赤い帽子があまりに似合って捨てられない。
馬鹿みたいな話だ。
高校生の時に買ったワインレッドの帽子はもう4年も使っていない。
けれど捨てようとするたびに試着すると、あまりに私にぴったりで捨てられない。
鏡の中の私の瞳が輝いている。
好きなものが似合うということはつまり両思いだということだ。
両思いな帽子を捨てることはできない。
一昔前に流行ったデザインだから気が進まないなんて思わずに、今度ひとりでおでかけするときに着けていこう。
新しい街になら着けていける気がする。
そう思って今日も帽子をいつもの場所に戻す。