長谷川慎平連載エッセイ『ほのぼのエッセイ』

ミュージシャン長谷川慎平の昔の記憶を辿って綴られる、ほのぼの、しみじみエッセイです。※毎週月曜日更新予定

長谷川慎平連載エッセイ『ほのぼのエッセイ』

ミュージシャン長谷川慎平の昔の記憶を辿って綴られる、ほのぼの、しみじみエッセイです。※毎週月曜日更新予定

最近の記事

ほのぼのエッセイ第19回シェアハウスについて

25歳に実家を出た。仕事でー、とか彼女ができてー、とかではなく、そろそろ潮時だと思ったのだ。溺愛していた猫もいなくなった。休みの日にばあちゃんと韓流ドラマを一緒にみて、スーパーに車で送って迎えてをするのもずっとこのままなんかなと思うと限界がきていた。そろそろ、出たいなと思ったのだ。  友達に「家を出たい」と相談すると、最近部屋が空いたシェアハウスがあると情報をもらった。どうも、次の住居者が決まるまで引っ越しはできない制度らしい。内見、というか別に仲介業者もいない、住む予定の

    • ほのぼのエッセイ第18回 ピアソンくんについて

      ピアソンくんは小5の時に転校してきた。ニュージーランド人と日本人のハーフだった。肌が白くて、背が高かった。僕も、成長が早くて165センチくらいあったが、それぐらいはあった。最初は、なんかいじめられてた。それまで、それとなくいじめの対象っぽくなっていた僕だったが、小5になりニキビがぶつぶつにできはじめてから、揶揄するいじめが起こった。それとなくだったものが、容姿に対する具体的なことに変わっていったのだ。  ピアソンくんも、クラスに馴染むためもあったろうが、僕をいじめた。よーわ

      • ほのぼのエッセイ第17回 ゴジラについて

        ホラーは嫌いで、怖いものは嫌いだった。けど、怖いものが嫌いというのは、怖いものを逆に意識しているということで、怖いものみたさという感覚と不可分であった。と思う。  ゴジラは怖かった。でも、それがよかった。  幼稚園の頃から、特撮ものはずっと巨大生物系を見ていた。仮面ライダー、戦隊モノ(戦隊モノも巨大ロボは出てきますが)はあまり興味がなく、ずっとウルトラマンを見ていた。  巨大生物は、どこか自分にはわかりえない存在である。別の価値観で生きているような気がする。不気味な怖さ

        • ほのぼのエッセイ第16回 レコードプレイヤーについて

           レコードというのに興味が初めて湧いたのは、小学校5年の頃。当時僕は、ジャパレゲを愛好していた。ケツメイシ、湘南乃風、三木道三、ET-KING、ファンキーモンキーベイビーズなどだ。うしろでキュルキュルとスクラッチをしているDJ、あれはどうもレコードを手で回した時に出る音らしいと聞いて、僕もできるようになりたいと思った。が、家にはラジカセしかなかった。  当時の親友ピアソンくん(ピアソンくんもヒップホップやラップが好きだった。僕よりももっとワルよりのものが好きだったけど)と、

           ほのぼのエッセイ第15回 ホラーについて

          昔からおばけとかが怖い。今でも、夜に暗闇が溜まっているところをみると、怖いなと思ってしまう。  大学ごろから、サブカルっぽい表象に触れてきた僕なので、ホラーとかそういうものを見なければと無理してたくさん見た。イカれた友達みたいに、ヒャッハァこの恐怖に震える感じがたまんねぇぜと言いたかった。  でも、一向に苦手は改善されず、『エクソシスト』とか『It』とかも何回も一時停止しながら見た。(腕食われるとことか、階段を逆さ四足歩行で降りてくるとことか)その度、僕は「怖いんじゃない

