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AI時代に必要とされる問題を作る能力

生成系AIが次々と生まれるこの時代、いったいどんな能力が必要とされるのでしょうか?

私が高校生だった十数年前は受験には記憶力が必要でした。

文系教科なら単語や構文、理系教科なら公式や問題の解法をある程度暗記していないと、行きたい大学に行けないという時代でした。最近ではAO入試も一般的になり少しは変わってきたかもしれませんが、変わらないところもあるでしょう。

社会人にもなれば、暗記などしなくてもググれば一発で解決します。インターネットが一般に普及し約20年ぐらいが経ち、暗記仕事はテクノロジーに任せるようになりましたね。昔は紙で泥臭くやっていたホワイトカラーの事務仕事もIT技術の普及によりデジタル化が進み、少しずつ問題を解決する”本当の意味”での知的労働に変わってきました。

しかし、近年ChatGPTやMidjourneyをはじめとする生成系AIが次々と誕生し、ホワイトカラーの仕事を脅かすとも言われています。生成系AIの力を使えば、問題の解決策を教えてくれるからです。わざわざ高い人件費を払って人間があれこれ悩む必要はなくなったのかもしれません。

そうするとホワイトカラーの仕事は全て置き換えられてしまうのでしょうか?これからの知的労働者の仕事としてはどんなスキルが求められるのでしょうか?

今回はそんなことに関して実例も含めて考えてみたいと思います。

課題を見つける

本当にホワイトカラーの仕事は生成系AIに奪われてしまうのでしょうか?

私はそうは思いません。

いくらChatGPTが難しい問題を解決策を与えてくれるとは言え、仕事の課題まで見つけることはできません。確かにAIは人間よりも多くのことを知っており(充実したデータベースにアクセスでき)、人間よりも論理的に解を導くことができます。

しかし、いくらAIであってもビジネスや研究の課題を正確に設定することはできないでしょう。なぜなら、AIの持っているデータベースは不完全だからです。

製造業の担当者があるビジネスの売上向上の課題をChatGPTに渡せば、論理的に一般的な課題とその解決方法を上げてくれます。

それは、担当者にとって大変価値ある助けになりますが、それだけでは何も解決しないでしょう。なぜなら、ビジネスの課題というのは一般的な社会的な要因や技術的な要因だけでなく、顧客のニーズや社会情勢、社内政治やステークホルダーの利害関係等、AIが知らない課題がたくさん隠れているからです。それらを総合して解決するためには、やはり人間が課題を明確にしていく必要があるでしょう。

また、この世に存在しない新しいビジネスを始めるということはAIにはできません。なぜならAIは過去に蓄積されたデータしか使えないからです。

まだ誰もやったことがないことはいくら優秀なAIでも解決できないのです。そのため、「課題を見つける」ということは、今後も人間の仕事として残り続けるのではないかと思います。逆に、AIでも見つけることができるような課題は、人間には求められていないというわけですね。もっと高度で複雑な課題設定をできる能力が必要になってきます。

そうはいっても、生成系AIの破壊力は尋常ではありません。ここからは、生成系AIを最大限利用する方法とそれに伴い身に着けるべきスキルについて考えていこうと思います。


問題はAIが解いてくれる

上述の通り、これまで明らかになっていなかった隠れた課題を見つけることは人間の仕事として残ると考えますが、その課題を解くことはAIでも可能かもしれません。

例えば、最近私がAIに解いてもらった問題を紹介しましょう。
社会人にとって悩みの種となるのが高額な社会保険料です。
特に4月から6月の給料が高いほど、年間の社会保険料が高くなってしまいます。

このとき最も簡単な解は残業をおさえて、給料を減らすことです。そんなことはAIに聞かなくてもわかります。しかし、世の中そんなに甘くはありません。残業無しで帰れるような職場でもないですし、繁忙期もあります。社内的なルールととして、残業来てもいろいろです。そういった、自分を取り巻くさまざまな状況を全てAIに教え込んでやると、自ずとAIは最適な働き方(残業時間)を導いてくれます。

これは身近な問題でしたが、全て条件が明らかになっているビジネスモデルであれば、その条件を全てAIに教えてやれば、最適な解を自動で導いてくれます。もはや私たち人間があれこれ悩む必要はないのです。

