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所詮、私たちはしっぽにしがみついているだけにすぎない【Day211】
ネコのしっぽ、イヌのしっぽ、サルのしっぽ、恐竜のしっぽ。
しっぽはみーんなブルンぶるんっと自由自在に動いている。
私たちはこのしっぽから振り落とされないように、必死でしがみついているだけに過ぎないのかもしれない。
学校が終わり、子供達がいなくたなった5時半過ぎ。活動先の中でも真面目な同僚が私の元へとやってきた。
いつもなら帰宅して赤ちゃんや奥さんのケアをしているだろう彼が、こんな時間まで残っていた。
中学は15時40分に学校が終わるはずなのだが、今日は17時頃まで生徒たちは帰ることが許されなかった。もちろん、中学教員たちも同様だ。
彼曰く、
校長の独断で、「生徒たちは放課後残るように」といきなり指示をしたようだ。
いきなり勝手に決められてしまったもんだから、教員たちも残るはずがなく、生徒たちも理由が分からず門に鍵を掛けられて帰れなかったようだ。
私の憶測だが、校長の意図としては「家に帰っても勉強しないなら、放課後残されて勉強させよう」というものだったのではないだろうか。
同僚の彼は真面目だから、校長の指示に従って遅くまで残っていたようだ。
そんな彼がたまたま学校に居た私のところへやってきて、不満を打ち明けてくれた。いつもニコニコしている彼にしては珍しいことだった。
✳︎
他の中学は8時始業なのに、うちの学校は7時20分になっていること
時間割変更について何も説明されていないこと
今年に入ってから新学期始まりを除いて一回も会議が行われていないこと
先生たちがレポートを提出して、それが会議をしたことになっていること
教科会議をしたいが校長の許可がないとできないこと
教員によっては授業がほぼフルで入っており、授業準備や採点が行えないこと
自分の専門外の授業を担当している先生がいること
先生によって授業数の偏りがありすぎること
生徒たちの質が悪すぎること。
(最近生徒が先生に暴力を振るった事件が発生した)
ディストリクトが1月から先生たちに給料を払っていないこと
などなど。
✳︎
管理職による独断で物事が決められてしまうことが多いようで、彼曰く“Why”の連続なのだそうだ。
私自身も管理職のサポートに入っていながら、“本当にこれでいいのか?”と思いながら行なっていることがこれまでに何度かあった。
主にカリキュラムと時間割に関してだ。
管理職の彼らの要望を取り入れながら作成を行なっていたが、“教員たちのこと考えてるのかな”とは思えなような要望がいくつかあったのだ。
・担当教科の授業数の偏り
・独自の時間割
・空コマの埋め合わせ
時間割を作成している中で、明らな仕事量の偏りが生じているのだ。この先生の授業多すぎたよね、少なすぎたよねというのが気になっていた。
さらにいうと、国の方針で小学校4年から6年までは全日制になっており、教科とは別で空時間が組み込まれている。理由は、子どもたちにフルコマの授業は無理があるのでリフレッシュする時間なのだそうだ。
ところが、
この空コマが問題を招いている
私の配属先の場合、家庭環境や学力があまり良いと言えない子どもたちが周辺地域から集まってきている。
特に中学の場合は、小学校の時点で一度ふるいにかけられて落ちた生徒が集まってくる。インクルーシブ教育とか言われてはいるけれど、勉強が嫌いな生徒が多いのだから先生たちもかなり苦労しているのではないだろうか。
先生がいないクラスは自習するどころか、教室の外を出歩いていたり、騒いでいたりととにかく落ち着きがない。
中学1年のクラスに関しては、新学期に張り替えられたガラスがもうすでにいくつか割れて無くなっている。
そんな状態なので、空コマは、彼らにとって“勉強する時間ではなく遊ぶ時間”なのだ。
これに頭を悩ました管理職たちが授業時間を変えたり、空きコマにも授業を入れたりという試みを行っている。
ただそれが教員たちに理由説明もなく、管理職の独断によっていきなり前年度までとガラッと変わってしまっているものだから、不満と不信感が巻き起こっているのだ。
そこへきて、給料が2ヶ月間未払いになっている。
そりゃ、いくらなんでも教師たちのやる気も下がるよね
と納得した。
みんな学校を良くしたい、生徒の学力を伸ばしたいと思ってるのは一緒だ。
でも、話し合いもせずにトップにより独断で決められてしまうのは、あまりにも教師たちにとっては理不尽だ。
ルワンダでは上が言うことは絶対なので、一教員の同僚たちは物申すことができない。トップダウン方式だ。
国やディストリクトが決めた方針に対して学校はそれに従うしかなくって、学校も校長やDOSが何かを決めたら先生たちはそれに従うしかないのだ。
私たちは例えるならば、しっぽにしがみついているようなものだ。
脳を国やディストリクトが掌り、セクターや学校のトップたちが胴体になる。
胴体がブレるとしっぽも左右上下にブルンブルンと動く。
トップが有能で物事をしっかり考えてから行動する者のであれば、特に問題がないだろう。しかし、思いつきで行動されてしまったらしっぽにしがみついている人たちはたまったもんじゃない。
トップたちが「あっちだ!こっちだ!」と方向をフラフラ、フラフラと変えていたら、振り回されるのはしっぽにしがみついている人たちなのだ。
でも、しっぽだって大きな力で掴まれら胴体がストップする。
そういった時は、やはり何か大きな問題が生じているのだ。
諦めている教師の方が大半なのであれば今後も振り回され続けるだろう。しっぽから振り落とされた人は別の条件のいい学校に異動してしまったり、辞めてしまう。
教師たちが無能なわけではない。
彼らにも生活があって、守るものがあるのだ。
彼のようにやる気があって真面目な教員たちの芽を積んで欲しくない。このままでは教師たちのやる気は下がり続ける一方なのが目に見えている。
外国人でボランティアの私は彼らに何ができるだろうか。
私一人にができることはおそらく無い。
強いて言うなら、今日みたいに教師たちの話に耳を傾け真摯に受け止めることなのかもしれない。
管理職と教員たちの架け橋になれないだろうか。
今のDOSや校長は教員経験もなく、完全にマネジメントの人だ。現場との考えと落差がある。教員たちも上に対して強く言えない立場なので、意見が言いやすい私のアドバイザーとしての立場は彼らの声を届けられるかもしれない。
もっと創造性を豊かにして、もっともっと視野を広げる。現場を見るだけじゃなくって、彼らの声に耳を傾けて一緒に改善策を考えるのだ。
“違和感”を残したまま行動をしない。
何か違うと思ったら立ち止まる。
管理職たちと教員たち差をどうにか埋められないのだろうか。
しっぽをひっぱる力を生み出すことは可能なのだろうか。
ただ話し合って考えるだけではダメだ。
議論で満足しちゃダメだ。
考えすぎもダメだ。
具体的に提案して行動に移していかなければならないだろう。
うーん、どうしたらいいんだろうか。
目の前にあることをしっかりやることも大事だけど、それが本当に正しいか分からない“今”。今後どうアプローチしていくかを練り直す必要がある。
管理職たちの思いも分かるし、教員たちの不満も分かる。それでも、みんな目指す方向は同じなのだ。
活動計画表がすでに完成してはいるけれど、双方にとっての良い着地点をどうにかして探っていきたい。
(2020/02/27)任地179日目|No.60