考えるならほぼ上位互換の《アディポーズの子》の方が良いと思われる。
 立っていればインスタントタイミングで出せるという利点は《コロズダの魔道士》が持つ利点だが、これを立たせておくと当然警戒されるので、実用上はあまりその点を生かせない気がするし。

ロマンあふれる重いやつら

 この項ではまあまあ殴り合いのあるレベルにおいて活躍するデカブツたちを紹介する。効果が派手なので卓が盛り上がることだろう。

 《ロクソドンの生命詠み》はETBで自分のライフを自軍クリーチャーの総タフネス分にすることができる。純粋な回復ではなくその数値にするので総タフネスがライフよりも低い場合はライフを失うことになってしまう。
 しかしこのデッキには《地獄の樹》や《解放の樹》がいるため、自分のライフよりクリーチャーの総タフネスの方が高いという状況は簡単に作り出すことができる。
 特に《解放の樹》の場合、起動型能力で自分のライフを13にした後《ロクソドンの生命詠み》を出すと確実にライフ<総タフネスという状態になるのだ。
 ライフの値を総タフネスにする場合でも、増えれば回復した扱いになるので、ライフ40の状態で《解放の樹》起動→《ロクソドンの生命詠み》のETB解決となると27点ライフを得たことになる。このデッキには《薄暮薔薇の棘、ヴィト》のようなカードがあるため大きく回復するのは強い動きだ。
 6マナ払ってライフ分P/Tに修正を受ける能力もついているが正直重いのであまり起動することはないだろう。
 サクり台がいれば巨大になった《ロクソドンの生命詠み》をサクッて大量のライフを得られるが、やはり6マナは重い。

 《聳えるタイタン》はこの項目のカードの中で最もロマンあふれるカードだ。
 戦場に出るに際し、自軍クリーチャーの総タフネス分の+1/+1カウンターが乗った状態で戦場に出る。
 しつこいようだがこのデッキは高タフネスのクリーチャーを大量に入れているため、非常に相性が良い。タフネス5のクリーチャーが3体いるところにポンと出せば15/15の6マナとは思えない巨大なクリーチャーの登場だ。
 高タフネスのクリーチャーが戦場にいればいるほど強くなるので、当然2体の「樹」とも相性が良い。
 1体だけでも最低13/13が保証されている上にタフネスとライフを交換できていれば更に巨大になる可能性もある。これほど相性の良いカードがあるだろうか?
 さらに「樹」たちは防衛を持っているため《聳えるタイタン》の防衛持ちクリーチャーをサクることでターン終了時まですべてのクリーチャーがトランプルを持つ能力の起動コストにもなってくれる(逆に言うとこのデッキにはその2体しか防衛持ちがいないのだが)。
 単騎で1人くらいは殴り倒せるP/Tで出せることは珍しいが、2パン範囲には割となるので非常に強く、ロマンあふれるカードだ。

 《死の頂点、ネスロイ》はこのデッキの最終手段である。
 変容誘発能力によって自分の墓地からパワーの合計が10以下になるように好きな数のクリーチャーを戦場に戻す能力を持つ。
 このデッキのクリーチャーの大半はパワーが0か1なので理論上、10体超のクリーチャーを戻すことができる。とてもアドアドしい。一個上の《聳えるタイタン》も墓地ではパワー0なので手軽に戻せる(戦場に出る直前の総タフネスを参照するため、戦場に同時に戻る他のクリーチャーのタフネスは参照しない点に注意)。

 他に変容能力を持つカードがないため、変容を使えるのが1回である点と変容コストが7マナと重いが難点。特に変容元となるクリーチャーがいないと手札で抱え続けることになる。破壊不能を持つ《コルフェノールの若木》辺りが出せていると安定して変容できるだろう。
 パワーが5もあるため、よほどのことがない限り変容時は下にするのがおすすめ。接死と絆魂がついているため上が何であろうと戦闘に非常に強くなる。