           ほのぼのエッセイ第15回 ホラーについて

          ほのぼのエッセイ第14回 たけのこについて

           僕の生まれである京都の大原野地域は、たけのこが名産であった。街のところどころに竹藪が鬱蒼としていた。その真ん中に溜池やクヌギの大木などがあり、魚釣りやカブトムシをとりに子供のころはよくでかけた。「たけにょん」というゆるキャラもいた。竹に目鼻口をそのままつけたみたいなキャラクターだった。地域おこしに行政が作ったのだ。  くまもんとかひこにゃんみたいな丸々とした可愛げはあまりなかった。頭にはトゲが3本くらい生えていて(多分、竹の葉をイメージしたものと思われる)かくかくしたゆる

          ほのぼのエッセイ第14回 たけのこについて

          ほのぼのエッセイ第13回 車ってさぁ

            下層中産階級をAIで作ったら、たぶんうちの家族になるんじゃないかと思う。それぐらい平々凡々とした家庭で、祖母はめちゃくちゃ保守的で「もっと男らしくしろ」とかすぐ言ってくるし、おかんはハルキストをこじらせてるし、おとんは陰謀論が好きなので「NHKなんかみるな」とすぐ言ってくるし、兄貴はイラついたらすぐ暴力を奮ってくるし、次男の僕は甘ったれた他力本願のくそガキだった。  そんな家庭で社会でバコバコのしあがっていき、強者となり金を儲けに儲け、憧れのマイホーム、憧れのハワイ、憧

          ほのぼのエッセイ第13回 車ってさぁ

          ほのぼのエッセイ第12回 飼い猫の失踪事件について

           京都にいたとき猫を飼っていた。小2の頃、兄貴と野球をしに近くの公園に行ったら、段ボールに漫画みたいに捨てられていた。3匹いた。黒猫が2匹とサバ猫が1匹。黒猫2匹は、河内くんという市営住宅に住む、動物をめっちゃ飼ってる鳩とかも団地の中で飼ってる中々奇特なやつが持って帰った。兄貴は、サバ猫を選んだ。僕は横でことの顛末をぼーっと見届けていた。  帰ってから、おかんに猫を拾ったことを電話で報告すると、案の定ブチギレた。団地はペット禁止だの、誰が世話すんねんだの言われた。でも、おか

          ほのぼのエッセイ第12回 飼い猫の失踪事件について

          ほのぼのエッセイ第11回 ブックオフとおかん

          生まれ育ったのが京都の洛西ニュータウンというところだった。洛西というのは、なかなか安直な名前である。洛というのは漢字として都という意味があり(中国の洛陽とか)、つまり古都である京都の西の方にあるから洛西。そもそも、昭和40年ぐらいまでは沓掛とか大原野とかそういう名前で呼ばれていた。沓掛は処刑場的な意味合い、大原野はもうそのままでっかい原っぱで田んぼや畑が広大に広がっていたからである。そういった昔の地名からもわかるように、明らかに京都の端っこであり、大原野神社などの寺社仏閣も左

          ほのぼのエッセイ第11回 ブックオフとおかん

          ほのぼのエッセイ第10回 ドンキーコング64について

          幼稚園年長のころ、ニンテンドー64がうちに来た。兄の誕生日プレゼントかなんかだったと思う。貧乏家庭で、ブックオフで買った中古のゲームボーイのポケモン緑版(当時はもう既に金銀、クリスタルが発売され僕の周りはみんなゲームボーイカラーを持っていた)をずっとやっていた僕からするととても嬉しかった。中古のポケモンは、基本的にセーブデータが前所有者のものが引き継がれており、ケンタとかユウスケみたいな名前のやつが電源をつけるといて、最後にしかたどり着けない隠しスポットハナダのどうくつではじ

          ほのぼのエッセイ第10回 ドンキーコング64について

          ほのぼのエッセイ第9回 四万十川について

           8月12~15日の間で、高知県に行ってきた。祖母の実家が高知の大野見(西側のだいぶ奥まったところにある高原地域)にあり、小学生のころは毎盆そこに家族で帰っていた。家のすぐ右前には四万十川が流れており、子どもの頃は浮き輪やヘルパーをつけてずっと泳いでいたのだ。文字通り一日中泳いでも飽きなかった。“日本最後の清流“という大仰な二つ名がつけられてる通りの大自然だった。子どもの頃は延々と遊べる体力もあいまり、どこまでも享受することができた。  「まがり」という場所がある。そこは、

