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Life|2020年、僕は何を買うのか

大晦日に飲むお酒を買いに、酒屋を数件まわったときのこと。

前日の30日に、10月に金沢マラソンに出て、その完走祝いで「飛」という寿司屋に行った。そのときに大将のおすすめで飲んだ「加賀鳶 山廃純米吟醸 冷やおろし」が気に入っていたので、同じ酒蔵の「加賀鳶」を買ったら、あまり好みじゃなかったこともあり、リベンジでお気に入りのお酒を探しに行ったのだ。

酒屋に行けば、当然レコメンドの商品や試飲などもやっているけど、どうしてもそれらを積極的に買いたいと思うものがなく、結局妻が飲んでみたいと選んだ酒を買って帰った(これは、これでおいしかった)。

そのときに、自分の消費動向の変化をすごく感じた。

どうせ選ぶならあなたのものを買いたい

今、自分が消費する動機の大きなものが、自分にとってリアルに「ゆかり」や「かかわり」があるかどうか、になっている。

たとえば、「作っている人に会ったことがある」とか、「好きな飲食店でおすすめされたことがある」だったり。もしくは、「そういえば、フォロワーのあの人が、おすすめしていたな」みたいなこともある。さらに僕の場合は、職業柄「取材したことがある」なんかも含まれる。

東京には、良いものが本当にあふれている。

食の分野ではある程度の知見があるので、良いもののなかでも差を見分けることができるが、それでも本当に選ぶのに苦労する。

さらに食以外、例えば、衣服の材質やデザイン、理髪店のクオリティ、家電の性能などになると絶望的だ。どれを買っても満足できるのに、選ばないといけない究極の選択な日常が続くのは、なかなか大変で、実際は思考が停止していることもある。

クオリティが均一化してく世界で、これから何をもとに商品を選ぶのか。そんなことを考えるなか、僕は「どうせ選ぶなら、人とのつながりのなかから選ぼう」、という気持ちになったというわけだ。

コミュニケーションという性欲

そんな心境の変化の根底には、消費はコミュニケーションだと思うようになったことが挙げられる。10月の「CRAFTSMAN × SHIP」でも出たが、クラフトマンの商品を買うということは、その人への投資であるというフグレンの小島賢治さんの話を聞いたことも大きかった。

物を通じて人に投資する。

僕が、つながりのなかから商品を選ぶことは、SNSでいいねをするようなもの。「読んでますよ」「いい内容ですね」「続けてください」。そんな作り手へのメッセージだ。

商品を買うことも、その商品を作る人、そしてその商品を愛して進める人への「いいね」なんだと思う。

だから、勧められた商品を買って好みじゃなかったとしても、損した気がしない。自分の好みに合わなかっただけだと素直に感じるし、つながりある人に対する支援ができたから、そもそも目的はクリアしている。  

仮に、なんのつながりがないなかで商品を買って、気に入った場合はいいけど、気に入らなかった場合、自分も損した気分だし、使ったのはお金だけで、誰にも役に立たない。

それに、先にも書いた通り、プロダクトの質が均一化している分、そんなにまったくダメってことはまずない。

それより、フラットに購入して良い部分を発見できないことの方がもったいない。それは、参考書につけた蛍光マーカーみたいなもので、まっさらな状態での消費では、なかなか違いを感じずらいというのもある。

意味のある消費とは

参考書の例をもう少し進めると、自分が一生懸命参考書にマーカーするよりも、マーカーされている方が理解が早いように、すでによく知る知人からのレコメンドは、それだけで、なにもない状態よりも圧倒的に理解度や感度は高くなる。

もちろん、良いものかどうかは自分で判断する。

そうすると消費というよりリレー走者の一人のように感じてくる。消費ではなく支援である。そんなことを実感するようになったことを、昨年末に気づかされた。

そういえば、フグレンの小島さんやミニマルの山下貴嗣さん、365日の杉窪章匡さんたちが、こぞってコーヒーを語る姿を見て、2020年はコーヒーを豆から買いたいと思っている自分がいます。ミルも何はどんなのがいいのか。

これって、芸能人のステマブログに踊らされているようなものに見えますが……。

こうした、「ゆかり」や「かかわりのある」消費は、つまり「プロダクトを通じたコミュニケーション」なのだと思っています。モノより体験が重視される時代に、こうした動向は強くなっていくような気がしています。

わたしたちにとって意味のある消費。

2020年、僕は何を買うのでしょうか。今から楽しみです。

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江六前一郎|Ichiro Erokumae|Food HEROes代表
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