インスタント&ソーサリー

 全部で12枚。《剣を鍬に》や《暗黒の儀式》、《内にいる獣》などこの色なら入るであろう汎用的な除去やサーチについての解説は省略する。

重厚デッキを作るならこれだけは入れたい2枚

 重厚デッキは、白に時折見られる、パワーが高いクリーチャーを破壊する全体除去カードで一方的に盤面を壊滅させるという手段を持つことが可能だ。
 《黄昏//払暁》の《黄昏》側はパワー3以上のクリーチャーをすべて破壊するが、このデッキのパワー3以上のクリーチャーは片手で数えて余るため、まず影響を受けない。
 そして《払暁》側ではパワー2以下のクリーチャーを墓地から回収することができる。パワー2以下のクリーチャーを大量に搭載したこのデッキではほぼすべての墓地に行ったクリーチャーを回収できるということだ。
 通常であればまず《黄昏》側に引っかかる《聳えるタイタン》も墓地では0/0であり、《払暁》で回収可能なので気軽にぶっ放そう。

 《強者鏖殺》は各プレイヤーのパワー合計を最大4に均す変則的な全体除去。通常のMTGであれば全員の打点が4以下になるのだが、重厚デッキの場合はパワーで打点を出さないので、それまでの打点を維持することができる……のだがパワー1とか2のクリーチャーもそれなりにいるので撃つタイミングによっては多少犠牲が出て打点が下がってしまうこともある。
 とはいえ、破壊ではなく生け贄なので破壊不能に対応しているのが《黄昏//払暁》との差別化点であり長所だろう。

 《黄昏//払暁》、《強者鏖殺》のどちらもパワーの小さいシステムクリーチャーの処理には向いていない点には注意したい。
 また低パワー高タフネスデッキ向けの除去としては《報いの波》、《強者破り》、《選択式サンバースト》、《水の辺村の合戦》などもあるので気分や環境に応じて除去を選ぶべし(全部入れても良いが)。
 個人的には1枚で2枚分の働きをする《黄昏//払暁》と破壊不能を無視できる《強者鏖殺》の2枚が入れておいて損はないと思っている。

パワー2以下という魔法の言葉

 《優雅な修復術》はこのデッキであれば基本的に好きな2体のクリーチャーを墓地から戻せるカードだ。
 パワーが2以下なら何でもいいので2枚の「樹」を戻したりできると5マナで8マナ分の働きをしてくれたりする。
 1枚ずつ出したは良いものの全体除去に巻き込まれて墓地に行ってしまったコンボパーツを纏めて戻すような使い道が主になるだろう。

基本は《会稽》側を使いたい

 《回生//会稽》はどちらもこのデッキと噛み合った1枚。
 このデッキのコンボパーツとなるクリーチャーはマナ総量3以下がほとんどなので《回生》で戻すことができ、《会稽》は自分のライフを2倍にして対戦相手のライフを半分にするので、《血なまぐさい結合》系カードがあれば1人を確殺できる。
 墓地から持ってくる手段はそれなりにあるので基本的には《会稽》で誰か1人を脱落させるために使いたいカード。

サーチ可能なクリーチャー追放除去

 《外身の交換》は3マナでクリーチャーを1体追放し、そのコントローラーに1/1の多相持ちのトークンを渡すという《剣を鍬に》の下位互換に近いカードだ。
 なぜそのようなカードを入れているのかというと、多相を持っているためツリーフォーク・カードをサーチできる《ツリーフォークの先触れ》で持ってこられるからである。3マナとはいえサーチできるのであれば追放除去としては及第点ではなかろうか。
 もっとも、《ツリーフォークの先触れ》は各種教示者と同様にライブラリトップに置くため、即座に除去したい相手には無力なのだが……。
 また、出てくるトークンも多相能力を持っているため、ドラゴン以外を除去する全体除去で生き残ったりスリヴァーと能力を共有したり、稀に妙な相互作用を起こす点にも注意したい。

統率者戦向けの根本原理

 《奇妙な根本原理》は墓地から名前の異なるパーマネントを望む枚数戻せる、統率者戦のために作られたかのようなカードだ。
 とはいえこれが撃てるようになるのはゲーム中盤以降だし、よほど全員で全体除去を撃ちまくるようなゲームでもないと数枚戻して終わりということになりがち。
 これがあるからパーマネントをどんどん展開して大丈夫だろという安心感の根拠としてデッキに入れている節がある。そういう時に限って引けない。

