#8|"雪の知らせ"生誕秘話
先日、"雪の知らせ"という曲を配信リリースした。
今回、冬の空気感や木造建築の響きを存分に取り入れたかったため、「全パート、一軒家の階段にて録音する」という少し変わったレコーディング方法にチャレンジした。
ホットハーブティー片手にガタガタ震えながら歌録りをしたのも、今となっては良い思い出である。
素朴で、冷たいながらも温かい。そんな空気感が微かにでも伝わったら嬉しい。
さて、この曲が出来上がったきっかけについてお話ししようかな。
3年くらい前のこと。
ビジネスホテルの受付で働いていた僕は夜勤を終えてぼーっとしながら帰宅していた。
その日は雪が降り積もっていた。
電車を降りて、家の近くの河川敷を歩いていたら、当時思いを寄せていた子から連絡があって、勢いでビデオ通話をすることになった。
彼女も徹夜で作業していて、公園を少し散歩してから寝ようと思っていたらしい。
「雪、綺麗だね〜」みたいな他愛のない会話をしながら、お互いの景色を画面越しに共有して歩いた。
「何年かしたら、今日のことも忘れちゃうのかな?」
夜勤明けでぼーっとしていた僕は不意に呟いてしまった。
なんてことない些細な日常のひと時だったけど、こんな時間がいつまでも続いたら幸せだなって思っていた。同時に、いつかは忘れてしまうんだろうな、とも思っていた。
それから少しして彼女には恋人ができて、どうやら一緒に暮らし始めたようで、疎遠になってしまった。
あの時、彼女がなんて返答してくれたかは覚えていないけど、幸せだったことだけは覚えている。雪景色を見るたび、ふと思い出してしまう。
そんなエピソードがもとになって "雪の知らせ" という曲が生まれた。
曲に冷たさと温かさを共存させたかった理由にも繋がるかな。
"雪の知らせ"を聴いて、その時どんな景色を見ていたのか、どんな感情があったのか、思い出すようなことがあれば嬉しいな。
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