          ほのぼのエッセイ第9回 四万十川について

          ほのぼのエッセイ第8回 バスケットボールについて

           高校まで、野球をやっていた。小学校で1年間、高校でも1年間やめる時があっても、一応高校球児の最後まで10年間くらいやってきた。就職して社会人になってから、「高校まで野球やってたんです」というと、思いのほか受けがよかったりする。特におじさん連中には。詳細を聞かれずとも「そうか、じゃあ結構本気でがんばったんだね」と言われる。僕の高校は、万年一回戦負けの弱小校なのにだ。学歴でいう、大卒に近いかもしれない。体育会系の人にとって、元高校球児というのは、それなりのブランドなのだ。  

          ほのぼのエッセイ第8回 バスケットボールについて

          ほのぼのエッセイ第7回 広瀬先生について

           小6の広瀬先生が今までの先生で一番好きだ、印象に残っているというのはちょっと恥ずかしい。なぜならどこにでもいる先生で、別に多分世間一般的には、おもしろくもすごくもないからだ。ほっそりしていて背が低くて、きのこみたいな茶髪のマッシュヘアだった。生徒から、けっこう舐められていた。  今まで出会ってきた“先生”という職業の中で、名先生になりたそうな人は何人も見てきた。部活動を強くしたり、学力を上げたり、ヤンキーを更生させたり、なんか名言を残したり…。僕はそういう先生は正直苦手だっ

          ほのぼのエッセイ第7回 広瀬先生について

          ほのぼのエッセイ第6回 鈴木くんについて

          ※暴力的な描写があるのでご注意ください。 僕は小学校のころ体がでかかった。身長骨格が並の小学生より数段に大きかった。成長期が早く身長が大きくてもすらっとしてる奴はいいのだが、僕は横もでかかった。お腹はぽこんと出ぱっており、姿勢が悪く、肩が丸まり、顔が前に出てる感じで、後ろ姿はまるでゴリラのようであり、顔も目がデカくて鼻がぺたっとしててゴリラっぽく、同級生からはもちろんゴリラと気づいたら呼ばれており、野球でエラーしたり発表会でヘマなんかすると、「おいゴリラ、ちゃんとやれ」と怒

          ほのぼのエッセイ第6回 鈴木くんについて

          ほのぼのエッセイ第5回 うんこについて②

          またこいつはうんこの話か、懲りない野郎だ、実はこいつはスカトロ野郎の変態異常者で、毎日うんこをしてはそれを試験瓶でホルマリン漬けにして、形や軟度を鑑賞しているようないかれたうんこ博士なのではないか?と読者は思うかも知れない。しかし、第1回で述べた通り、こと我が人生においては、うんことは決して存在を無視できない宿命的な存在であり、なおかつ難敵でありながら大切なことはなんなのかを教えてくれる大先輩的存在でもある。そんなうんこについて、こんな過去を曝け出すようなエッセイの連載を始め

          ほのぼのエッセイ第5回 うんこについて②

          ほのぼのエッセイ第4回 鯉について

           何かと縁がある動物というのがいる。僕は猫が好きなのだが、それはおかんの本棚に猫本がたくさんあったからで、いやでも猫は素敵な存在なのだとサブリミナル的に洗脳された。家族全体にそれとなく猫が好きな雰囲気があった。うちの団地の周りは猫が多かった。特に、今の実家の団地は1階なので、野良猫がよく顔を出す。愛猫がまだ存命のころは、雌だったのでよく雄猫がちらと顔を出しに来た。なんかええ感じの娘がおると聞いたのですが、お取次願えないですか?といった感じで。うちの猫は、自分を多分人間だと信じ

          ほのぼのエッセイ第4回 鯉について