2019年の文章のこと
年の瀬にその一年の活動をふりかえる的なものを今までやったことがなかったのですが、今年は文章面で新しくはじめられたものがいくつかあったので、noteにかんたんに記録しておきたいなと思いました。
以下時系列順に。
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*webでのエッセイ寄稿
ニセモノの檸檬を握りしめなければ、生きていくことができなかった
人生で初めて「磯貝依里」名義のお仕事として、本や自分の身辺についてのエッセイを(公に向けて)書きました。
このnoteに書いていた「彼岸のことはわからない」という長めのエッセイを読んでwebメディアの方がご依頼くださったのですが、世の中にはこんなこともあるんだなあと驚きつつ、誰かに見つけていただけたという気持ちが、こっそり嬉しかったです。
原稿を書いていたのがちょうど春の新人賞応募しめきり間近(3月半ば)だったのと、初めてのひとり暮らしの引っ越しが迫っていた(この時点ではどこに住むかさえも見当がついていなかった)のと、前職を退職したばかりだったので、操縦しきらないテンションのままこのエッセイをかたちにした記憶があります。文章の全体が繊細気味で内向気味なのはきっとそういう感じだったからなのだと今は思います。
この記事を寄稿するまで、ふだんwebメディアのエッセイやコラムを読む習慣がぜんぜんなかったので、いろいろな方の記事を参考に読み、文章には、本や雑誌や同人誌やフリーペーパーだけでなく、現在はこういうフィールドがあるのだと知れたのも、このご依頼をいただけたのがきっかけでした。
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*フリーペーパーでのコラム連載
ふだんDJやショーなどでお世話になっている秘密結社サキノハカ発行の『黒花』という「関西フェティッシュ・アンダーグラウンド・サブカルチャーフリーペーパー」(いつ見てもすごい誌名……)に、2018年の秋から、文学作品を取り上げるエロコラムを掲載してもらっているのですが、こちらがなんと2019年も載せていただけまして、11月から現在配布されているのが3回目です。
1回目は「車内通話とエッチな文学」というタイトルで、村上龍『ピアッシング』を取り上げた、声のフェティッシュと小説をめぐるコラムを。
2回目は「ほんとうのサドマゾとエッチな文学」というタイトルで、ドゥルーズのサディズム・マゾヒズム論を中心に、谷崎潤一郎『春琴抄』も参考にしつつ、「俺、ドSなんだよね」とバーやクラブでのたまうおっさんをこの世から撲滅するための、自称ドSおっさんぜっ殺コラムを。
3回目は「クリエイティブなオナニーとエッチな文学」というタイトルで、バタイユの『眼球譚』を分析しながら、オナニー行為のファビュラスぶりについて語るコラムを寄稿しています。
イベントや、関西のバー、クラブ、SMクラブ、サロン、お食事どころ、そのほかいろいろなスペースで無料配布されていますので、暇つぶしにキャッキャ読んでいただけると嬉しいです。とくに味園ビルですとあらゆる場所で配布されており、見つけやすいです。わたしのバイト先でも置いていますし、おっしゃっていただけたらお渡しもできます。
毎回けっこう楽しく寄稿しています。ふだん街で一緒に遊んでいるたくさんの友だちやお知り合いの方から直に「読んだよ〜」と言ってもらえるのが、いつもとっても嬉しいです。
ちなみいまのところ、これだけはひらがな名義の「いそがいえり」で書いています。
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*webでのオムニバス短篇小説連載
エッセイ寄稿でお世話になった担当編集者さんからDRESSで小説の連載をしませんか、とお話をいただいた時は、くちから心臓が飛び出るかと思いました。
ご依頼はたしか4月半ばで、ここ四年だと春の新人賞応募後数週間が経ち、なんであんなもの出したんだろう……という自己嫌悪でいっぱいの鬱々とした時期なのですが、今年はDRESSの担当さんから嬉しいお話をいただいたので、わくわくして過ごすことができました。
連載タイトルは『やがて幻になるこの街で』。
キャプションの《めまぐるしいスピードで開発が進み、日々変化していく大阪の街。 いま目の前にあるわたしたちの街が徐々に幻になっていく光景を、リアルなのに少し不思議な物語で描く》というのがぜんぶを物語っている感じです。紹介に「小説家」と書いていただいていて、だいぶ恥ずかしいですが、恥ずかしがっちゃだめだよね……と毎回更新する度にどきどきしています。小説家と呼んでいただけることは幸せなんだなとつよい気持ちで頑張りたいです。
担当さんとの相談中、連載するにあたって毎回共通のテーマがあるほうがいいですよね、となり、それでは大阪を舞台にしたエンタメ寄りの幻想オムニバス短篇はどうでしょうと提案したところ、するすると本決まりになり、第1回目は担当さんのアイデア(と友人がくれたアイデア)をもとに小説を書きました。
今まで、文学新人賞応募用(あるいは大学の課題や卒業制作)の中篇〜長篇の小説しか書いた経験がなかったので、実質初めての短篇小説です。
とくにSFぽいものは初めて感がつよいです。同じように幻想がテーマでも、読み手の方にたのしんでいただけるよう、毎回異なるエンタメジャンルで挑戦していきたいなと思っています。
