Trip|「モノづくりは優しさから生まれる」小林貞夫さん|ラッキー・ウッド
9月下旬、友人の料理人で、2021年に都内でレストランをオープンする予定の大野尚斗さんと、豊洲に拠点を置いて、日本各地の食材を都内のレストランに紹介するスーパー八百屋「eff」の吉岡隆幸さんとともに、石川県と新潟県を旅してきました。
旅の最終日だった朝は、残念ながら雨が降っていました。
「燕三条」とよく聞くと思いますが、行政名としては「燕市」と「三条市」の2つの市の総称をいいます。飲食業界でこのエリアは、金属加工が盛んな地として知られています。
1868年、明治元年に鍛冶業として創業したカトラリーメーカー「ラッキーウッド」の工場を見学させてもらいました。コーディネートしてくれたのは、新潟市に本社を置く大橋洋食器の髙橋信太郎さんです。
レストランでもっとも長く触れているカトラリー
食べるのが好きな方が多く見ていただいていると思うので、まずはカトラリーに関するクイズを出します。レストランで使うようなフォークの先がどうなっているか、その理由も含めてお答えください。
チッ
チッチッ
チッチッチッ
チッチッチッチッ
チッチッチッチッチッ
チッチッチッチッチッチッ
チッチッチッチッチッチッチッ
チッチッチッチッチッチッチッチッ
正解は刃先が斜めに削られているでした。理由は、フォークを料理に差したときに抜けずに持ち上げやすくなるためでした。
(写真:大野尚斗)
このように、レストランでもっとも長い時間触れているカトラリーについて、じつは知らないことが多いのに、美食家を気取っているわけです(あ、別に気取っているわけではないですが笑)。
こんな平べったい型(フォークもスプーンも同型)から始まります。
こちらはスプーンの型。フォークよりひらべたくなります。
最初の行程は、材料を型抜きしたり熱処理したりするので、大きな機械が多かったですね。
工場を案内してくださった営業部長の清水哲哉さん。なんでも答えてくださいます。
ナイフは、こんな感じで最中(もなか)型という中が空洞になった軽量なものと、空洞がない重いタイプがある、指先で叩いてみるとわかります。
フォークはこんな感じで方に入れて押し抜きます。
フォークの間もしっかりと研磨。
研磨については、多くの行程が手作業で行われています。これはかなり驚きました。
研磨が終わったフォーク美しい。
これ何用のフォークなのかわかりますか?(31歳の大野さんは、知りませんでした!)
見学のあとは、併設されているショールームへ。
代表取締役社長の小林貞夫さんも来て下さり、いろいろと説明をしていただきました(トップ画)。
お話を聞いて感じたのは、フォークやナイフ、スプーンはあくまで分類上の名称であって、実際はさまざまな用途に合わせたフォークがあるし(イチゴスプーンとか)、お店によっても違います。
薄くて軽い、黒っぽいマット加工のカトラリーが今はよく見かけるようにもなりました。
その多くは既製品と呼ぶにはもったいないほどよく考えられていて、一つひとつ用途によって重心のバランスや持ち手の厚みまで設計されていています。
あまりに無自覚にカトラリーに触れていたことがとても恥ずかしくなるような知恵とアイディア、おもいやり、そしてそれを表現する確かな技術があることを知りました。
社長の小林さんの説明を聞くと「ここはこうなっていて、それはこういうときに使ってもらいたいんです」とか「この厚さがもちやすいんです」など、細部のデザインが「どうしてそうするのか」という意思のもと行われていることが伝わってきます。
「モノづくりは、やさしさから生まれる」
そんなことを考えさせてもらったとても貴重な工場見学でした。
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明日は三条でのランチを。
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