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TAR(映画)

映画は別にエンターテインメントだけがすべてではないし、考えさせられなくてもいいし、作る人も観る人も自由にすればいいと思ってはいるが、たまにこの映画って何で作ったんだろうというものがあります。
こういう人の人生を描きたかった、というのはわかる。
ただその人の人生を通して観ている人にどういう風に感じて欲しいとか何を共感して欲しいとか、少なくとも作ってる人には制作意図がありますよね?
それが何かがわからない映画があるのです。

この主人公は天才です。
そして天才がゆえの傲慢さと不完全さを持っていて、それが原因で身を滅ぼすことになるのだけど、しぶとく生きていきますという内容です。

今、ハラスメントについて厳しい時代です。
傷つけられて踏みにじられた人間が声をあげられる時代になったことは喜ばしいことだと思います。そういう思いをする人が少しでも減ればいいと思っています。
ただ同時に、世の中のいわゆる成功者で聖人君子のような人って大谷翔平以外で誰かいます?とも思っています。
僕が知っているインフルエンサー的な人は、SNSではめちゃくちゃ前向きで立派なことをつぶやきまくってますが、裏ではクソみたいな自分勝手さを隠そうともせず自由に振舞っています。
僕の人生のベスト5に入る映画「グッドウィルハンティング」のプロデューサーが、あの#metooのハーヴェイ・ワインスタインだったことを知ってショックを受けました。
良い人が良い仕事をするわけじゃない。
良い人が人を感動させるわけじゃない。
ただ、仕事ができるからって人を傷つけていいわけじゃない。
人を感動させるからって人を踏みにじっていいわけがない。
でも、不完全で異常な人間だからこそ普通の人ができないことを成し遂げることも事実。
天才なんだから、少しは目をつぶってもいいんじゃないかと部外者の僕は思います。

子供が小さい頃、嘘をついたり人を傷つけてはいけないよと、さも正しい顔をして言っていました。
でも、現実の世の中はプーチンのような男がいて、世界中が何もできずにいるわけです。
国民の代表である国会議員たちが、全国民が呆れるようなどうしようもなさを露呈し続けているわけです。
子供に今の社会を何て説明すればいいのでしょうか。

何が言いたいかというと、社会なんて、人間なんて、そもそも不完全でどうしようもないじゃないかと思うのです。

なので、この映画で描かれている天才がこんなことをしちゃって落ちぶれちゃいましたということを、天才でも悪いことはしちゃダメだねと学べばいいのか、成功者の没落を見てざまあと思えばいいのか、不寛容な世の中を嘆けばいいのか、どう思うのが正解なのかよくわからなかったんですよね。
ただ、僕は人がたくましくしぶとく生きていく姿は美しいと思っていますので、最後の終わりは良かったです。


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