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美術館でひまわりを観て

先日、新宿の美術館を訪れました。特に目的があったわけではありませんが、日常の喧騒から少し離れて、静かな空間でアートと向き合いたいと思ったのです。美術館の中で私は、単なる鑑賞以上の体験をすることができました。

まず、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの展覧会が開催されていました。彼の作品には、パリのモンマルトル地区での生活が鮮やかに描かれています。展覧会の初期には、鉛筆で下書きしたようなシンプルな絵が展示されており、何気なく「自分でも描けそうだな」と感じました。しかし、その後に続く版画作品を見て、その考えが一変しました。作品の細部に見られる繊細な点描や、紙の余白を巧みに活かしたスムーズなカーブ。これらは簡単に見えて、実は高度な技術が必要なものだと気づかされたのです。

さらに、展覧会の最後にはゴッホの「ひまわり」が展示されていました。この作品は誰もが知る名作ですが、正直なところ、私は「なぜこの絵がこんなにも評価されているのだろうか」と疑問に思いました。その疑問を抱いたまま、私は周りの鑑賞者にも目を向けることにしました。

すると、写真撮影が許可されていた「ひまわり」の前で、二種類の人々がいることに気づきました。一つは、じっくりと作品を見てから写真を撮る人々。もう一つは、特に深く観ることもなく、ただ写真だけを撮ってその場を去る人々。この違いを観察しながら、私は写真を撮る行為の背後にある人間の心理について考えを巡らせました。

人々が写真を撮る理由を突き詰めて考えると、それは「死への恐れ」から来ているのではないかと思いました。人は死ぬことを恐れ、その恐怖から時間という不可逆なものに抵抗しようとするのです。写真を撮ることで、いつでもその瞬間に戻れるという安心感を得ようとしているのかもしれません。しかし、同時にそれは「今この瞬間を生きる」という最も大切なことを犠牲にしてしまっているのではないでしょうか。

美術館を後にする頃には、アートが私に与えてくれた新たな発見と深い考察に感謝していました。美術館という空間は、単なるアートの鑑賞だけでなく、自分自身と向き合うための時間と場所を提供してくれるのだと改めて感じました。

この体験を通じて、私は「今この瞬間を生きる」ことの大切さを再認識しました。そして、それを忘れないためにも、日々の生活の中でアートや他のインスピレーションを大切にしていきたいと思います。

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