海外プロダクト研究:メンタルヘルススタートアップ3社の違いと今後の予想

こんにちは。エルーカです。
このnoteでは、世の中の気になるプロダクトの戦略やデザイン、今後をまとめて行きたいと思います。

今回は、メンタルヘルススタートアップについてまとめます。

猛烈に投資が進んでいるメンタルヘルス業界

現在、メンタルヘルスへの投資は猛烈な勢いで進んでいます。USの投資だけで、1500M(1600億円)ほどとなり、3年前の5倍程度の投資となっています。これには複数の理由があると考えられます。

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①コロナの影響でメンタルヘルスに問題を抱える人が増えた。
②モバイルの普及で、遠隔地への診療が可能となった。
③機械学習などの技術により、よりパーソナライズされた治療を届けることができる(=効果的な治療ができる)ようになった

②は特にUSでは大きく、身近に良い病院がない場合が多いため重要視されます。また、精神疾患は多岐にわたるため、③の要因が必ず必要でした。そこに①の要因が来たことで、大きな波になりました。

注目のUSメンタルヘルススタートアップ3選

積極的に投資が進む中でも特筆すべきスタートアップが3社あります。
Lyra Health、Ginger、Modern Health です。

Lyra Healthは2015年に創業され、現在シリーズFまで進んでいるユニコーン企業です。今月、新たに$200Mの調達を発表しました。従業員向けにメンタルヘルスを改善するプロダクトを提供しています。

Gingerは2011年に創業され、こちらも$200M以上を調達している企業です。『On-demand mental health support, day or night』を標榜しており、従業員向けに即時提供できるメンタルヘルスのプログラムを提供しています。

Modern Healthは2017年に創業され、$150M以上を調達している企業です。『We’re on a mission to help as many people as possible learn the tools for mental wellness and resilience.』 を標榜しており、従業員向けに、できる限り多くの人に対応できる診断ツールやプログラムを提供しています。

それぞれの類似点と相違点

この3社の共通点は、会社の従業員向けにメンタルヘルス改善のプログラムを提供している点です。その点では同じであり、企業から見ると「福利厚生」としての費用を使用していることになります。

一方で、方針の違いはそれぞれの企業にあります。
まずGingerは「できる限り早くユーザーにプログラムを提供すること」を強みとして磨いています。これは、精神疾患を患う従業員の多くが多忙であり、病院に通う時間を持つことができず、深夜しか予約できないというペインを持っているためと考えられます。
Gingerはメッセージをすると5分程度で予約を完了することができ、その日のうちにセッションを受けることが可能です。また、5分程度で終わるプログラムを数多く用意し、忙しい中でもメンタルヘルス改善を効率良く行うようにデザインされています。

Modern Healthは、比較的疾患の程度が浅い従業員にも適切なケアを提供しているのが特徴です。同社では疾患をスペクトラムで捉えており、同じ疾患でもその程度によって受けるプログラムが異なっています。誰もが一時的に落ち込むことがあり、その程度でも十分に意味のあるケアを受けることができるのが特徴です。また、30カ国以上の国に提供しており、どの時間帯でも受けることができるのもメリットです。

Lyra Healthはしっかりとした臨床データから、プログラムを作っているのが特徴です。ウェブサイトで積極的に数字を開示して改善率を見せています。また、投薬までもプログラムの中に含んでいるのはLyra Healthだけです。多くの研究機関との実証実験を進めており、医学的エビデンスを最も持っている企業であると言えます。

これからどうなるのか

今回は、USメンタルヘルスのスタートアップの特徴と違いをまとめました。

アメリカは日本と異なり、精神疾患での保険適用がエリアや病院によってまちまちで、高額な医療費を払う可能性があるという問題があります。なので精神疾患のサービスが出るのは当然といえば当然の流れ(日本はこのまま取り入れてもうまくいかない)です。

しかし、福利厚生で巨額の費用を捻出し続けられる企業がどの程度あるでしょうか。コロナが落ち着いたときにこの福利厚生モデルはひとつの終わりを迎えるのでは、と考えられており、USのVCもこのままの成長がいつまでも続くわけではないと予測を述べています。

そのときにもっともコストパフォーマンスの高い企業が残り、ほかは吸収されていくのではないかと考えられています。これからの動きにも注目です。

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