そうはいってもAIに「こうこう~こういう条件で~」と説明してもなかなか正しい答えを出してくれません。なぜならその説明の仕方が論理的でないからです。

論理的な問題にしてAIに渡す

いくら生成系AIが優秀とは言え、論理的に解けない問題は決して解けません。

上司が何を考えているか教えてほしいとお願いしても、的外れな回答が返ってくるでしょう。生成系AIは自然言語を理解できる超高性能な計算機です。

それらしい答えを自然言語で返してくれるというのはありがたいですが、あくまで計算機なのです。つまり、論理的な問題でなければ解くことはできません。ふわっとした問いを投げかけてもふわっとした答えしか返ってこないんですね。

たまにChatGPTが無能だという人がいますが、それはふわっとした論理的でない質問を投げかけているため、的を射ない回答が返ってくるのです。残念なことに、ChatGPTを無能という人自身が無能であると公言しているようなものです。悲しいですね。

さて、そこまでわかれば簡単です。私たち人間に求められるのはいかに論理的な問題にしてAIに仕事を渡せるか、にかかっています。世の中の問題というのはなかなか論理的な問題ではありません。私たちを取り巻く社会の問題は非常に複雑であり、1+1=2のような単純なものではありません。

一方で、AIにとっては論理的であればあるほど、答えの精度が上がります。私たちはどうにかして論理的な言葉でAIと対話しなければならないのです。
それでは最も身近で論理的な言語は何でしょうか?

私は数学だと思います。

実社会で解決した問題をなるべく数式で記述してAIに投げます。もちろん、すべてを数式で記述することは難しいかもしれません。しかし、可能な限り数式にしてやるのです。先ほどの社会保険料の問題も、全ての厳格なルールを数式化して、ChatGPTに渡しています。つまり、日本語のルールから数理モデルを作り、それを解かせたというわけです。

人間が数理モデルを作成しAIに問題を解くように依頼すると、自分が解くよりもはるかに高速で高い精度で問題を解いてくれるのです。中には数式を解くよう(解析的)には解けない問題も多くあります。そんな場合、AIには問題を解くためのアルゴリズムを依頼します。

アルゴリズムというのは、複雑な問題を解決するための計算手順のようなものです。それでも解けない問題もありますが、私たちが想像するような問題の多くはこのアルゴリズムを使って解くことができます。計算手順がわかってもどうやって計算したらいいの?と思うでしょう。

その場合は、アルゴリズムを実装したソースコードを依頼するのです。AIはこちらが指定したプログラミング言語で書かれたソースコードを書いてくれます。生成系AIにとって論理的記述で作成できるプログラミングは大得意です。

人間はプログラムが動く環境を用意して、そこにAIが作成したソースコードをコピペし、実行するだけでいいのです。私たちに求められるのは、ソースコードを正しく理解し、何を計算しているのか、その計算方法が正しいものなのかという知識です。

もちろん、それもAIに聞けば教えてくれます。ソースコードとアルゴリズム、そこから導き出された答えの妥当性を評価することが人間の仕事になります。

これまでは現実世界から数理モデルを作成しアルゴリズムを考えて、ソースコードを実装し、初めて問題を解決することができましたが、現在は数理モデルを作るところまででいいのです。

少し回りくどい説明になりましたが、要は私たちは論理的に考えるスキルを身に着け、それを数式(またはそれに準ずる論理言語)で記述する能力を磨けばいいわけです。あとはAIが高速に問題を解いてくれます。本当に素晴らしい時代になったものですね。

ちなみに、AIが理解できるような自然言語の使い方としてプロンプトエンジニアリングというものがあります。これは自然言語を利用してAIフレンドリーな命令文を作る技法です。私は現代の魔法だと思っています。こちらも併せて学んでいくと相乗効果で、よりAIを使いこなせるようになるかもしれませんね。

最後に

今回はAIが跋扈するこの時代に必要とされるスキルについて考えてみました。ゼロから新しいものを作りたいという場合はこの限りではありません。

AIだけを使って世界を変える新しいビジネスモデルや学術的に発見は難しいかもしれません。しかし、一般的な課題解決が求められる仕事においては、きっとこのような使用方法で良いのだと思います。そもそもAIが知っていることを一から人間がやることの方が無駄になってしまいます。

冒頭にも述べたように、このテクノロジーの時代に顧客の情報を全て暗記していなければならないなんてことないでよね。そんなものはググればいいわけです。

おそらくこのままいけば、技術者も含め多くのホワイトカラーの知的労働がAIに代替されていくでしょう。しかし、その中でも代替されにくい領域があるもの事実です。いち早くAIの特性を理解して、自分のポジションを見極めながらキャリアをつかんでいくといいように思いますね。

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