Eight Roads Special Seminar - 株式会社メルカリ 執行役員CHRO 木下達夫氏
Eight Roadsがスタートアップの経営者を招いて定期開催しているスピーカーセッション。2月開催のセッションでは、2018年12月にメルカリの執行役員CHROに就任した木下達夫氏をゲストに、スタートアップ経営に欠かせない人材の悩みや、組織をスケールさせるために重要な考え方についてお話を伺いました。
事業フェーズによっては、プロダクト以上に重要な人材戦略。メルカリのバリューのつくり方や、社員との「約束」、世界中から人材が集まる採用のリアルについて赤裸々に語っていただきました。
■木下達夫氏 プロフィール
株式会社メルカリ 執行役員CHRO
P&Gジャパン人事部に入社し採用・HRBPを経験。2001年日本GEに入社、北米・タイ勤務後、プラスチックス事業部でブラックベルト・HRBP、2007年に金融部門の人事部長、アジア組織人材開発責任者を務めた。2011年に8ヶ月間のサバティカル休職取得。2012年よりGEジャパン人事部長。2015年にマレーシアに赴任し、アジア太平洋地域の組織人材開発、事業部人事責任者を務めた。2018年12月にメルカリに入社、執行役員CHROに就任。
■グローバルでMAU倍増計画進行中のメルカリ
メルカリは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションとし、日米でプロダクトを展開している。コロナ禍でUSのメルカリはマイルストーンであった月間流通総額100M USDを達成したという。2021年にはスーパーボウルにはじめてCMを出稿、アメリカでも大きな話題をさらった。世の中のあらゆるスマートフォンユーザーに利用してもらうことを、目標に掲げている。
「メルカリに入って驚いたのは、バリューの浸透度合いです。いま、社員数1700人くらいになりますが、その浸透度は以前働いていたGE以上だと感じます。社員の評価や表彰制度、昇給・登用もすべてバリューを発揮できているかがひとつの基準。人事制度のあらゆる局面において、バリューを体現できていることが重視されています」(木下氏)
そんなメルカリのHRミッションは「一人ひとりの人材と組織のWIN-WIN」を実現すること。事業戦略と人事戦略がシンクロし、個人と組織のパフォーマンスが最大化する状態だ。世界中からリーダー層のエンジニアが集まってきて、社員のエンプロイーエクスペリエンス(EX)を実現することが、結果的にプロダクトの高いCXにつながると考えているという。
その結果、成長意欲の高い人材が集まり、eNPSでも「個人としてここで働くことで成長できているという高い実感が得られるか」という項目がエンゲージメントにおいて高い相関性を示しているのだそう。入社して何年経っても、社員が成長し続けられる状態を維持できるよう、社内で常に新しい挑戦をし続けられる仕組みをつくっているのだという。その結果、社員は常にエンゲージメントの高い状態を維持できているという。
そんな同社がいま重視しているのはダイバーシティ&インクルージョン(D&I)だ。あらゆる国籍、ジェンダー、パーソナリティのメンバーに高いエンプロイーエクスペリエンス(EX)を実現してほしいと思っている。
こうして着々とメンバーを増やしてきた同社だが、現在は「採用から育成へ」と掲げ、入社した人材が成長し続けられる環境を整えることも重視している。
D&Iを加速させ、エンジニアのドキュメントはすべて英語化、グローバルのサラリーレンジを設定し、2020年2月からはトライアルとしてフルリモート・フルフレックスの勤務環境を整えた。その結果、eNPSは10ポイント近く向上したという。
経営と人事、社員をつなぐHRBP(HRビジネスパートナー)というポジションを取り入れたり、経営者自らアセスメント研修を受講、アンコンシャスバイアス研修や異文化コミュニケーションも活発化させ、メルカリの人事・組織は次のフェーズへ進んでいる。
〔Q&Aセッション〕
Q1.CHROになって廃止した制度は?
A. マッチングアプリの会員費負担。平均年齢が30歳前後ということもあり、利用者は比較的多かったのですが、メルカリの福利厚生制度は個人が最大限にバリューを発揮するためのものと位置づけているので、会社で負担すべきなのかという話になり、廃止に(笑)。社員には常々、「福利厚生については、みなさんの状況に応じて臨機応変に変えます」と伝えるようにしています。
Q2.タレントマネジメントとは、具体的にどのようなことを行っているのですか?
A.アサインメント70%、フィードバック20%、研修10%という考え方を取り入れています。人を圧倒的に成長させるのは、アサインメントの部分です。組織が1000人を超えたいま、自分の周辺で起きていることはわかっても、他部署の動きは見えにくくなっています。新しい刺激が欲しくなったときに、社内にどんな仕事があり、どのメンバーがどのポジションで活躍できるのかを可視化しています。キータレントを明らかにして、社内外の方々とマッチングする機会を設けています。
Q3.経営陣が成長しなければならないのは何故ですか?
A.メルカリのミッションを本当の意味で達成するには、経営陣自身が非連続的な成長をする必要があります。そうでなければ企業としての成長はとどまってしまうでしょう。経営陣自身がこれまで体験したことのないチャレンジに取り組むことが不可欠。リーダー自ら自己投資して、率先してチャレンジし、変化する姿勢を見せることが、社員に対する意思表示にもなると考えています。
Q4.人事組織の立ち上げ期の、1人目はどのような人材がふさわしいと思いますか?
A.1つ目は採用を担える人材です。組織をスケールさせていくときは、石黒卓弥さん(元メルカリ、現 LayerX 執行役員)のように採用に強い方がいらっしゃると大きく事業が進みます。
もうひとつは、評価、報酬などの仕組みを設計できる人。ここは経営陣の思想がにじみ出る部分なので、経営目線でものごとを見ることができて、それを人事に落とせる人。つまり人事企画にあたる方を早めに採用できると、バリューと制度設計を整えることができるはずです。
■Eight Roads Ventures Japan
Eight Roads Venturesは大手資産運用会社のフィデリティの資金を基に投資を行うベンチャーキャピタルファンドです。ヘルスケア領域を含む革新的技術や高い成長が見込まれる企業へ、米国、欧州、アジア、イスラエルとグローバルに投資活動を行っています。業界に対する知見とグローバルなネットワークを最大限に活用し、投資先に対してハンズオンで経営を支援し続けています。
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