私がフィルムで撮る理由
今回の写真展の写真はすべてフィルムで撮影しています。「フィルムで撮ろう」と決めたときに、ものすごく深い理由はなかったのだけれど、ただただ直感でした。今回の撮影はフィルムで撮った方が良いなって。
振り返ってみてもやっぱりフィルムで撮って良かったなって思ってます。
写真を趣味にしていたころはずっとフィルムで撮影してました。フィルムの表現力も大好きだし、なにより現像してスキャンするまで撮ったものが分からないワクワク感。トイカメラで撮影するこもとあったので、その予測不可能な表現も大好きでした。これは、フィルム撮影をしたことがある人はみんな体験したことがあるんじゃないかなと思います。
ただ、写真を仕事にし始めてから、フィルムで写真を撮ることがグンっと少なくなってしまいました。それから、自分の撮影のスタンスが何が変わったかというと、一番はシャッターを切る回数が増えたことです。とは言っても、他のフォトグラファーさんと比べてもそんなにシャッターを切る回数は少ないし、撮影時間も驚かれるほどい短いこともあるので、増えたと言っても側から見れば少ない方なのかもしない。
シャッターを切る回数が増えたことで、これだという1枚は必ず撮れるようにはなったと思います。撮影中に見返しながら試行錯誤で撮ることもあるので、調整しながら撮ることができたのが一番大きような気がします。ただ、撮れ高が良くなってきて、これだという1枚が2枚、3枚と増えていって、それは嬉しのですが、セレクトするのが難しくなってきてしまいました。自分が意図する伝えたい「この1枚」という写真を選ぶのが難しくなってきてしまったんです。
お仕事では選んでもらう立場なので、状況は違うのですが、「自分の写真」を撮るときは同じような心持ちで撮るのは違うのかなってちょうど考える時期でした。そして、そう思ったときに「フィルム」なのかなって思いました。「こうやって撮るぞ」っていうのをしっかり決めて、これだという1枚を撮ることができるのがフィルムなのかなって。もちろん、それがデジタルでできる人もいると思います。でも、私は不器用だし面倒臭がりなので、あえてフィルムという限られたものを使うことで、撮影の意識を変えることができるんです。
あとは、今までの自分の撮影技術への挑戦というか振り返りな部分もあります。1カット1枚と決めて撮影してみてるのですが、自分でルールを決めて撮影してみると、今まで撮影してきた技術をフル活用させないと撮れないので、うまく撮れないってことは私の理想としてる写真は撮れてないってことになります。
実際、どうなんでしょう。36枚で全部がこれだ!という写真になっているかというと、全然でよくて半分くらいかなってとこです。被写体の表情の捉え方や光の捉え方などなど上げると気が遠くなるのですが、本当にまだまだだなぁって思います。でも、今のところは写真展に出せるくらいの量はちゃんと撮れてるので、撮り直しってことはなさそうでホッとしてます。
フィルムで撮るときって大局観なんですよね。写真展の被写体のインタビューで龍崎翔子さんともそのお話ししたのですが、大局観があるっていうのは、直感を選ぶ力があるっていうことで、でもそれって才能より今までの努力の積み重ねの方が大きい気がしていて。フィルムで撮影するのも大局観あるなぁって思います。私にとって撮影は瞬間を切り取るっていう意識がすごくあるので、シャッターを押す直感は大局観だよなぁって。
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あともう一つ、これはフィルムというよりプリントの話しになるのですが、写真って手に取るものだって思うんです。
今は写真データでのやりとりがものすごく増えて、仕事ではもちろんネット経由で写真を送るし、プライベートでもスマホで写真を撮ってSNSに上げる行為が全て画面の中で行われることに、ちょっと寂しさがあったりします。
やっぱり写真屋さんへフィルムを現像に出して、プリントをもらうときってすごいドキドキしたし、見たときとっても嬉しい気持ちになったんですよね。なんて言うんだろう、CD全盛期のときに学校帰りにCD買って、早くパッケージ開けて聴きたい!みたいな気持ちと同じような気がするのですが。
そういうワクワク感が人生で一つでも多く出会えると良いなって思っていて、フィルムの現像はそんなチャンスをくれるものなんじゃないかなって思ってます。
やっぱり手元に残るものって良いなって思うんです。撮ったものすべてを何百枚も残さなくても、大事な思い出と思うものをたった1枚でも手元に置いておいて、宝物を持っているような気持ちでいて欲しいなって思うんです。
だから、今回の展示でも「写真」というものを見てもらうキッカケになると良いなぁと思ってます。
それと、この撮影のときに被写体の方をチェキで撮ってるんですね。それがめちゃくちゃ好評で。描写力も良くて写りが良いので「盛れる…♡」と。いきなりチェキ取り出して撮るけど、最初は真っ白な写真なわけで、撮影していくなかで、写真が浮き出てくるのを見返して盛り上がったりするので、コミュニケーションとしても使えて最高だなと。展示でもメインなところで飾ろうかなって思ってるのですが、撮影のなかでも起きるワクワク感もすごく楽しんでいます。
写真展「風和らぐ」-令和に生きる孤独でタフな彼女たち-
場所 表参道ROCKET
日時 2020年1月10日(金)〜1月15日(水)