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お前知ってるか!猫は1歳くらいの知能しかねぇんだ!by父親

うちの父親はなかなか愉快だ。


ある日、実家に帰ると父親に急に「⚪︎ね」と言われた

「父ちゃん、何があったか1から話してくれ」と言った。

  • 年金がどんどん目減りする

  • 独身女性だし、もらえる金額が少なくなる

  • あまり長生きすると大変だと新聞で読んだ

  • だからお前はさっさと⚪︎んだほうが良いぞ

という内容が一言に要約されたらしい。

こんな感じで父は話が飛ぶ。

ちなみに早稲田出身で頭は良いし、仕事もめちゃできるし、会社では上に媚ない割には出世しまくった方だ。

ただ、話が飛ぶ。

昔、とある無差別殺傷事件があった。
父はその現場の近くにいた。

事件が起きる数分前、父は本来なら事件が起きた方に向かった。
ただそのとき、「ちょっと寄っていこうかな」と思って知り合いの店に向かった。

そのおかげで父は生きているが、本来なら被害に遭ったかもしれないと思ったらしい。そこで電話をしてきた。

家の留守電に入っていた。

父は死んだ

母と留守電を聞いた。

父の声で入っている。

わたしは思った。
「あ、じいちゃん亡くなったのか。(父の父だし)」

そのあと、父からの電話で聞いた。
事件の近くにいたこと、本来なら事件の真っ只中にいたこと、命の危機だったこと。

それが全部ひっくるめて要約すると「父は死んだ」になったらしい。

うちの父ちゃんの話、理解が難しいな、と思った。
母も不思議な顔をしていた。

ちなみに我が家では、母が父の文句を言うときは
「すみません、エス子の父が母であるあなたに迷惑をかけて」
と謝るようにしている。

すると母は言う。
「そうよ!エス子の父が、エス子の母である私を困らせるのよ!」
そう言って笑う。

団塊世代である父は、いろいろな理不尽に耐えていた。
母もいろいろ耐えたであろう。

お前が猫の毛を持ってきてる!と父は母に怒った

我が家には、猫がいた。
飼い猫→野良猫→我が家にやってきた猫。

散らかっている実家。右下にいるのは父

わたしは昔から猫が好きで、いつか一緒に暮らしたいと思っていた。
そんなときに「れい」に出会った。

れいはもう死んでしまったけど、両親を虹の橋で待ってくれている。わたしのことも待っていて欲しいけど。

れいと暮らし始めた当時、父は東京にいた。
もう60歳を超え、父の頭は黒髪よりも白髪の方が目立っていた。

そんな父が母に言った。

「お前が奈良で猫を飼っているから!家に猫の毛が落ちているじゃないか!!」

母は言った。

「あら〜〜すみませんね!(心の声:あなたの白髪ですけどね)」

64歳になった父は、仕事を辞め奈良に帰ってきて初めて猫と対面する。

そして気づく。
東京の家に落ちていた毛、あれは猫の毛じゃない。
俺の白髪だ。

そして父は母に謝った。
父のすごいところは、謝れるところ。

それ以前に、人間の毛なんだから気づいて欲しいのだが。

お前知ってるか!猫は1歳くらいの知能しかねぇんだ!

団塊世代の父は、猫=れいを何度も叱った。

「どうして分かんねぇんだ!」
「にゃーん」

またやっとるで、飽きひんなぁ、そう思っていたら、ある日父に言われた。

「お前知ってるか!猫は1歳くらいの知能しかねぇんだ!」

手には猫の本があった。
どうも近所の本屋で猫の本を買ってきたらしい。

父にとって、奈良の家に帰ったら、猫がいた現実があった。
しかも猫に人間の言葉が通じない。

だから父は歩み寄ろうとした。
そのために本を読んだ。

猫は1歳くらいの知能しかないから、言葉が理解できなくても仕方ないじゃないか!と父の中で折り合いがついた。

(調べたら諸説あるらしい。2歳と言うのもある。ひょっとしたら父も2歳と言ってたかもしれんが、わたしの記憶は1歳となっている)

良い傾向だと思った。
団塊世代、仕事一辺倒、仕事を辞めたら抜け殻になるんじゃないかと心配していた。

伸び伸びれいちゃん
青い目
父の部屋のベランダの椅子はれいのもの

父は自分の部屋のベランダで椅子に座り、くつろぐのが好きだった。

ある日、椅子が2脚になっていた。

「れいが座るから」

父がいつも座る椅子に、れいが座っていたらしい。
父はそれを「気持ちよさそうだなぁ」と言って許した。

それから父が椅子に座っていると、座りたいれいは「にゃー」と言って父に催促をした。
父は「お、お前座るか!」と言って譲った。

だから父は自分用に椅子を買ったらしい。

れいもだいぶ良い年齢になっていたので、年寄り二人がベランダでくつろぐ姿を見るのはわたしも好きだった。(れいはオス猫)

分からないものを分かろうとする

進撃の巨人の6巻で、ハンジも言ってた。
「わからないことがあったらわかればいい…」って。

れいが究極どう思っていたかなんて分からない。
でも、分かろうとすることはできる。

ただ、分からなくても良い。
だって、相手がどう思っていたかなんて分からないから。

100%理解することは無理。
でも理解することはできる。

れいが死んで、もうすぐ3年。
その間、我が家(実家)に猫はいない。

両親も歳なので、新しい子は迎えられないらしい。

でも去年の6月に帰省すると、地域猫がいるのだと伝えられた。

聞いたら、猫が居着いたので自治会で話し合って、さくら猫として地域で見守ることにしたらしい。

もちろん反対もあったと思うんだけど、しっかり話し合って決めたのだとか。我が実家の自治会のこういうところ、好き。

れいの月命日に、ご飯を買って両親はお墓に会いに行き、そのあとご飯は地域猫に渡っているらしい。

地域猫は、父と母と、うちの自治会のひそかな癒し。


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