小説を書くことで、生まれて初めてお金をいただきました。
連載の表紙写真は友人カメラマンのAKDさん(@akd_asr)の作品です。
諸事情につきしばらく2ヵ月に一度の更新頻度になってしまいますが、これからも大阪のさまざまな街の過去と今と未来とまぼろしを、ここに書き残していけたらな、楽しんで書いていけたらなと思います。
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*remix曲への散文詩の寄稿
いまや飛ぶ鳥を落とす勢いなパソコン音楽クラブの2019年ニューアルバム、さらにそのremixアルバムである『Night Floe Remixes』の、「Air Waves (909state remix) [feat. 磯貝依里 & イノウエワラビ]」に原曲をイメージ(remix)した散文詩を寄稿しました。
散文詩全文や寄稿にまつわる思いなどは、こちらのnote記事で読んでいただけます。
まさか自分が音楽の楽曲そのものに携われる日が来るとは思いませんでした。心から嬉しい経験です……。
TBSラジオ番組ライムスター宇多丸の「アフター6ジャンクション」に出演された909stateさんのおかげで、おまけでTBSのラジオ番組記事に名前デビューもできました。ありがとうございました。(宝塚の輪!)
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*文学トークイベントの主催
今年の4月にオープンされた大阪・本町のtoi booksさんにて、今年3つのイベントを主催させていただきました。
「私(たち)についてお互いの知っている二、三の事柄」磯貝依里×生湯葉シホ
toiの読書会特別編 対談「松浦寿輝をめぐる黄昏時」磯貝依里×雛倉さりえ
書店員時代からの友人である磯上くんのお店で、とても居心地のいいイベントを3つもさせていただけたこと、ほんとうに今年の大切な思い出となっています。
『図書室』の読書会では、今までは大学のゼミでしか交わせなかった作品の感想をさまざまな方と共有することで、大学時代の読書会よりもずっとずっと有意義な意見を拝聴できました。これ以来、わたし自身の読書の仕方も、今年少し変化したような気がします。それくらい楽しかったです。
生湯葉シホさんを東京からお呼びしてのトークイベントでは、エッセイと小説の読み方書き方のちがい、ふだんの生活のこと、恋愛のこと、それから好きな本のこと、たくさんたくさんお話できました。生湯葉シホさんと、それと彼女の書く言葉と、出逢えてほんとうに幸せです。
toi booksの2019年を締めくくる年内ラストのイベントとして、29日には松浦寿輝の諸作品をめぐるトークイベントを開催しました。ゲストは大学時代の後輩であり、作家の雛倉さりえさん。松浦作品を読んだことのある方もない方もたくさんご来場くださり、そんな空間で、感性の鋭い友人と、自分の大好きな作家についておしゃべりするのは最高の時間でした。
下2つのイベントについては、磯上さんが特典の冊子を作成してくださいました。うっとりするような丁寧な造りで、感動です……。
手仕事のこまかな、本の商売人である磯上さん。それからtoi booksという空間へ、今年は大変お世話になりました。
toi booksを通してたくさんの書き手・読み手の方とお知り合いになることができたのも、今年のなによりのできごとです。本のお話ができるって嬉しい。
これからもtoi booksへたくさん本を買いに行きます。
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*文芸書・芸術書・エッセイについてのweb書評連載スタート
最後にこれは少し告知っぽいのですが、なんと2019年12月末より、webで書評連載のお仕事がはじまることになりました。
さっそく1本目が先日アップされております。
2019年に読んでいちばんよかったエッセイ本について書きました。
白湯のような言葉のエッセイ集・朝吹真理子『抽斗のなかの海』
新刊の文芸書をメインに、芸術書やエッセイ本などについても書いていけたらと思っています。オルロジュリーという腕時計のwebサイトに掲載という少し変わったお仕事ですが、好きな本について好きなように書いていいですよとおっしゃっていただいているので(なんと幸せな!)、読んでよかった本をいっぱいご紹介したいです。
月に2〜3記事ほど書評を書きますので、2020年はこちらもどんどん頑張ります。おすすめの本があればこっそり教えてください。本棚も増やします。
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そんな感じの2019年の文章のことまとめでしたが、2020年は新人賞応募の小説原稿をもっともっと頑張りたいです。5年つづけていたルーティンを今年もあきらめず、3月末にぶじにポストに投函できますよう、年が明けたらせっせとパソコンを打たなければ、
と思いつつ、顔をあげたらあっというまに大晦日の夕方。
今年もいちねん、がんばって過ごせました。
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