エンチャント&アーティファクト&プレインズウォーカー

 全部で19枚。マナファクトとドロー用のエンチャントと《血なまぐさい結合》、《極上の血》など汎用的なカードについては割愛。

2人対戦での重厚デッキはこれがないと始まらない

 《突撃陣形》は重厚デッキを作るのに最も必要なカードだ。
 しかし、統率者戦においては、統率者が重厚にする能力を持っているならば基本的にデッキに入れる意味は薄い。とはいえ、統率者税が重すぎるほど除去されたときなどに保険として入れている。
 一応、2つ目の効果で防衛を持つ各種「樹」を動かすことができたり、3マナを払って+0/+1する能力があるので完全に無駄というわけではない。

潜伏はイニ影の代表的なキーワード。みんな知ってるね

 《裏工作》は自軍クリーチャーに潜伏を持たせるエンチャント。
 潜伏とは、それを持っているクリーチャーのパワーより大きいクリーチャーにブロックされなくなる能力で、パワー0のクリーチャーであればパワー1以上のクリーチャーにブロックされなくなる。
 同系の重厚デッキでもないかぎり、パワー0のクリーチャーが統率者戦で採用されることは稀なので、これが戦場にある限り統率者である《包囲の塔、ドラン》はアンブロッカブルと言っても過言ではない。
 当然、このデッキの他のクリーチャーもパワーが低いため、1/1のようなシステムクリーチャー以外にブロックされにくくなり、攻撃を通すか、あるいはシステムクリーチャーを犠牲にするかという選択を迫れる。たまに接死持ちが立っててもじもじする。

大釜って名前についてるカード大体強いな……

 《死に至る大釜》は無限コンボで対戦相手を倒すためのパーツだ。
 基本的に大量にライフを得たあと、2番目の能力で対戦相手をLOさせる。
 1度でも使ってしまうとヤバさが露呈するので、確実に倒せるまでは、よほど守りが固いときか複数ターンかけて倒せそうなとき以外は起動しないように。
 手札を捨てて邪魔者トークンを出す能力はいらないカードが少ないこのデッキでは滅多に使わず、よほど手札が余っているときにしか起動しない。
 この能力を何度か起動できると対戦相手もこの能力をメインに使うんだなと油断してくれるので、可能なら捨てていきたいが……。
 4マナで墓地を追放して1枚ドローする能力はドローソースにもなる墓地対策として稀に機能するが、墓地1つ、というのが意外とくせもので思ったより安定して起動できない。墓地利用デッキに対してはそれなりに刺さる。
 裏面はクリーチャーと土地とPWしか回収できないので1番目の能力以上に使わないが、コンボパーツを拾ったら勝てる、というときが極稀にあるのでテキスト自体は覚えておきたい。

力線サイクルだと相当マイナーだと思う

 《活力の力線》は《神聖の力線》や《虚空の力線》と同じ力線サイクルの1枚。自軍クリーチャーに+0/+1の修正を与えると共に自分のクリーチャーが戦場に出るたびに1点のライフゲインを行う。
 タフネスのみが上昇するため、通常のデッキでは使いにくいが、重厚を活かしたこのデッキでは上述の《裏工作》による潜伏の恩恵を受けながら打点を上昇させることができる。
 無限コンボの項目で紹介した通り、クリーチャーが戦場に出るたびにライフを得る能力は《小走り樫》と《親切にもてなす者、木の鬚》を絡めた無限コンボのパーツとして機能するため、その点でも優秀。
 「+0/+1修整なんでこのデッキだと打点が上がるんですよね~」くらいの説明をしておけば、ただの全体強化か……と対戦相手の警戒心も下がるだろう。
 そしてなんだかんだ実質+1/+1としてP/Tが1上がるのは扱う数字の小さいMTGにおいては優秀な効果である。素のドランの必要な殴り回数が4回に減ったりするし。

