今はまだ緑色
なんだ、この臭さは。
とある大きな木の下で思った。
かなりの日数を掃除されてない公衆トイレは、こんな悪臭を漂わせるのだろうか……。
足元には割れた木の実が幾つも転がっている。
昔子供の頃、お寺にあったの木の下で見たものと同じだ。臭さに懐かしさを覚えたのはそのせいか。
銀杏の実。
友達が、おばあちゃんに銀杏の実を採ってきてと言われ、臭いから嫌だといいつつ採りに行った。私もそれに付き合った。
銀杏は臭いけど、茶碗蒸しの中に入っている銀杏は美味しくて臭くない。おばあちゃんはその実の中心を狙ってるのだと、友達から教わった。
それを思い出した。
見上げれば、まだ紅葉していない緑のイチョウが風に揺れている。
緑のイチョウも、それはそれでかなり美しい。
なのになぜ実はこんなにも臭いのか……。
『臭いから近くに来ないで! 私なんて見ない方がいいわ!』って、自分の美しさに気付けない自己肯定感の低い木。
また何かを擬人化するクセが出てしまった。
妄想は膨らむ……。
イチョウの木、とても美しいです。
どんな色でも、実が臭くても。
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