野球トレーニングの「押す」対「引く」比は1対2?

身体の後部のトレーニングの方が重要?
野球選手の上半身の後部を鍛えるトレーニングは主に「引く」動作で行われることが多いため、上半身前部のトレーニングである「押す」動作より、重要だと言うことです。

野球のトレーニングに詳しい方なら一度は聞いたことがあるかもしれません。

以前に「大胸筋は投手に必要か」で大胸筋が及ぼす害をリストアップしました。確かに大胸筋を鍛えるトレーニングのように「押す」動作が多すぎると、肩の傷害を誘発しそうです。

「引く」トレーニングを重視するとこうなる
大胸筋が上半身前部にあることから、上半身後部のトレーニングをすると、大胸筋の悪害から解放されると安易に考えます。

しかし、人間の解剖はそんなに単純でなさそうです。

ある大学野球の全国区のチームは、主に「引く」トレーニングを重点にプログラムが組まれているとのことです。(実際には、「押す」対「引く」の比の詳細は分かりません。)

その結果、ほとんどの選手に見られたのが、静止位置での肩甲骨の下方回旋でした。

これは投球に必要な肩甲骨の上方回旋の不足を生じ、肩のインピンジメント症候群がすでに発症しているか、発症するのも時間の問題かと思われます。

「引く」トレーニングで発達する筋肉・菱形筋
ローイングなどの「引く」トレーニングは、主に広背筋や菱形筋の発達を促します。

昨今は肩甲骨をお互いに引き寄せる動作をするために菱形筋の働きを強調するエクササイズも行われているようです。

しかし菱形筋は肩甲骨を下方回旋します。何度も書きますが、肩甲骨は上方回旋が必要なんです。

また、「運動機能障害症候群のマネジメント理学療法評価・MSIアプローチ・ADL指導」によると、

菱形筋が働き過ぎると、肩関節の外旋の際にインナーマッスル(ローテーターカフ)の棘下筋の働きが阻害されます。その結果、上腕骨骨頭が不安定になります。

「押す」も「引く」もあまり勧められないとすると…。
肩甲骨の動きや上腕骨骨頭の位置を考えた場合、過多な「引き」と「押し」のトレーニングは理想ではありません。

じゃあ何をすれば良いのか?

肩甲骨の上方回旋と後傾を促し、上腕骨骨頭の安定をも図るトレーニングは、機能解剖学的にどういう動作で行われるべきでしょうか?

それは今まで野球選手には禁忌とされていた、「オーバーヘッド」でのトレーニングのようです。詳しくはまた後日に書きます。



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