もうちょっと軽くなりませんか

 《天使の合唱》は《セレズニアの声、トロスターニ》と同じく、自分が戦場にクリーチャーを出すたびにそのタフネス分のライフを得るエンチャント(正確にはトロスターニがこれを内蔵しているというのが正しいか)。
 役割としてはトロスターニの項目で説明したのと同様に、高タフネスのクリーチャーを出して大量にライフを得たり、《小走り樫》と《親切にもてなす者、木の鬚》を絡めた無限コンボに使う。
 トロスターニと異なりエンチャントなので触られにくく、安定して性能を発揮できるが、反面5マナと重い。トロスターニのダブル・ダブルシンボルも3色のこのデッキでは大概だが、こちらも相応に重いと感じる。
 《活力の力線》と比較して、1/1のトークンを大量に出す場合はどちらでも働き方は同じだが、タフネスの高いクリーチャーを1体出す場合はこちらに軍配が上がるため、両方採用してみた。

もっとこういうやつが欲しい

 《金屑ワームの鎧》は+0/+6の修正を与える装備品。
 タフネスのみに修正を与えるという点からリミテ用カードでしかなかったが、重厚がメカニズムとして成立したことにより、打点を6上昇させる装備品として扱われるようになった。
 誰に装備しても6打点も上昇すれば相当なサイズとなるが、統率者である《包囲の塔、ドラン》に装備すると0/11というタフネスお化けになり、自身の重厚によって2パンで統率者ダメージの条件を満たす。
 ドラン自体に回避能力はないが、上述の《裏工作》で潜伏を持っていればほぼ誰もブロックできないのでとても強い(ヘイトも爆上がりするが)。
 また、《ストーンスキン》と異なり装備品なので装備先のクリーチャーが除去されても再利用できるのも助かる。もちろん《ストーンスキン》の+0/+10修整も魅力的だが、除去されたときの損失および心理的影響が大きいと個人的には思う。
 両方入れて0/21のワンパンマンを作り出すのも一興ではあるが。
 昔、スターライトマナバーンという漫画があって主人公のコントロールするクリーチャーにこれがついていてタフネスよりパワー上げてくれよというセリフを吐いていて……。

何度も言うけど同サイクルのドビンやキオーラとの忠誠度消費の差がおかしいだろ

 《太陽の義士、ファートリ》はジェネリック《突撃陣形》である。
 《突撃陣形》と異なりPWなので殴られてしまうという明確な弱点と、PWというだけで警戒されるという悲しい業を背負っているが、基本的には立たせて自軍を重厚にするという仕事をさせるだけだ。
 2回だけ使える忠誠度能力は、自軍でもっとも高いタフネスを参照してその分のライフを得られるというもの。
 ライフが得られるタイミングが《天使の合唱》や《永代巡礼者、アイリ》とずれているので、これらが並んでいると戦場に出したクリーチャーのタフネスの3倍の数値のライフが得られる。
 《血なまぐさい結合》系のカードと高タフネスのカードが並んでいるという状況でなら、この能力によって対戦相手のライフを大きく削ることができるだろう。
 忠誠度の消費量せめて2になってくれ。

土地

 全部で33枚。普通のデッキには入らないだろう土地のみを紹介する。
 フェッチ、ショック、トライオーム、占術土地などのとりあえず入れとけ枠は割愛。他には黒を含む多色デッキなので沼をコントロールしていると多色土地になる汚れた土地サイクルが入っている。《陰謀団の貴重品室》が入っているが、大量にマナを出したところで特に吐き出す先がないので別の土地と入れ替えたほうが良いかもしれない。

ジェネリック《Diamond Valley》

 《嘆きの井戸、未練》は3マナを払ってクリーチャーをサクることでタフネス分のライフを得られる土地。自身のタップを含めると4マナ相当になるので《永代巡礼者、アイリ》を手札から出してサクる方が総コストが軽いのは内緒。
 土地なので干渉されにくく、ライフを得るのに肉が必要なので破壊対象にもなりにくいというのはアイリと比較した際の明確な利点。
 マナが出る以外は《Diamond Valley》(2023年11月現在Wisdom Guild最安80000円)の下位互換なので可能ならそっちと入れ替えるか併用しよう。
 突然10万円くらい降ってこねえかなあ~。

