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ルックバックを見て、漫画家になりたかった小中高時代が急激にフラッシュバックした

小学校の頃からの夢は漫画家だった。

「エスちゃんは絵が上手だね」
そう言われて有頂天になっていた。
ルックバックの藤野ちゃんのように自慢げだった。

でも、絵の上手い奴なんて、この世に五万といる。
写生会で絵を描くと、上手いやつの絵を見ることになる。

言われる。
「エスより、⚪︎⚪︎の方がうまいやん」って。

中学生になっても絵を描いていた。
投稿した。落選した。いつも何の賞にもかすりもしなかった。

高校生になっても絵を描いていた。
同人誌を描いていた。

奈良の高校は学区制ではなく、奈良県内に住民票があれば好きな学校に通えた。だから高校まで1時間半かけて来る子とかいた。

そんな中に、「しばた」はいた。

高校のときに出会った才能

しばたは大人っぽい絵を描く子で、超巨乳。
隣のクラスで、何をきっかけか忘れたけど仲良くなった。

しばたは授業はろくに聞いてないし、体育は体調悪いと言ってサボるし、遠足だって原稿があると言ってサボるような奴だった。
そして周りから好かれていた。

しばたは「エスの絵は繊細だなぁ。わしの絵と正反対や」と言ってくれた。
わたしから言わせたら、しばたの絵の方が繊細だった。

しばたに褒められると嬉しかった。
卒業式の日に藤野ちゃんが京本に褒められたとき、足取り軽く家に帰ったあの感じ、すごく共感する。

しばたはゲームが好きで、漫画アニメ好きのわたしとジャンルは被らないものの、一緒に金沢印刷で便箋作ったりした。

しばたは私立の美大に行った。
わたしは国公立の美大に入れる才能もないし努力もできないので、公立の大学に行った。(金銭面の都合で私立は無理だった)

大学生のときもしばたとの付き合いは続いていた。

ある日電話がかかってきて「エス、暇か?」と言われたので「バイト終わった21時から次の日のバイトまで暇やで」と答えた。要するに寝る時間なんだけど。

そうしたら「よし!終わったらうち来い!」と言われた。
彼女の家で、徹夜で原稿をやった。

しばたのママが「エス子〜〜〜よう来たな!ピザ食え!」と夜食を出してくれた。(しばたは陰キャだったが、ママは陽キャだった)

彼女の繊細な原稿に「エスは繊細なことが得意やから、ツヤベタと集中線頼むわ」「背景にめっちゃ花飛ばしてくれ」とか言われたのでやっていた。たまにコピー用紙に落書きしていたら、そのまま彼女の原稿に採用になった。

しばたは壁サーになっていた

壁サーとは。

同人誌即売会などにおいて大きな会場の壁際に配置されるサークルのこと、またほとんどの場合超大手のサークルを意味する語。壁際は行列ができても他のサークルの邪魔になりにくい、在庫を置くスペースが多く確保できるなどの利点がある。従ってイベントの主催者により超大手のサークルが壁際に配置されることが多い。

日本語表現辞典より 

知っている奴がビッグネーム。
確か商業出版にもたまに描いていたように思う。
壁サーじゃなくてもお誕生日席にはいた。

わたしは相変わらず弱小サークルで、同人活動は大学生で辞めた。
そこからしばらくは漫画やアニメからも遠ざかった。

社会人になり、しばたと疎遠になってからもたまに電話をしてきて「エス、明日暇か?」「まぁ暇やけど」「ほなインテックスの売り子してくれ」(大阪のインテックスで同人誌即売会がある)と言われてよく出陣した。

「お前、他にも頼れる奴おるやろ」と言ったら「列ができたとき、横のサークルに迷惑がかからないように制することができて、金の計算を間違わずに、しかも愛想良く対応できるのお前が最適や」と言われた。

(大体1つの机に2つのサークルがあるため、片方のサークルに行列や塊ができると左右のサークルの迷惑になる)

しばたに認められるのは嬉しかった。
しばたから売り子代をもらい、「お前、ソフトクリームでも食べてこい!」と言われたので1月のインテックスでソフトクリームを食べた。

今は何しているか知らないけど

もう10年以上連絡取ってないし、今も描いているか知らない。

売れっ子のしばたがうらやましかった。
絵の上手いしばたがうらやましかった。

そんなしばたは、いつも変わらずわたしに接してくれた。

まだPhotoshopとかが一般人が手の出せない価格の頃、しばたと西吉という友だちと3人で合同誌を出した。表紙はしばたが画像加工してくれた。

(25年ちかく前の話。当時はパソコンで加工した表紙は印刷会社に依頼を出すしかなかったので、弱小サークルはそんな加工費を出せず、大手のみが手を出せる代物だった。自分で加工できるのが走りだったときにしばたは自分で加工していた)

しばたは「エスは繊細な色使いだけど、印刷出ないからな。あとお前薄く色塗るくせあるから、めちゃくちゃ濃く塗ってくれ。そうしないと加工できん」と言って、わたしがカラーインクで塗った表紙をスキャンして、しばたは加工してくれた。

自分の絵がすっごく上手くなった錯覚をした。
嬉しかった。

あのとき出会ったからこうなった、という「出会い」はある

ルックバックの藤野や京本のように努力をしていないので、絵は相変わらず上達していない。

でも、描いていて良かったと思う。
そんなに描かないくせに、クリスタは継続課金しているし、Wacomのタブレットも持ってるw

2018年かな、冬コミにも参加した。
去年の冬にも参加したけど、今年は参加せず。
また、描きたくなったら描くと思う。

プロ野球マスコットサークルで参加していた
イラストは阪急ブレーブスのマスコットのブレービー
聖伝の阿修羅
Wacomさんで描いているだけで上手くなった錯覚ができる

ルックバック、映画館では泣かなかったけど、アマプラで見たら泣いた。


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