ツリーフォークを入れてる理由

 《つぶやき林》は戦場に出るに際し、ツリーフォーク・カードを公開することでアンタップインされる3色土地。クリーチャーの項目でわざわざツリーフォークだけ別枠だったのはこれのためだ(なお確率的には13枚あれば2ターン目までに引ける可能性が高いらしく、安定してアンタップインさせたければツリーフォークは増やした方が良い)。
 特定のカードをチラ見せしてアンタップイン自体は珍しいものではないが、《つぶやき林》自体が森であるのに白と黒が出るというやや特殊なデザインをしている。
 3色のデッキのマナ基盤を安定させるのに一役買っているが、手札にツリーフォークがないとタップインなのと、白と黒を出すにはダメージを受ける必要がある点には注意。
 手札に《小走り樫》のような露骨なコンボパーツしかないときはあえて見せずにタップインすることを選ぶのも手。
 小技としては《外身の交換》も多相能力でツリーフォーク・カードとして扱えるため《つぶやき林》のアンタップインに寄与することができる。

デッキによっては使われてそうなやつ

 《大天使の霊堂》は自軍全体に接死と絆魂を持たせる土地。
 《薄暮薔薇の棘、ヴィト》の絆魂を持たせる起動型能力と同じコストで接死も付いてくる。お得!
 散々述べてきたがライフゲインとこのデッキは非常に相性が良いので入っている。
 《血なまぐさい結合》系のライフゲインに反応するカードはもちろん、戦闘前に「いいんですか? 起動しますよ? 《大天使の霊堂》」などと政治にも使えるので楽しい1枚。

終わりに

 《包囲の塔、ドラン》を初めて見たのはローウィン当時だった。
 当時はスリヴァーデッキを握っており、3マナ実質5/5なんて越えられないよ~と泣き言を言っていたのを覚えている(詰め込んだスリヴァーを並べるだけのデッキで除去も碌に入っていなかったため当然であるが)。
 その後、紆余曲折あって《包囲の塔、ドラン》の持つ重厚――パワーではなくタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振る――というメカニズムにハマり、ついにその原点であるドランでデッキを作ることができた。

 《包囲の塔、アルカデス》と異なり防衛を持たない低パワー高タフネスのクリーチャーをデッキに積めるのだからそこまで迷うこともないだろうと当初は思っていたが、実際には思っていたよりも選択肢が少なかった。
 防衛持ちと異なり、明確にタフネスを高くする理由が見当たらないためか、意外と低パワー高タフネスのクリーチャーは多くなく、また、性能が良くない。
 加えて防衛持ちと異なりシナジーのあるメカニズムが碌にないというのも辛い。《包囲の塔、ドラン》があくまで重厚の祖というだけで、ツリーフォークという種族自体はパワーも高いクリーチャーが多く、重厚向けではないということがデッキを組んでいて分かった。
 《ラサード・イン・バシール》の場合は《怒り狂う島嶼、キャリクス》のようなわかりやすいカードがあったが、《包囲の塔、ドラン》はそういったものが少ない(このデッキのロマン枠も言うほど重厚そのものと相性が良いわけではない)。
 それでもどうにかデッキを形にできたので、ひとまずは満足している。

 この記事を少しづつ書き進めている間に《床岩の亀》という新顔が出てきてしまった。
 ここで簡易的な評価をしておくと、統率者戦のカードとしては非常に期待ができる。
 単色で4マナ0/6という時点で《包囲の塔、ドラン》以来のマナレシオが良いクリーチャー(なんと16年ぶり)であるし、その上、自ターンの間、自軍に呪禁を付与するのは強力だ。
 スタンダードなどの2人対戦のフォーマットで見ると4マナというのは重いが、統率者戦ならば4マナはまだ軽い部類である。
 あくまで除去耐性をもたらすだけなので、勝てる動きにはつながりづらいが、クリーチャーを利用したコンボを阻害されにくくなるのは良いことだ。

 そんなWotCから微妙にテコ入れされ、まだ忘れ去られていないメカニズムである重厚。
 使って見るとタフネスで殴るという普段のMTGとは違った体験、あるいはタフネスが高いという評価を下す普段とは異なる視点を持てて楽しいので、是非組んでみてほしい。


 以下はこのデッキに詰め込みたかったけど詰め込めなかったコンボや、入れられなかった相性の良さそうなカードを書く。
 興味のある方だけ見てほしい。

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